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福岡空港民営化① 空港の民営化とは?

谷口博文 公共政策、地域政策、産学連携

16/10/24


今日は空港の民営化についてのお話をします。
最近よく新聞でも取り上げられるようになってきたと思いますが、3年後の2019年に福岡空港が民営化されることになり、入札も来年始まります。どの企業が経営に参入するのかということで関係者の間で大変関心が高まっているところです。

では、民営化をする必要性と民営化がもたらす変化についてみていきましょう。
全国には羽田、千歳、広島など28の国管理空港がありました。成田、関西・伊丹、中部はすでに株式会社による会社管理空港で、佐賀や神戸、静岡などは自治体が管理する地方管理空港となっています。道路と同じように、空港もまた公共施設であり、必要だから作るということで、国が税金を投入して作りました。
航空会社が払う着陸料などの空港使用料と一般会計からの税金を財源にして空港の整備や維持運営を行ってきました。しかし、空港の運営は着陸料等だけでは賄いきれません。オープンスカイ政策で国際的に航空企業が自由な経営判断で参入できるようになって国際競争が激化したのをきっかけに、5年ほど前、世界やアジアへ開かれた航空政策に抜本的に転換することとしました。そうすると空港同士の競争が始まり、集客を図るようになります。それまでは空港は必要だから税金を使って国が運営するという考え方でしたが、これからは空港を経営するという考え方で、諸外国のように空港本体と空港ビルのテナントなどと一体となって、便利で収益性の高い空港にしたいという事から、智恵を出し、黒字で空港運営してもらおうということで民営化の話が出てきました。そして用意されたのがコンセッションというやり方です。これまで国がやってきた滑走路での飛行機の離着陸等に係る航空系の事業と、第3セクターのようなところがやってきた利用者へのお土産販売等の非航空系の事業はバラバラでしたが、これらを一体的に進められるよう制度改正をし、民間の経営のノウハウと資金を使って、効率的に空港経営ができる仕組みを作りました。

民営化されると、利用する側としてより快適に便利な空港になっていく可能性が大いにあり、これは楽しみなことだと思います。国が管理するとなると、どうしても公共施設を使って収益を出すとか、集客を図るといったことをあまり考えないでしょう。しかしやはり、利用者にどのようなサービスをすれば集客を図れるかといったことを考えれば、シンガポール空港等のように、空港にいるだけでも結構楽しいという方向に持って行くことが出来れば良いでしょう。

では、コンセッションという仕組みについてみていきましょう。
これまでの空港運営において、必要ならば赤字が出ても仕方がない、という考え方で、サービスを良くして集客を図ったり、着陸料を下げて航空会社を呼びこむとかいう民間の発想がありませんでした。空港ビルや駐車場だけ儲かってもそれぞれがバラバラで、空港経営と言えるものではありませんでした。今度は航空管制だけは国がやるがあとは民間に任せて、空港全体の経営判断で路線を誘致したり魅力的な施設を作ったりして、お客さんを増やし黒字経営にしてください、という方向になり、その仕組みとして用意されたのが、PFI法の中のコンセッションになります。PFIとは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(Private Finance Initiative)という、民間の資金やノウハウを使って公共施設を整備しようという方法です。このPFI事業は日本にも広がっていますが、従来であればパブリックセクターが作って運営してきた公共施設を、むしろ民間の智恵を使ってやろうということで導入された制度です。例えば本当に空港が収益を上げることが出来る思えば、民間企業が民間資金で空港を作って運営し、航空会社や利用客から着陸料等を徴収し、30年ぐらいかけて回収したのち、最後は国に所有権を移転するという方法もありますが、もともと国が作った空港があるので、その「公共施設等運営権」だけを民間企業に買ってもらって一定期間、空港経営を委託するのがコンセッションという方法です。この方法を取っている空港は国内にいくつかあるのでその例をみていきましょう。まず仙台空港、これが第一号案件になっています。東北で言えば、滑走路も2本ありますし、国際空港として年間300万人ほどの乗降客がありますが、大震災によってダメージを受けたということで、その後県知事をはじめ、大変熱心な働きかけをしたこともあって、国管理空港のコンセッション第一号ということで、手続きはずっと進んできました。その結果、今年の7月にいよいよそれが完全民営化という形でスタートしました。他には関西・伊丹空港があります。これは先ほどの国管理空港ではなく株式会社がすでに管理をしている空港なのですが、結局は、関西の場合、伊丹空港があって、関空があってということなので、まず経営を一体化して、全体としてやっていくのがいいだろうということで、まずは統合する法律を作りました。それを基にしてそこから更に空港経営のプロの会社にアウトソーシングするというやり方をしました。PFI法を使う場合にはその為の特別目的会社を作ります。これはSPCといいますが、そのスペシャル パーパス カンパニー(special purpose company)というところに関係する会社が出資をして、そこが建設会社だったり、あるいは運営に関してこれまで様々な経験のある会社だったり、商業施設を運営する会社等といったところが集まり、コンセッションの受け皿となることを行います。関西空港はまず2011年に伊丹空港と経営統合する法律を作ってから一体経営ができるようにし、その新関空会社からSPC(Special Purpose Company:特別目的会社=空港を運営するためだけの会社)にアウトソーシングする形でコンセッション方式を取っています。これは今年4月にスタートしました。更に今後は高松空港がこれから手続きを進めようということになっていますので、こうやって少しずつ増えて来ているということが言えます。

前述の仙台空港ですが、今年7月にここは具体的な企業名を挙げると、東急グループというところが落札をして動き出していますが、やはり商業施設をどうするか、どういう航空会社を呼んでくるか等と言ったことに関して色々な智恵を出して、元々300万人くらいだった乗降客をさらに大きく増やしたいという目標を掲げて取り組んでいます。実際に数字が出て来るのはこれからだと思いますが、そういった民間の智恵を使った事が今どんどん動いています。

それでは今日のまとめです。
空港の一体的な運営によって、空港経営を改善するお話をしました。空港を民間の智恵と資金によって利便性の高い効率的な空港にしようという動きがあります。これが民営化の目的です。このような流れの中で、福岡空港もこれからこのコンセッションを使ってどのように運営していくのかという事が現在、議論になっています。

分野: パブリックマネジメント |スピーカー: 谷口博文

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