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中国の現状

村藤功 企業財務 M&A

16/02/01


今日は、中国の現状について話します。

1月16日に、中国に関連して二人のトップが誕生しました。一人は、台湾の民進党から台湾総統となった蔡英文です。これまで国民党が「ひとつの中国」の原則を認めて中国と親しくしてきましたが、彼女はこれを認めていません。もう一人が、AIIB(Asian Infrastructure Investment Bank)の金立群総裁です。AIIBとは、中国の新シルクロード構想を金融面から助けるために作られたインフラ投資銀行のことです。金総裁はこれまで、アジア開発銀行の副総裁を務めていました。

中国の内政面でも、最近、いろいろなことが起こっています。これまで30年間続いてきた一人っ子政策をやめて、この1月から二人っ子政策を採用することにしました。一人っ子政策によって生産年齢人口が減り、GDPの成長率が落ちてきたことが原因です。高齢化も進んでおり、少ない生産年齢人口がたくさんのお年寄りを支えるという、日本でも見られる状況に陥りつつあります。

環境問題も大きくなってきています。これまでは、北京や天津が所在する河北省の大気汚染が大変なことになっていました。河北省だけではなく、昨年末に私たちが大連に赴いた際には、大連の空がかつてないほどに曇っていました。冬になると皆が石炭で暖をとるため、空気がますます悪くなります。このような状況が続くと、外国人や金持ちの中国人が逃げ出してしまいます。とてつもないお金と時間がかかるものの、そろそろ環境問題に真面目に取り組まなければならない状況となってきました。

中国の経済成長には、スローダウンが見られます。先日発表された2015年の実質経済成長率は、6.9パーセントでした。株式市場は、昨年の前半には好調であったものの、後半に入ると落ち始め、世界に影響を与えています。一方で、中国の人民元は、IMFのSDR(Special Drawing Rights)に2016年10月に組み入れられることになり、世界各国の中央銀行はこれに対応するために、人民元の外貨準備への組み入れを増やすと見られます。

中国は、いろいろな自由化を推し進めています。たとえば、金融の預金金利の上限を撤廃しました。これまでは貸出金利は自由化されていたものの、銀行の利鞘を守るために預金金利を一定以上に上げることはできませんでした。預金金利がインフレよりも低いために、地方の不動産など、シャドー・バンキングと呼ばれるより金利が高いところにお金が流れていました。その結果、ゴースト・タウンができたり、不良債権問題が起きたりと、いろいろな騒ぎとなっていました。今回の撤廃によって、皆が銀行に預金することが期待されます。

中国は、中進国の罠に陥っています。少し前に南アメリカ諸国が中進国になりましたが、その後先進国になることができていません。先進国に進むためには、世界で一番となるような産業を研究開発しなければなりませんが、これがなかなか進展しないのです。中国の労働コストは毎年10%くらいずつ上がっており、労働コストの面で発展途上国と勝負できなくなっています。もう労働コストが安い途上国として発展するわけにはいかないのです。

中国の産業面では、鉄鋼産業が大きな問題を抱えています。中国は、世界の半分の鉄鋼を生産しています。しかし経済成長がスローダウンしてきたため、そこまで多くの鉄鋼はもはや不要です。そのために余った鉄鋼が安価で世界中に出回り、他国の鉄鋼業が皆赤字に陥るという事態になりました。そこで皆で中国に設備の廃棄や補助金の廃止などを求め、中国の生産能力を減らそうとしています。

中国の労働コストが上がったことで、日本の衣料にも変化が見られます。かつてユニクロは、製品の9割を中国で生産していました。現在では中国生産比率を6~7割に落としていますが、それでもなおユニクロの製品の価格は上がっていく見通しです。またおもちゃや運動靴も中国でたくさん作られていましたが、現在では、より労働コストが安い発展途上国に生産地が移りつつあります。

今日の話をまとめます。
中国では、人件費の高騰や環境の悪化によって、経済成長が鈍化してきました。人民元や株が売られています。鉄鋼や造船など、過剰生産力を抱えているところは、安値で輸出しています。一方で日本では、中国からの衣料の輸入価格が上がり始めました。中国は、世界の工場からサービス・消費国へ転換しつつあり、大国化が確実に進んでいます。一人っ子政策が二人っ子政策に変わり、定年も延長されつつあります。時間はかかるものの、今後は働き手が増えることとなります。一方で預金金利が自由化され、IMFのSDRに人民元が入ることとなりました。また、新シルクロード構想を実現するために、AIIBをこの1月に発足しました。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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