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中国の産業構造

村藤功 企業財務 M&A

16/04/11

今日は、中国の産業構造の変化について話します。

2015年の中国の実質GDP成長は前年比6.9%でした。かつては10%の成長率を誇っていた中国からすると、ずいぶん経済が減速していることになります。このような中国経済の減速には、注目が集まっているのですが、実はそれだけでなく、中国の産業構造自体が変化しているという状況に目を向ける必要があります。日本にとって、この変化にいかに対応していくかが、重要な問題となってきています。

まず一つに、中国での人件費の高騰があります。中国では人件費が毎年約15%上昇しており、ここ5年では倍近くに跳ね上がりました。かつては安価な労働力を求めて、多くの日本企業が中国進出に積極的だったわけですが、最近ではこの中国での人件費高騰の影響もあって、日本からの投資が減少しています。日本の投資は、2012年のピーク時には70億ドルだったものが、2015年には32億ドルと、半分以下になりました。

さて、より具体的に中国の産業構造の変化についてみていきたいと思います。
もともと一次産業従事者がほとんどだった中国ですが、最近では三次産業従事者が大幅に増えてきており、その中でも半分以上はサービス業従事者です。一次産業従事者は、いまだ人口の3割を占めている状況なのですが、GDPでいうと1割を切ってしまっています。

こうした状況のなかで、中国ではどのような動きが起こっているか。例えば、次期5カ年計画で環境の改善にむけて10兆元を投資する予定です。一方で、経済成長も維持しなければならないため、成長の土台となるインフラへの投資を年2兆元投資する予定です。

また、淘汰の動きもみられます。中国では粗鋼やセメント、造船などの過剰設備の問題があります。中国政府は「淘汰」へと舵を切っており、これらの生産力の抑制と、国有企業改革を進めていこうとしています。

その一方で、中国はベンチャーへの投資に積極的です。中国ではハングリー精神、アントレプレナーシップの強い人が多いようであり、早期起業家は日本の4倍ほどいます。2015年での中国におけるベンチャーへの投資は日本の約20倍の2.4兆円にのぼります。

以前は労働集約型の産業に頼ってきた中国ですが、最近は自国にない先端技術やブランドを取り入れて海外に打って出ようとしています。農薬世界最大手であるスイスのシンジェンタを430億ドルかけて買収することを決めました。また、半導体大手の紫光集団はアメリカのマイクロンテクノロジーの買収提案をしています。日本の産業革新機構は東芝の家電部門をシャープに買収させる予定でしたがシャープが鴻海に買収されてしまったので、結局東芝は家電部門を中国の美的集団に売却することになりました。

また、背景となる社会の動向にも目を向けておく必要があります。
中国では、農民に都市戸籍を取らせないという、厳格な戸籍制度がありました。そのため、少し前までは都市戸籍をもっていない農民が大都市に大勢いるという状況がありました。無戸籍者は学校や病院などの公共サービスでかなりの不利益を被ることになります。中国政府はこの1月になってようやく戸籍制度を緩和することにしました。ただし、地方都市で定住すれば都市戸籍がもらえるようになっただけで、都市の人口規模が大きくなるにつれて条件は厳しくなるようです。

また、2016年1月には一人っ子政策が二人っ子政策へと変更されました。人口ピラミッドのバランスを改善し、労働力人口を増やして経済成長を持続させる目的です。ただし、人びとが二人目を生むためには保育士制度や育児休暇など公共サービスの改善が欠かせません。また、年金や医療保険、介護といったサービスを整備していくことも必要です。これまで経済成長第一だった中国政府は社会福祉に対する意識が低かったので、年金や医療保険は地方政府によってばらばらなのが現状です。しかし日本のように全員加入でやったりすると、社会福祉破たんするということにもなりかねません。これから社会福祉をどのように進めていくべきか模索している状況にあります。

今日の話をまとめます。
中国の経済が減速していることに目がむきがちですが、その中の産業構造自体が変化していることに注目することが大事です。この変化に応じて日本企業も対策をねっていかなくては、中国経済の減速にまきこまれて破綻する恐れがあります。中国は淘汰にむかう一方、新しいハイテクベンチャーを興したり、海外買収をすすめたりしています。日本は中国への投資金額を3年で約半分にしていますが、中国がまだ成長市場であることは間違いありません。こうした中国の状況をふまえて、どのように日本が関わっていくべきか考えることが重要です。

分野: |スピーカー: 村藤功

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