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松下幸之助の経営哲学⑤大義の意義

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

16/06/08

【テーマ:松下幸之助の経営哲学】
(1)①②概論、(2)宇宙観①繁栄の基、②生成発展、③大義

 はじめに
松下幸之助(敬称略:以下同じ)の経営哲学について、『松下幸之助の哲学 -いかに生き、いかに栄えるか』という本からご紹介しています。彼の哲学は大きく次の五つのものに分かれています。
松下幸之助の哲学の内容

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そして、この中の自然や宇宙という「宇宙観」の内容を前回からお話ししています。この宇宙観では、次の六つの項目が示されています。

宇宙観の内容
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前回は、その「宇宙観」の中でも1番目の「繁栄の基」、2番目の「生成発展」についてお話ししました。今日は3番目「大義の意義」についてのお話です。

2 大義の意義
「大義」とは大義名分の大義のことです。大義の「義」は、言い換えると正義と同義です。英語では"ジャスティス"で、「理(ことわり)」、「道理」、「真理」、「善いこと」というようなことを意味します。すなわち、沢山ある義の中でも特に一番大事な人が行うべき正しい道のことを「大義」といっています。この大義の意義として、次の三つのことをいっています。

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第一は、人間の繁栄は、すべて宇宙の秩序に基づいて与えられるということです。そしてこの宇宙の秩序に従って生きることが「大義」です。要するに、ここで人間が行うべき正しい道とは、宇宙の秩序・真理に従って生きることです。第二に、この宇宙の秩序とは何かを抽象的ではなく具体的にいうと、秩序にはすべて中心があると考えます。例えば、国家には主権者とか、家庭では家長、会社では社長などそれぞれの秩序の中心があり、そして、それらのすべての中心を貫く枢軸として宇宙の秩序があります。あくまでもこれらすべての共通項が宇宙の秩序であり、それが中心となるべきであるということです。まず宇宙の秩序があり、これを前提として、これに沿うような形で、各組織の中心すなわち秩序の中心があるというように考えます。もし各組織の中心が私利私欲にまみれてブレる場合には、本来の宇宙の中心からブレてしまいます。例えば、社長や家長等が私利私欲のことだけ考えると、宇宙の秩序から外れていくということです。第三にその秩序に従うということは、それぞれの組織の中心に従うことなのですが、その組織の中心であるもの、例えば、社長や家長は、会社等には大義があるということをわきまえて、真理に順応して行動しなければならないということです。こうすれば会社や家庭等が繁栄し、平和になれ、幸福になります。

3 大義の内容
それぞれの人間が繁栄して幸福になり、平和な生活を送るためには、宇宙秩序に素直に順応することが一番重要であり、それが大義です。それでは、宇宙の秩序に順応して生きていくというのはどういうことでしょうか。この場合、宇宙は宇宙の法則、一定の法則に基づいて運行されています。つまり、宇宙には秩序・法則・真理があり、これに従って生きるということです。この宇宙の法則・真理については、次回お話ししますけれども、次の二つの側面のものがあります。

宇宙の二大法則 物的法則と心的法則

この宇宙の二大法則には、物的なもの(「物的法則」)と心的なもの(「心的法則」)とがあります。これらの法則に従って生きるということが大義であり、正しいことです。言い換えれば、法則が存在する場合に、その法則どおりやれば、法則どおりの結果が出るのは、当たり前のことです。それが分かっている人(悟人)と、分かっていない人(凡人)がいるというのです。松下幸之助はこのことを理解していたために、経営の神様と言われるまでに発展できたわけです。自分の私利私欲など人間の小さな知識ではなく、宇宙の秩序・法則・真理という非常に大きなスケールからすべてのことを考えていこうということです。
何故そうなのかというと、ブレない正しい軸を作るためには、経営哲学は、最初から人間はこう生きるべきだというように始まるのではなくて、より上位にある宇宙観や人間観から始まらなければなければならないということです。このことは、以前に「天・地・人」としてお話ししました。

思考の順序 天 → 地 → 人 (天地人)

宇宙や自然を中心として、その後に人間のことが出てくるということ、言い換えれば、宇宙の法則・真理に我々人間も則るということが、成功や繁栄の秘訣であるといくことです。次回もお話しますが、物的法則には、例えば、万有引力等があるのは分かっていて、それに従うのは分かりますが、心的法則があるのかということを普通の人だと「そんなのはないだろう」と気付かずに(無明な状態で)勝手気ままに考え、行動するわけです。ところが出来た人というのは、瞑想や座禅等によって、これに気付く(「心眼が開けてくる」)わけです。そして、これに気付くか気付かないかで、人生において大きい違いが出てきます。

4 秩序の中心への従い方
これまでお話ししてきた、秩序への従い方に関して、次の二つの注意事項があります。すなわち、第1は、宇宙の真理へ従うことが最も重要なことであり、君主に従うのは副次的なものであるということ(「宇宙真理優先の原則」)です。また第2は、秩序の中心に従うということは、その「地位」(公的立場)に従うのであって、「私的立場」に従うものではないということ(「公的立場優先の原則」)です。この場合、人情や私情は、あくまで適切な範囲内でのみ重要であるということです。

5 たとえ目(「肉眼」)に見えなくとも
最後に、これまで述べてきた、宇宙の秩序という法則・真理は、たとえ目に(「肉眼」で)見えなくても、(普通の人には信じられないかもしれませんが)「厳然として存在する」ものであって、「心眼」が開けた人にはそれが理解でき、それに従わないと、真の長期的に安定した繁栄・平和・幸福は得られない、ということです。(このような「気づき・悟り」のある人(賢人・悟人)と、ない人(凡人)で、結果として人生に非常に大きな違いが生まれてくることになります。)それゆえ、大義とは、宇宙の秩序という真理に順応する生活態度であり、これによって繁栄・平和・幸福が得られるということです。

6 むすび
松下幸之助の経営哲学のうち、「宇宙観」、特に「大義」というのは、宇宙には秩序・法則・真理があり、それに従うことが大義である。この大義に従うことによって、我々は繁栄でき、平和で、幸福になれるというお話しでした。
〔参考〕松下幸之助『松下幸之助の哲学』『実践経営哲学』PHP文庫

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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