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人間は合理的ではない

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/02/03

「なんだ、そうなのか!経済入門」という本のエッセンスを紹介していますが、今日は「人間は判断を間違える」というお話です。

これは、人間は合理的に行動するわけではないということです。
前回は、ビュッフェレストランに行くと無理をして最後の一口を食べる人がいるというお話をしましたが、
今日も似たようなお話をいくつかご紹介したいと思います。

まずは「ダイエットが難しい」というお話です。ダイエットを試みたけれども成功しなかったという人は多いはずです。それは、人間が将来の事よりも現在の事を大きく考えるように脳が出来ているからです。

具体的にはどういうことかというと、例えば目の前にケーキがあった場合、これを食べたら将来太るだろうな、嫌な思いをするだろうなという思いよりも、これを食べたら美味しいだろうなということの方が頭の中で大きくなってしまうのです。そのため、とっさに判断するときにはどうしてもケーキを食べてしまう、ということになるわけです。子供の頃、夏休みの最後の日に徹夜で宿題をやるという経験をした人は多いと思いますが、これも同じです。最後の日に苦労するだろうなということもわかっているけれども、それは頭の中では小さく、目の前のおもちゃや楽しいことに心を奪われて遊ぶことの方が頭の中で大きくなってしまうのです。

これは、目の前の欲に中々勝てないということですが、これはもう人間の脳がそういう風に出来てしまっているので、しょうがないことだとも言えます。

意志の強い人は良いですが、そうではない人は他人に自分を縛ってもらうということを考えてみましょう。例えば、知人に「私ダイエット中だから」と宣言して回るという手があります。そうすると、友達と食事に行ったときに、デザートを食べたいなと思っても、友達の手前デザートは頼みにくいな、と頼まずに我慢することができますね。

他人に縛ってもらうという意味では、「天引き貯金」というものがあります。これは、給料の中から何万円か引いて貯金してもらい、残りを給料袋にいれておいてもらうというものです。これも貯金をするには非常にいい方法です。給料をもらい、なるべく倹約してお財布に残っている金額を貯金する、というルールにしておくと、大抵の人は次の月の給料日にはお財布が空になっています。でも最初に天引きしておくと、天引きされて残ったお金で生活するしかないので、自然と贅沢をしなくなります。そうするとお金が貯まるわけです。

この遠くのことが小さく見えるというのを利用した良い例として、昔政府が年金の支給開始年齢を引き上げるという法律を作りました。この時、来年から引き上げますというと、恐らくすごい反対があり法律は通らなかったと思いますが、遠い将来に年金支給開始年齢を引き上げますよという法案だったため、誰も気にせず、反対運動をした人もいませんでした。

実際には自分の身に降りかかることなのですが、先のことであったため、頭の中でそのニュースがとても小さく映ってしまったわけです。これは政府としてはよく考えた策だと思いますね。こんな法律があっさり通ってしまうというのは素晴らしい。

やはりこうやって人間はたびたび判断を間違うということなのです。

他にも「最初に目にした数字が大事」というお話もあります。
「これ100円だよ」といわれると、「ああそうか」と思いますけど、「これ普段は200円なんだけど、今月だけ半額セールだから100円なんだよ」と言われると、すごい得した気がしてつい買ってしまうことがありますよね。

それは最初に200円という数字が頭にたたきこまれていて、それと比べて安いと言われたからであって、別にその品物が100円の価値なのか200円の価値なのか本人は分かっているわけではないのです。

これは私自身の失敗談なのですが、親戚の若者が会社のノルマで製品を親戚に売ってこいと言われましたと訪ねて来たわけです。そして「10個買ってください」というわけです。冗談じゃない、そんな10個も買えないということで、「じゃあ2個なら買ってやろう」と2個買ってやったわけです。ところが、最初から2個買ってくださいと言われたら、おそらく1個しか買わなかっただろうなと思い、うまいことやられたなと思ったということがありました。

最初に多めの数字を言うというというのは、その逆手をとると売りやすくなるということなのでしょうね。

他にも間違いの例として、「ものの言い方が大事」というお話がありあす。
例えば医者から「あなたはこの手術を受けますか?」と聞かれるときに、「先生その手術って危ないんですか?」と聞きますよね。「この手術は90%助かりますし、最近私がやった手術でも患者さんは助かりましたよ」と言われるのと、「この手術をすると、10人に1人は亡くなるんですよね、最近私が手術した患者さんも不幸なことに亡くなられました」と言われるのとでは印象が全然ちがいますよね。

数学的に割合としては全く一緒ですが、「90%は助かる」と言われた方が、受けてみようという気になると思います。

これを応用した賢い国がありました。臓器移植の話なのですが、日本の法律では、臓器移植をしてもいい人は○をしなさいということになっていますよね。ある国で、臓器移植をしては嫌だという人は×をしなさいという国があります。その国は臓器移植をする人が多いらしいです。要するにものの聞き方で、○をしなさいと言われても×をしなさいと言われても、何もしないというひとが結構いるということですよね。これも数学的には同じですが、○をしなさいと言われるより、×をしなさいと言われる国の方が、臓器移植をする人がずっと多いということなのです。ものの言い方でも人間は判断を誤る場合があるということです。

では今日のまとめです。
人間は合理的に行動しないものです。ダイエットも貯金も難しいので、他人に縛ってもらうとよいでしょう。最初に目にした数字が、その後の判断のベースになる場合も多いです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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