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アメリカ大統領選挙

村藤功 企業財務 M&A

16/10/07


今日はアメリカ大統領選挙の話をしたいと思います。
予備選や党員集会を経て、民主党はヒラリー氏を、共和党はトランプ氏を大統領候補にすることに決まりました。副大統領候補は、民主党がティム・ケイン上院議員、共和党がマイク・ペンス氏を指名しました。

問題なのは、ヒラリー氏もトランプ氏も過去の候補中で最下位の国民好感度だということです。ピュー・リサーチセンターが最近調査したところによると、ヒラリー氏とトランプ氏が「良い大統領になる」と答えた国民はトランプ氏が25%ですが、ヒラリー氏も33%程度しか「良い大統領になる」と思っている人がいません。二人とも良い大統領になりそうもないと言われているので、国民の人気をとろうとして、ポピュリズムに走っている感じが否めません。

今後の9-10月のTV討論会で、メディア操作が得意なトランプ氏が「トランプ劇場」でうまく立ち回って優位に立つ可能性もあります。9月26日に1回目の90分のテレビ討論会がありましたが、トランプ氏がまずどういう作戦に出たかというと、大統領候補らしく見えないとまずい状況になるうえに、過激な発言をすると「この人は本当にアメリカの大統領になれるのか」と皆に思われてしまうので、過激な発言を抑えました。ヒラリー氏は無難に乗り切りました。CNNが今回のテレビ討論会はどうだったかという調査をし、ヒラリー氏有利が62%、トランプ氏有利が27%ということで、1回目はとりあえずヒラリー氏の方が良かったという話になっています。テレビ討論会は全部で3回あり、1回終わったので後2回、2回目が10月9日、3回目が10月19日にあります。ちなみにトランプ氏はテレビの操作が得意なので、1回目はとりあえず過激な発言を押さえましたが、このまま穏やかにニュートラルで語るかというと、そうもいかないでしょう。穏やかにすることによって、まあいいかと思う人もいる一方で、過激なトランプ氏が大好きという人もいたかもしれないので、これからどういう対応をとってくるのか、2回目、3回目を見ないとよくわかりません。

テレビ討論会を3回行った後に、11月第1日曜日の次の火曜日(今年は8日)が大統領選挙の投票日です。この日、選挙権のあるアメリカ国民が候補者に投票します。州ごとに得票を集計し、最も多く票を取った候補がその州の選挙人を総取りします。メイン州やネブラスカ州などは、選挙人の一部をもっとも多く獲得した候補に割り当てるような、総取りではないところも少しあるので全部そうとは言えないのですが、だいたい総取り方式です。選挙人は全米50州と首都ワシントンを含めて538人いるので、過半数である270人以上を取れば大統領になります。激戦州はオハイオ・ペンシルバニア・バージニア・ノースカロライナ・フロリダ・ミシガンなどで、これらの州でどちらが勝つかによって、大統領が決まると見られており、現状は全ての激戦区でヒラリー氏がリードしています。

6~8割くらいでヒラリー氏が勝つのではないかと言われていますが、日本的に言うとそれは逆を言えば、2、3割はトランプ氏有利なのかと少し心配になってきます。さて、ヒラリーとトランプ両候補の政策についてみていきましょう。民主党候補のヒラリー氏ですが、富裕層や大企業からは税金を多く徴収し、最低賃金を引き上げることや、オバマ大統領が提唱したオバマ・ケアを継続すること、不法移民に市民権を獲得させる包括的移民制度改革等を支持するようです。企業が本社を海外移転する場合は「出国税」を課し、課税の抜け道をふさぐため、海外所得課税を強化します。

一方、共和党候補のトランプ氏ですが、昔から共和党も言っている「小さな政府」については、それはそれで支持する人が結構多くいます。そういう意味では、法人税を35%から15%に引き下げる事、世界の警察の役割はしなくていいのではないか、戦争に行かなくてよいのではないか、という主張については、皆本当は賛成です。ですが、彼の発言で何が一番困ったことかというと、差別主義ではないのかということです。テロリストとイスラム教を混同し、イスラム教徒は全部排斥し、テロリストが出た国の出身者にはビザを発給しない、メキシコとの国境沿いに万里の長城を築いて、建設費はメキシコに負担させる等といったことを発言しています。先日も、メキシコの大統領と会談しましたが、ペーニャ・ニエト大統領は国境沿いの壁の建築費用は負担しない旨をトランプ氏に伝えたそうです。普通に考えればそんなものを払うわけはないのですが...。このように、トランプ氏はそもそも差別主義なのではないかという話の他に、不法移民を全部強制送還すると言っている話もあります。オバマ大統領は不法移民に子供が出来たりすると強制送還はかわいそうだから、なんとかアメリカに居られる方法も考えようということで、これはヒラリー氏もある程度支持していますが、トランプ氏は彼らを全部本国に返すと言っています。犯罪歴がある200万人の不法移民は、大統領になったら初日に強制送還すると言っています。そうすると残りが1100万人くらいいるとのことですが、彼らの強制送還に係る費用は20兆円くらいと言われています。そんなことが本当に実現出来るのかということですが、不法移民といっても、彼らがすばらしい研究開発や新規事業の立ち上げをして、アメリカの経済を活性化させてきた背景があるため、彼らを強制送還したらアメリカは大丈夫なのかという話もあります。

それでは今日のまとめです。
アメリカ大統領選挙はヒラリー対トランプの戦いになり、テレビ討論が始まりました。1回目はとりあえずトランプ氏がヒラリー氏に負けたということで、2回目、3回目にどういった形でどういった形で議論が展開されるのかが見所です。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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