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ニューヨークの交通にみる日本企業のビジネス=地下鉄

星野裕志 国際経営、国際物流

15/10/19

この夏はコロンビア大学で研究のためにニューヨークに1ヶ月間滞在しましたが、毎日利用していた交通機関のことを日本企業の活動と絡めて、お話したいと思います。

この20数年間、平均すると毎年一回くらいのペースでニューヨークを訪れますが、行くたびに町が安全になっていくように思います。危険も感じないし、こちらも緊張感が薄れていくように思います。

今では夜遅くまで女性が歩いていることもそうですが、特に夜の地下鉄危険を感じなくなったように思います。時間が遅くなると、ホームでは人の集まるところで電車が来るのを待ったり、人の少ない車両に乗るのは避けたものですが、今はそれもありません。

以前のニューヨークの地下鉄というと、車体の落書きやシートの破損というのがひとつの象徴でしたが、その解消に川崎重工業の納入した地下鉄が一役買っていることはよく知られています。メーカーの川崎重工業ですが、正確に言うと当初は日本からの輸出で、現在納入されている車両はアメリカ製です。川崎重工業は、1982年にニューヨーク市交通局(New York City Transit)から地下鉄車両325両を受注して以来、累計で2,000両以上の納入実績があります。
ニューヨーク市交通局は、アメリカ最大の鉄道事業者なので、車両だけでもフランス、カナダ、ドイツなどの複数のメーカーが納入しています。川崎重工業がその中でも最大のシェアを占めているようです。

現在納入されているのは、2011年に受注した新車の103両と既存の車両の改造370両の契約分ですが、新車の車体製作は、ネブラスカ州のリンカーン工場で、機器取付け、最終組立と試験と既存の車両の改造は、ニューヨークの北にあるヨンカース工場行われているようです。つまり日本の企業ですが、アメリカ製ということになります。

鉄道車両の現地生産といえば、イギリスの高速鉄道を受注した日立製作所も、今年の3月に、最初の納入分が山口県にある笠戸事業所から出荷されて、今後は英国内のニュートン・エイクリフというところで建設中の鉄道車両工場で製造されるそうです。川崎重工業は、既に1980年代にニューヨークに工場を設置しています。

これらの川崎重工業や日立製作所は、現地生産の意味するところですが、日本の企業であっても、現地で生産することで地元の雇用機会の創出や地域経済に貢献することが挙げられます。好感を持って受け入れられます。

特に、アメリカでは車両の調達に政府の資金が投入された場合、車両の機器や装備などの調達コストのうち60パーセントがアメリカ国内で支出されるというローカル・コンテンツの規定と、最終組立が米国内で行われるという、アメリカ製品の使用義務であるバイ・アメリカ(Buy America)という法律が有ります。高い技術力と信頼性があれば、外国企業にもチャンスがありますが、やはり現地への配慮が求められるということですね。

今日のまとめ:今日はニューヨークの地下鉄の最大の納入メーカーである川崎重工業の例から、日本企業が海外で受注する鉄道車両の戦略についてお話しました。
      

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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