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英国のEU離脱問題(1)

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

16/09/30


私は毎年、夏に学術研修の引率でケンブリッジ大学に3週間滞在します。今回はその際に、最近起こったEU離脱問題(英語ではBrexit)について現地で色々な人に話を聞いたりしながら考えたことについてお話をしようと思います。

2016年6月23日に国民投票があり、EU離脱派が残留派に勝利しました。パーセンテージで見ると51.9対48.1となりました。その結果、残留派だったキャメロン首相が辞職し、新しく首相になったメイ氏は再投票を実施しないと言っています。EUの方は早期の離脱を求め、混乱を早く収束し、巻き返しを図りたいと考えています。これに対してイギリスの方では、来年になってから手続きをすると主張しています。現地ではいつトリッガーするかというような言い方をしています。

国民投票といっても日本の国民投票とは異なります。日本は議会を通過したものを国民の1/2がOKすると憲法改正が出来る形になって法的拘束力があります。ところがイギリスの場合は法的拘束がありません。今回のEU離脱は議会も何も通っておらず、いきなり投票にかけられました。そこが日本と違うところです。イギリスは政府としても、キャメロン氏が残留派だったので残留派の立場でした。政府名義のパンフレットでは、残留派に投票して欲しい旨を記して全戸配布しています。これを日本で憲法改正の時にすれば大変なことになります。そこが日本とイギリスの大変違うところです。イギリスは今回を含めて国民投票を過去3回しか行ったことがありません。1回目は今回と似ていて、当時のECを離脱するかどうかという時に圧倒的に残留という結果になりました。今回のEU離脱については僅差で離脱という結果になりました。私たちからすれば分かりにくいことですが、本当のところ、法的束力はないのでこの結果がなかったことにしてもいいはずです。しかしメイ首相がもしそのようなことをすればおそらく彼女の政治生命はそこで終わりということになってしまいますのでそれは事実上できない選択肢だろうということになっています。今回は一般の人たちはイギリスのEU離脱についてどんな風に考えているのかということを現地に赴いて受け止めて来ようと思いました。実は色々な人に聞いてみると、離脱派も残留派もどちらも今回の離脱決定という結果を予期していなかったと、全員が口を揃えて言っています。

また次回お話をする際にもこの話を続けられればと思いますが、キャメロン氏も実際は離脱派ではありませんでしたが、離脱派が党内にいて、その人たちを治めるために今回投票となりました。つまり、離脱派の人たちは、EU離脱についての可否を投票にかけてくれなかったら党を辞めるというくらい強硬だったので、党を守るためには仕方がなかったという側面がありました。そしてその離脱派の人たちも本当に離脱になってしまったら、その後政治的に一体どうしたらいいのかというシナリオをきちんと描き切れていなかったようです。残留派も離脱派もこの後のシナリオが分からないということになっています。どういうプランにしていくのかという政治的にも非常に微妙な問題であると言えます。国民にとってもこれは同じで、実は国民の多くの人たちについても、EUとは何なのかということをそもそも知らない人たちもいて大変でした。Googleの検索で"EU"が急上昇したそうです。相当数の人たちが調べていたと言えます。
離脱に賛成を投じた人も、訳がわからないうちに投票してしまったというところが正直なところだったのではないかと思います。投票をひっくり返そうとして今は頻繁にデモ等が起きており、イギリスでよく報道されています。デモをしている人たちは議会に離脱に対するような動きを取るようにと訴えています。それが上手くいくかは分かりませんが、それが望みの綱というところです。その結果について色々分析がありますが、色々と細かいところも出てきたのでレポートをしたいと思います。私が行っていたケンブリッジは学園都市ですから知識人が多いところですが、残留派が73%でした。いくつか残留と離脱でどういうふうに分かれるか、誰が、どういう人たちが残留に票を入れてどういう人たちが離脱に票を入れるかということで、5つほど軸があります。今のケンブリッジの例で言うと、知識人の方と一般の方がずれており、大都市と地方でもずれています。それから4大地域です。イングランドとウェールズは離脱、スコットランドと北アイルランドでは残留という図式があり、その他は収入が多い人が残留、収入の少ない人が離脱という軸もあります。その軸がどうしてそうなるのかという話から次回はしたいと思います。

それでは今日のまとめです。
今日は英国のEU離脱問題について私が今年の夏に行って来たケンブリッジで現地の人たちに聞いてきたことをご報告しました。イギリスでは日本人が考えているよりも大騒ぎになっています。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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