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消費税負担軽減

村藤功 企業財務 M&A

15/11/25


今日は、消費税の軽減税率について話します。

昨年の4月、それまで5%だった消費税が8%に上がりました。当初の予定では、今年の10月から10%にしようという話でしたが、経済の状況が悪いために1年半先送りして、再来年の4月から10%に上げることになりました。公明党は選挙公約において、消費税を10%に上げる際に軽減税率を導入することを掲げており、自民党もこれに同意していました。しかし実際にやろうとすると、いろいろなシステムの変更が必要となります。今年末の来年度税制改正の大綱に具体的な制度を明記して、来年1月の通常国会に提出しないと、間に合いません。また、来年の夏には自民党と公明党の協力が必要な参議院選挙を控えていますので、あまり揉めることはできません。

ヨーロッパにおけるインボイス制度のように、取引品目毎に税率や税額、事業者番号を記載する伝票を売り手が買い手にわたすという形にすれば、話は簡単に済みます。しかし日本では、帳簿上の売上げに税率をかけて税額を計算するという、かなりざっくりとしたやり方を続けてきたため、簡単にインボイス制度を導入できないのです。特に中小企業であれば、なおさらです。

また、軽減税率の対象についても、未だ定まっていません。お米、生鮮食品や加工食品が候補に挙がっています。公明党は、低所得者は生鮮食品だけではなく加工食品を購入しているため、加工食品を対象に入れようと言っています。自民党は、加工食品まで対象に入れると、社会保障に回すお金がその分減ってしまうため、生鮮食品だけを対象にしようと言っています。

導入方法について、当初財務省は皆に10%分を払わせた上で後に低所得者に2%分を返すという「還付方式」を提唱していました。しかしそれでは、最初から軽減するという公明党の約束に反するために、財務省案は葬り去られました。最近では、業種ごとに「売り上げに占める軽減税率の割合」を定めて納税額を決める「みなし税方式」を3、4年間実施し、徐々にヨーロッパのようなインボイス方式へ移行しようという話になってきています。

もともとは消費税を上げることで、国の借金の一部を返済する予定でした。しかしその話は消えてしまい、消費税を上げて得られるお金を全て社会保障にあてることになっています。消費税を1%上げれば1.4兆円の税収が見込まれるため、8%から10%に上げた際には2.8兆円が入って来る計算になります。既に、医療と介護に1.5兆円、子育てに0.7兆円、年金に0.6兆円をそれぞれあてるなど、これらの使い道は決まっています。自民党は公明党に対して、軽減税率の対象を広くすると税収が減るため、こうした社会保障へあてられるお金が少なくなると脅しています。そのために、おそらくは、自民党の思惑通りに生鮮食品だけが軽減税率の対象となり、追加予定にある社会保障施策の多くが導入されるのではないでしょうか。今回政府は、軽減税率を認めることで、約4千億円かかる社会保障の「総合合算制度」の導入を見送る予定です。これは、医療や介護、保育などを合わせた世帯ごとの自己負担総額に上限を設けて、低所得者家計への負担を減らそうというアイディアです。生鮮食品に軽減税率を導入するためには、この施策の導入を見送らざるを得ません。


今日の話をまとめます。
再来年の4月に、消費税が8%から10%に引き上げられる予定です。同じタイミングで、消費税の軽減税率を導入することになっています。今のところ、みなし課税方式を使った軽減税率が導入される見込みです。軽減税率の対象として、生鮮食品のみか、加工食品をも含むかという点で、自民党と公明党が揉めています。加工食品を含めてしまうと、低所得者に対する追加の社会福祉策のうち多くを諦めることになるため、生鮮食品のみが対象となるのではないかと私は考えています。安倍政権は、税制会長を野田さんから宮沢さんへ交替させ、軽減税率制度を今年末の税制改正大綱に間に合わせようとしています。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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