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三菱自動車の日産傘下入り

村藤功 企業財務 M&A

16/07/12

今日は、三菱自動車の日産自動車傘下入りについて話をします。

三菱自動車が前回のリコール騒動に続いて、また不祥事を起こしました。今回は、軽自動車の燃費不正問題ということで、燃費データを改ざんしたということです。自社ブランドの「ekワゴン」に加え、日産自動車に供給していた「デイズ」といった軽自動車の燃費データを改ざんしていたことが発覚しました。実際の燃費よりも5~16パーセント改善した数値を出していたということです。燃費性能がいいということで車を購入した人にとってはとんでもないことです。また、燃費性能に応じて顧客の税負担を軽減するエコカー減税も、今回の燃費修正を受けて負担が追加される場合があります。

こうした問題に対処するため、三菱自動車は今年の3月末に191億円の特別損失を計上しました。来年の3月決算にも、顧客への賠償金や部品会社への保証など、いろんなものを織り込んで、約1450億円の赤字に転落する見通しとなっています。

三菱自動車の不祥事は、今回が初めてではありません。2000年と2004年にもリコール問題がありました。そのときは、三菱重工を筆頭に、三菱グループが支援を行いました。三菱重工、三菱商事と三菱東京UFJ銀行が約6000億円の優先株を引き受けて、三菱自動車を支援しました。三菱重工が20パーセント、三菱商事が10.1パーセント、三菱東京UFJが3.9パーセントを出資し、三菱グループ御三家で34パーセントの株を保有することになりました。

しかし、三菱グループからすると、これ以上は三菱自動車を支援しきれないということがありました。三菱自動車は、トヨタや日産、ホンダに比べると規模で劣ります。競争力の面でも、どこか大手との提携なしにはもたないと懸念していました。そこで三菱自動車を日産と提携させるという話になりました。両社は2011年に軽自動車の共同企画会社を設立し、2013年からは三菱自動車が日産に軽自動車の供給を行っていました。

日産は一時破綻して、ルノーと提携したので、ある意味ルノーグループです。ルノー・日産側としても、とりあえず三菱自動車を手に入れて、自動車業界トップ3(トヨタ、フォルクスワーゲン、GM)に近づきたいということで、2370億円を出資して、三菱自動車の34パーセントを取得することにしたのです。

三菱自動車は、東南アジアでの実績や知名度で日産をしのいでいるという面があります。グローバルに考えると、東南アジアは成長している市場なので、ルノー・日産からしても、三菱自動車との提携の意味は大きいといえます。また、海外での強い事業基盤を主導となって築いてきた三菱商事の協力を得られることも、ルノー・日産にとってはおいしい話です。

さらに最近は共同開発が重要で、購買や生産・販売はもちろん、自動運転や電気自動車向けバッテリーなど次世代技術開発といったところで、両社は協力しようとしています。一緒にやることによって少しでも効率化していこうということです。ただ、三菱自動車のブランドは守りたいということで、「三菱」という名前は残ります。三菱グループとしては日産から出資を受けられてめでたしという話です。

不祥事というと、スズキでも燃費データの不正があったようです。こちらは国土交通省の決めたルールに則らずに燃費データを計測していたということです。ただし、実際の燃費と報告での燃費にギャップがあった三菱自動車とは異なり、スズキの場合は大体同じくらいのデータであったということで、販売は継続されるようです。

今回の提携を受けて、三菱自動車の企業体質が変わるのか、不祥事はなくなるのか、というのも気になるところです。日産の社長兼最高経営責任者であるゴーン氏は実績のあるすごい人なので、彼に任せればとりあえずは安心だと、三菱グループとしては思っていることでしょう。

それでは今日のまとめです。
三菱自動車が、前回のリコール騒動に続いて、燃費データ改ざんという不祥事を起こしました。前回は支援した三菱グループも今回は冷たい態度だったのですが、ルノー・日産が、トヨタ、フォルクスワーゲン、GMの3強に迫るために、34パーセントを出資するということになり、一応はめでたしという結果になりました。

分野: |スピーカー: 村藤功

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