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松下幸之助の経営哲12「善と悪」

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

16/09/07

【テーマ:松下幸之助の経営哲学】
(1)①②概論、(2)宇宙観:①繁栄の基、②生成発展、③大義、④調和の本質、⑤自然の恵み、⑥素直な心、(2)人間観:①人間の目的、②人間性、③理性と本能、④善と悪

 

1 はじめに
松下幸之助(敬称略:以下同じ)の経営哲学について、『松下幸之助の哲学 -いかに生き、いかに栄えるか』という本からご紹介しています。彼の哲学は大きく次の五つのものに分かれています。

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2 善と悪
松下幸之助は「善と悪」について、次の三つのことを述べています。

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 すなわち、まず第1に、一つの主義・立場に偏って善悪を定めると、人間に無駄な努力をさせたり苦しめさせたりすることになるため、注意しなさいということ。第2に、善悪の判断は、広い視野に立って行わなければならない。そして、この場合、総合的に判断して繁栄、平和や幸福を進めるものが「善」であり、これを妨げるものが「悪」であるということ。第3に、善悪の本質を究めて、これに適応した生活が繁栄した平和で幸福な社会を導くということです。

3 判断の三視点と三方よし
これまで松下哲学の中で「宇宙観」、「人間観」のお話をしてきましたが、なぜ「宇宙観」から始めるかというと、その判断基準がぶれないようにするためです。この物事を見る視点には、「自分の視点」、「他者の視点」、「社会(・お天道様・宇宙)の視点」という三つの視点(「三視点」)があります。
 これと類似な考え方として、近江商人には、「三方よし」(「売り手よし、買い手よし、社会よし」)というものがあります。そして、売り手と買い手は「当事者」です。この場合、一番問題なのは、自分だけ儲かって相手(や社会)が損をする場合です。次に問題なのは、自分も相手も儲けている場合でも、社会や環境に対して損や害をもたらす場合です。従って、1人称や2人称という当事者だけでなく、3人称、世間或いは社会の視点も含めて判断する必要があります。この3人称というのをもう少し哲学的にお話しすると、それはお天道様や天・宇宙になります。それが「真理」です。そういう視点、要するに社会(あるいは宇宙)から見ることで、公正な判断をすることができます。

4 五思力
このような物事を判断する際に必要な総合的な五つの思考力を、私は「五思力」と呼んでいます。

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これらの五思力という観点から見れば、まさに松下幸之助が提唱している総合的で正しい善悪の判断ができます。

5 判断と人間性
松下幸之助は人間としての完成について「人間論」を展開しています。すなわち、人間とは、神様でも動物でもなく、人間は物的なものと精神的なもの(心)からできています。そして、この心は、本能と理性からできていて、それをバランスよく、しかもできるだけ理性と本能のバランスを保ちながら、理性を高めていくような方向で調整していきます。これが、人間を完成させるということです。このように、人間が生まれながら備えている人間性という理性と本能との調和を考え、理性を高めながら判断等をしていくと、「繁栄・平和・幸福な社会」が出来ます。 

6 自己完成
これに関連して東洋の哲学では、「自己完成」という考え方があります。西洋では、マズローの欲求5段階説があり、その一番上に「自己実現」が掲げられています。自己の能力の発揮し、自己の目標を達成するという欲求を満たすということが最終目標だと言われています。東洋的には、その上にさらに「自己完成」があります。この「自己完成」と「自己実現」の違いは何かというと、「自己実現」は必ずしも他人の幸福が前面的には出ていません。要するに、自分の能力の発揮し、自己の目標を達成するという欲求を満たすというのが「自己実現」と言えます。それに加えて、大愛を前提として「社会のために」ということを常に合わせて考えているのが「自己完成」です。そこまでいかないと東洋的には、人間が完成しないわけです。

7 まとめ
松下幸之助の経営哲学における「人間観」では、善悪の判断に関して、総合的に判断して繁栄・平和・幸福を進めるのが善であり、これを妨げるのが悪であるということです。

〔参考〕松下幸之助『松下幸之助の哲学』『実践経営哲学』PHP文庫

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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