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仮説検証②

寺﨑新一郎 経営学/マーケティング

16/09/08


今回は仮説検証②ということで、帰無仮説の判定についてご説明します。

まずは前回の復習です。前回は仮説検証の手順について学びました。まず仮説を立て、それが正しいかどうかをデータによって確かめる一連の手続きです。統計的な検定において設定すべき仮説は、帰無仮説と対立仮説の2種類があります。

統計的な検定では、帰無仮説が正しいという前提に立ち、帰無仮説の正誤をサンプル・データで検証するという流れになります。帰無仮説は自分が言いたいことの逆、対立仮説は本当に言いたいことになります。「帰無」というのは「無に帰る」という意味なので、無に帰ることが期待されて立てられる仮説ということになります。つまり、そうであってほしくないということです。仮説が正しかったときは「仮説は支持された」、正しくなかったときは「棄却された」という表現になります。帰無仮説が棄却されれば、その否定である対立仮説が支持されるということになります。もちろん、帰無仮説がそのまま支持されるということもあります。本当はこういうことを言いたかったけれども言えなかったという場合です。その場合は帰無仮説がそのまま支持されます。

前回は日本人男性の平均身長とオランダ人男性の平均身長に差がないという帰無仮説を立てましたが、この場合、本当に言いたいことは「オランダ人と日本人の平均身長には差がある」ということです。これが対立仮説になります。また、帰無仮説は、「オランダ人と日本人の平均身長には差がない」となります。実際に統計的検定をしてみると、この場合は平均値の差の検定なのでt検定を行います。その結果、帰無仮説は棄却されて対立仮説である「オランダ人と日本人の平均身長に差がある」という仮説が採択されました。ここまでが前回の復習です。

それでは今回の内容です。

今回は帰無仮説の正誤をどのように判定するかについて説明したいと思います。帰無仮説を判定するには、どれくらい帰無仮説が正しいのか、あるいは正しくないのかを確率で表現します。確率で表現するというのがポイントです。統計的検定では帰無仮説が正しいという確率を「有意確率」といいます。有意というのは「意味が有る」と書いて有意です。つまり、計算の結果から有意確率が十分に低いとき「帰無仮説が正しくない」となり、その結果として帰無仮説の否定である「対立仮説が正しい」と判定されます。有意確率はP(ピー)値という表現で表します。Pというのは「確からしい」を意味するprobabilityの略です。P(ピー)値の「ち」は「値」ですから、響きは似ていますが、桃を表すpeachではありません。

それでは、有意確率の高低はどのように判断するのかをみていきましょう。有意確率の高低はあらかじめ何らかの基準を決めておく必要があります。この基準を「有意水準」といいます。有意水準は一般的に5%または1%に設定されます。少し分かりづらいのでもう少し詳しくみていきましょう。5%というのは、1/20なので、0.05になります。つまり、20回やって1回エラーが起こるか起こらないかくらいの確率でその事象が起こりうるということになります。ですから、有意水準が1%の場合は100回に1回ということになります。1%水準というのは、1回エラーが起こって99回はエラーが起こらないだろうということですから、逆に言えば100回中1回はエラーが起こりうるということです。つまり、少しややこしいのですが、ほとんどエラーは起こらないということです。

例えば有意水準を5%に設定したとき、算出された有意確率が0.03であれば5%より低いので、有意確率が有意水準より低いと言えます。そしてこの場合、帰無仮説は棄却され、対立仮説が支持されることになります。少し難しく感じられるところですが、一つ面白い点は、対立仮説が証明されたと言わずに、「採択された」・「支持された」という表現を用いることです。有意確率というのはあくまでも確率の話ですから、エラーが出る可能性もあるため証明されたとは言えません。得られた結果がサンプリングにより収集したデータを用いて統計的に検定されているため、あえて対立仮説が「採択された」、あるいは「支持された」と控えめな言い方をすることになっているのでこのような表現をします。ここは注意が必要です。ですから、前回の復習のところで触れた帰無仮説と対立仮説で、「オランダ人と日本人の平均身長に差がある」という対立仮説は「証明された」ではなく「支持された」となります。

先ほど出てきたサンプリングに関しては次回以降お話をします。例えばこれは極端な例ですが、九州大学ビジネス・スクールの知名度を、そこの在学生をサンプルに調査しても意味がありません。このように、正しい判定をするにはサンプリングをどのように行うかが大変重要になってきます。

それでは今日のまとめです。
今回は帰無仮説の判定について説明をしました。帰無仮説を判定するには、どれくらいの確率で帰無仮説が正しいのか、あるいは正しくないのかを確率で表現します。この確率を有意確率と言い、P値で表されます。有意確率の高低は有意水準で判断されますが、有意水準は5%または1%に設定されることが一般的です。今回は専門用語が多く、なかなか難しかったと思いますが、ぜひいま一度復習をされてみてください。

分野: ビジネス統計 |スピーカー: 寺﨑新一郎

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