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松下幸之助の経営哲学⑦自然の恵み

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

16/07/27

1 はじめに
松下幸之助(敬称略:以下同じ)の経営哲学について、『松下幸之助の哲学 -いかに生き、いかに栄えるか』という本からご紹介しています。彼の哲学は大きく次の五つのものに分かれています。
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そして、この中の自然や宇宙という「宇宙観」の内容をお話ししています。この宇宙観では、次の六つの項目が示されています。
【宇宙観の内容】
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今日は、5番目「自然の恵み」についてお話しします。
2 自然の恵み

キャプチャ3.PNG
 

「自然の恵み」を素直に感じるというのは、西洋人と比べて、東洋人の方があまり違和感はないと思います。これは特別なことではなく、素直にそのまま「自然の恵み」を感謝して受け入れて、生活に取入れることが「繁栄・平和・幸福の基(もとい)になる」ということです。ここでは、次の三つのことを述べています。
 一つ目は、すべてのものは大きな自然の恵みによって生かされているということです。二つ目は、子が母の愛を慕うところに喜びと成長があるように、人間は自然の恵みを感謝して、生かしていくところに繁栄・平和・幸福の礎があるということです。三つ目は、この恵みの根源を求めて、これに応ずる習慣のあり方を究めるのが宗教であるということ。これはまた人としての務めでもあり、宗教を持っている人も持たない人もこの理(ことわり)を弁(わきま)えて正しい生活を打ち立てなさいという三つのことを述べています。

3 母親の慈愛のように
私たち人間は少し傲慢なところがあり、自分の力だけで生きていると思いがちです。しかし、こう考えてしまうのは誤りです。人間が生きているということは、「生かされている部分」と「生きている部分」の両方の側面があります。自分で生きる部分ということは、非常に重要ですが、その前提として生かされているということをしっかり意識しておく必要があります。これをしっかり意識しておかないと、宇宙の法則に反することとなり、結果として幸福も成功もあり得ません。
私たちは自分の力だけで生きているわけではなく、現実問題として多くの自然の恵みによって生かされています。例えば、日光、空気、水等というように、自然が人間に生きる力や生命エネルギーを与えてくれているということで、これらのどれ一つでもなくなれば、生きていけません。それゆえ、私たちはそれらに感謝して生きなければなりません。

4 近代人の不幸
このことを親子関係の例でみると分かり易いかと思います。親は子どもを愛していますが、子どもが親の愛に応えているかどうかということが、親子関係等に影響してきます。もし子どもが親の愛情を無視し、自分勝手に生きているというような態度をしていると問題が生じてきます。それと同じように、人間と自然の関係というのは、普段から自然の恵みに感謝をし、生きていくということが必要です。それによって繁栄し、平和で、幸福な社会が達成されます。

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近代人の不幸はどこから始まったかというと、自然の恵みを恵みとして感謝しない心から始まっています。西洋化が進む中で二元論的な考え方として「自己の確立」が叫ばれるようになりました。そして、この自己の確立が進むと、自分と他人は違うという二元論的な自他分離の考えが強くなります。例えば、日本とヨーロッパやアフリカ等は違うと考えるなど、区別化・差別化するようになります。そうすると、同様に、人間と動物は違う、人間と生物は違う、人間と自然は違うという西洋的な分離感が出てきます。このような誤った考え方が近代人の不幸の始まりです。
 松下幸之助は、このような「母子分離」ではなく、反対の「母子一体」を重要視しています。東洋哲学では、これを「自他一如」と言います。この場合、自己と他のものが一体であるということは、人間の時も、動物でも、植物でも、鉱物でもそうです。要するに、大自然そのものとの関係が自他一如の関係であるということです。これが根本原理なわけですが、このように考えていくと全体的に調和がとれ、幸福で平和になっていきます。しかし、反対に、自他が分離していると考える場合、例えば、今問題になっているイスラム国等は自他が分離しているという考え方です。すなわち、イスラム国とその他という区別の考え方で、すべての物事を考えているわけです。そして、このように分離した考え方を持つと、対立になって争いが生まれます。分離とか対立の状況ですと、不幸な結果になるというのは目に見えています。そういった母子分離ではなくて、人間と自然というのは一体であるという考え方をまず根本にしなさいということです。

5 恵みに相応じる態度を
最期に、恵みに応ずる態度ということを普段から身につけて下さいということですが、それが非常に重要です。なお、「自他一如」というと、自分を持たなくていいのかと誤解されやすいのですが、そうではありません。自分の意見はしっかり持ちますが、同時に、常に他人のことも100%考慮するという意味です。自分と他人は一体なのです。自分が世界で一番可愛いように、誰でもがそう思っているし、自然もそう思っているのです。それを思いながら行動する必要があります。自分の意見を持ちつつ、他人もそのようなものを持っていることを、同時に配慮することが大切です、

6 むすび
松下幸之助の経営哲学の宇宙観では、その一つとして「自然の恵み」ということを上げ、それによって生かされているということに感謝の心を持って、自然と人間が一体になって生きていくと、その結果として平和で、幸せな社会になりますよ、ということを言っています。
〔参考〕松下幸之助『松下幸之助の哲学』『実践経営哲学』PHP文庫

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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