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老後資金運用の心構え

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/11/05


このたび、拙書『老後破産しないためのお金の教科書』が刊行されました。これから数回にわたって、この本のエッセンスを紹介いたします。

今日は1回目なので、老後資金を運用する際の心構えについて御話ししましょう。
老後の生活を考える時、一番心配なのは、長生きをしている間に蓄えが底を突いてしまうことです。長生きする事は良い事なのですが、老後資金のことだけを考えると、長生きはリスクなのです。そこで、長生きをしても困らないような備えをする必要があります。

これは、理屈ではわかっても、実際には簡単ではありません。長生きのリスクを考えた時の一番強い味方は、公的年金ですから、これを大事にしましょう。まず、ねんきん定期便で、自分の年金記録が正しい事を確認しましょう。それから、過去に公的年金を納めていない期間がある場合には、後から納めることが出来ないか、年金事務所に相談してみましょう。もっと大事なことは、年金を受け取り始める年齢を70歳まで待つことです。年金は65歳からもらえるのですが、70歳まで受け取らずに待っていると、その後の受取額が42%も増えるのです。100歳、120歳まで生きても、年金が42%多くもらえるのであれば、安心ですよね。年金については、別の機会に詳しくお話ししましょう。

長生きのリスクに備えることの次は、インフレに備えることです。老後のために頑張って貯金をしても、インフレが来て貯金が目減りしてしまっては困ります。長生きをすればするほど、その間にインフレが来る可能性は高くなりますから、下手をすると「長生きをしている間にインフレが来る」というダブルパンチになりかねないわけです。

そこで、資産は現金で持たずに、インフレに強い株式や外貨などで運用することが重要になってきます。株式投資というと「バクチみたいで嫌だ」と考えている人もいるでしょうが、じつは株式投資には二種類あるのです。

「今日買って明日売って儲けよう」というのは、確かにバクチっぽいですよね。明日の値段が今日より値上がりするか値下がりするか、予想するのは難しいですから。しかし、安定している大企業の株を買って、そのまま持っているのであれば、それほどバクチっぽくありません。安定した大企業の株価は、それほど動きませんし、安定的に配当を支払ってくれます。しかも、株式はインフレに強いので、インフレになっても損をしないという安心感を与えてくれるのです。

ドルも、株と似ています。「今日買って明日売って儲けよう」という取引は、バクチっぽいので、お勧めしませんが、ドルを買って長期間持っているのであれば、インフレに備えるという意味で立派な投資でしょう。
株やドルに投資しない部分も、「インフレに強い国債」などに投資すると良いでしょう。普通の国債はインフレが来ると目減りしてしまうのですが、中にはインフレに強い国債もありますので、ぜひ検討してみて下さい。

資産運用の基本は、分散投資ですから、リスクの分散に心がけましょう。株式だけを持っていると、株価が下がった時に大損をしてしまいます。ドルだけを持っていても同じことです。また、現金だけを持っていると、損をする事はありませんが、インフレの時に資産が目減りしてヒドい目に遭ってしまします。しかし、株とドルと現金をたとえば3分の1ずつ持っていれば、どれかが値下がりしても、損失は3分の1で済みます。株とドルが値下がりし、しかもインフレになって預金が目減りする確率は8分の1です。実際にはインフレになると株とドルは値上がりする可能性が高いので、大損をする確率は8分の1よりも更に低いはずです。

このように、様々なものを少しずつ持つ、というのが資産運用の常識なのですが、もう一つ重要なことは、時間分散ということです。一度に大量に買わずに、何年かかけて、少しずつ買う、という事です。

昔、バブルの時に退職金を受け取って、一度に大量の株を買った人が、バブル崩壊で大損をした、という事がありました。株価が上がっている時には、初心者ほど「急いで買わないといけない」と思い込んでしまい、結局高値掴みをしてしまう傾向があるのです。そんな目に遭わずにすむためには、株やドルを買う金額を決めておいて、10年かけて10分の1ずつ買って行けば良いのです。

老後資金の心構えという時に重要なのは、儲けようと欲張るのではなく、リスクを避けることを最重要に考えて下さい。儲けようとすればリスクが増えます。リスクの大きい投資をして老後資金が減ってしまっては大変ですから、くれぐれも欲張らずにリスクを避けることが大切です。

最後に、老後資金というと、資産運用の話がどうしても多くなりますが、本当に一番大切なのは、老後も働いて収入を得る、ということです。少ない元手を頑張って運用するよりも、働いて増やす方がずっと確実だからです。

御主人が定年後も再雇用してもらえるなら、是非頼みましょう。昔の部下に仕える事があるかもしれませんが、仕事があるだけマシだと思って我慢しましょう。再雇用でなくても労働力不足ですから雇ってくれる会社を探せば見つかるでしょう。とにかく元気な間は働きましょう。

奥様が専業主婦の場合も、御主人の定年後は遠慮なく働きましょう。御主人の扶養家族になるために働き方を工夫する必要はありませんし、家事や育児の手間もかからないでしょうから、思い切り稼ぎましょう。場合によっては、厚生年金を支払うくらい働いて、将来厚生年金がもらえるようにしておく事も、検討してみましょう。

まとめ:老後の資金は、リスクを避けて安全に運用しましょう。長生きとインフレのリスクに備えて、公的年金をしっかり受け取れるようにしましょう。現金ばかり持つのではなく、インフレに強い株やドルなどにも分散投資しましょう。
なお、今日の御話の内容は、番組のホームページに載せるほか、概要を私自身のホームページやFacebookでも御紹介しています。御覧いただければ幸です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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