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日本を動かす100の行動②

堀 義人 アントレプレナーシップ ベンチャー論

16/06/17

今回は、『日本を動かす「100の行動」』の中から、いくつかの問題について具体的にお話しようと思います。まずは、今の日本の教育現場において、何が問題で、その対策として何をすべきかについてお話しましょう。

初等教育を見ていて感じることは、2つの「ばらつき」があり、その結果として教育の格差が生まれているということです。

「ばらつき」の1つは、教師の教える力です。良い教師とそうではない教師との教える力に大きな差があり、これが教育格差につながっています。

もう1つは、生徒の学習進捗のばらつきです。進捗が速い人と遅い人がいます。その中で、教師が一方的に、マス的に教えようとすれば、出来る子供にとってはクラスが「面白くない」ということになり、進捗が遅い子供にとっては「追いつけない」ということになってしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか。教育に関する様々な研究を行って最近分かってきたことは、「正答率が7割くらいだと、その学びを面白いと感じるらしい」ということです。つまり、9割以上の答えが解ってしまうと「簡単すぎて面白くない」。一方で、正答率が2~3割の問題だと「難し過ぎるので投げ出したくなってしまう」ということになります。

これに対してテクノロジーが与えうる解決手段は、進捗が速い人には難しい問題を与え、進捗が遅い人には簡単な問題を与えることによって、どちらの人にも7割の正答率に近くなるようにすることです。そうすれば、生徒は常に面白い状況で学び続けられるわけです。

さらに、テクノロジーによって正誤を細かく記録できれば、何が分かっていて、何が分かっていないかをしっかりと把握できます。間違えた箇所に戻ることによって、学びを促進することができます。

こうすることで、多くの人が楽しみながら学べるのです。しかも、そこに教える力にばらつきのある教師が介在しなくてすみます。

では、教師がすべきことは何でしょうか。教師は伴奏者、あるいはコーチの役割を果たせばいいのです。分からなかったところを対面で教える、人間的な愛情をもって接することで、生徒のやる気を喚起する。クラスでディスカッションを行い、多様な意見をつき合わせることで生徒の創造性を高めていくのです。こうした形の教育が今後必要になるだろうと考えています。

また、教育に関する最近の研究によって次のようなことも分かりました。それは、「今、小学校に入学する子供たちが将来就くであろう職業は、6割方が現在は存在しない仕事になる」ということです。

実際、30年前、小学校入学当時にインターネットがなかった子どもたちが大人になり、今、社会に出ると、ウェブ・デザイナーやウェブ・エンジニアという職業ができました。ビッグデータ、AI、ロボットといった新しい技術が急速に発展・普及することで、将来の仕事は大きく変わってくるでしょう。

人間の仕事は、人間にしかできないものに変わっていくでしょう。より高度な人間関係処理能力が問われる仕事、クリエイティビティ豊かな仕事です。

僕たちの想像を超える変化が起こるでしょう。それ故、「今、子どもたちにどういう教育をすべきか」という問いの答えは明確に分からないのです。「どういう教育をすべきか分からない」という時に何が重要だと思いますか。それは、しっかりとした基礎能力を高めていくことです。つまり、物事を考える力、きちんと計算ができる力、言語処理能力、さらには自ら成長していく力です。そして、クリエイティビティとハートをもったコミュニケーションができる能力を身に付けることも大切です。

教育はテクノロジーを活用することで大きく変わっていきます。教師の役割は、人間関係の構築やコーチング、生徒のやる気を喚起する役割に重点を移るという視点を持つことが重要です。

もう一つ、地方創生の問題についてお話しましょう。『日本を動かす「100の行動」』では、「廃県置道」ということを提案しています。

1871年に「廃藩置県」が行われてから150年が経とうとしています。150年のうちに、工業化が進み、情報化が進みました。150年前にできた県という枠組みが、果たして150年後の今も正しく機能しているのでしょうか。

例えば九州には7つの県がありますが、九州全体を「道」と考えて、福岡を「道都」としたほうが、九州全体にとって最適な意思決定や政策立案ができるのではないでしょうか。

九州は現在、アジアの国々と比べても4~5番目の経済規模を持つ地域です。九州道として一丸になれば、新たな成長、新たな文化の創出が可能になるでしょう。そして、九州道が関西道や東北道と協力しつつ、良い意味で競争していくことによって、日本全体が繁栄していくと考えています。

また、現在、2000以上の基礎自治体がありますが、300ぐらいが良いと思います。かつての藩の数は大体300くらいです。10の「道」の中に300の基礎自治体があるとすれば、1つの「道」の中には30くらいです。そして、全体として国家というものがある。これを地方創生のあるべき姿と考え、「100の行動」では「廃県置道」という思い切った形を提案しています。

「100の行動」を通して、政策を動かし、日本を動かし、日本が良い方向に向かっていくために、「自分たちは何をすべきか」ということに多くの人が関心を持ち、発言してもらいたいと思っています。政治家に任せるのではなく、僕たち自身が子どもたち、孫たちのために何ができるかを考え、「投票に行く」ことによって未来を選択することが重要だと思っています。

分野: グロービス経営大学院 |スピーカー: 堀 義人

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