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原価が決まるのは会議室だ!?

丸田起大 管理会計、コストマネジメント

15/08/27

今日は「原価管理」の話をしたいと思います。

皆さんの組織では、「原価がどこで発生しているか」と聞かれたらどのように答えますか。

「原価」ということは、何かを生み出す場所と考えられます。例えば製造業では、工場とか倉庫。サービス業では様々な店舗で原価が発生していると答えることができるわけです。有名なドラマの名台詞に、「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というのがありますね。
原価管理の世界では、この言葉を「原価は現場で発生している」と言い換えて使うことができます。

しかし、日々コストダウンの要求に頭を悩ませている方々は、「原価は現場で発生しているけれども、会議室で決まっている」と叫ぶ必要があると思います。

これはどういうことか、製造業を例に考えてみましょう。
総原価を100%とすると、ビジネスプロセスの下流に位置している製造段階では原価の60%程度が、更にそれに続く流通段階で20%程度が発生しているという風に考えられています。しかしその原価は、ビジネスプロセスのどこで決まっているかというのを考える必要があります。そのビジネスプロセスは、製品の企画や開発という段階から始まると思いますが、その段階で企画書が承認されると、その時点すでにずっと後の製造段階で原価がどれくらいの範囲の中で発生するかというのはほぼ決まってしまっているという風に考えられています。
つまり、ビジネスプロセスが考えられた時点ですでにある程度の原価は決まっているといえるのです。
もちろん、スタートの時点ではまだ不確定な要素が多いため、その範囲には大きな幅があるわけですが、開発が進み、詳細な仕様が決まり、設計図が描かれていくうちに不確定要素も減り、原価はこの範囲で発生するというその範囲が狭まっていくことになります。そうすると製造段階に来る前に、ビジネスプロセスの上流の方でほぼ原価の8割位は決まってしまっているという風に言われています。

製造現場の人から見ると、もう既に決まってしまっている8割の原価を粛々と発生させているようなものなのです。とはいえ現場で決める余地が1,2割はあるわけですから、その範囲内で原価が高いとか低いとか上がった下がったと一喜一憂しているという風にも考える必要があるわけです。これを「原価の決定と発生のタイムラグ」と言い、このメカニズムをまず理解する必要があるかと思います。

次に考えるべきことは、「原価を下げる」ということを考えたときに、「誰が・どこで・いつ・管理すれば効果が大きいのか」という問題になると思います。原価の決定と発生にタイムラグがあるということになると、先程お話したように、原価を下げる最大のチャンスは「原価が決まってしまう前」です。つまり、企画や設計の段階にあるということになります。では企画や設計の段階を担っている人は誰かというと、「設計担当者」ですね。この方々がこの段階で原価を抜本的に下げるという努力をすることが最も効果が大きいということになります。

コストマネジメントでこういう考え方のことを「原価企画」と呼びます。「原価管理」といいますと製造段階で標準原価を設定して原価を管理しようというのが伝統的な考え方ですが、そうではなくて企画設計の段階で目標原価を設定して、設計担当者が原価を見積もって今の原価でいいかということを考えながら原価を作り込んでいく、という方法の方が、効果は大きいということが証明されています。

つまり、いよいよ作る時にこのくらいの原価に抑えようと考えるよりも、一歩手前の設計の時にどうするかを考える方が効果は大きいのです。そう考えると、製造現場の人は何もしなくてもいいのかというと全くそうではなくて、今度は製造現場の人たちは、例えば製品開発をしているプロジェクトチームの中にメンバーとして入っていく、製造現場で行っているQCサークルなどの小集団活動を通じて、現場でのつくりやすさや生産性の観点から設計担当者では気づきにくいような現場目線のアイデアを提供するということで貢献するということが必要になります。
それぞれの担当者が知恵を絞って意見を出しあうなど、組織全体で原価を下げるためにどういう貢献ができるかを考えるということが必要になります。

これからの原価管理のあり方を考える際には、「会議室で原価が決まる」というのは事実ですが、そこにいかに現場の声を届けるかということを考えていくことが大事だということになります。

今日は、これからの原価管理のあり方は、原価の8割が決まってしまう企画とか設計の段階で、製造現場の声もしっかりと反映しながら、原価をつくりこんでいこうというのが効果的だという話をしました。

分野: 会計 |スピーカー: 丸田起大

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