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期待値

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/07/10

「経済学入門」ということで、よくわかる経済学のお話をしていますが、今日は「宝くじは儲かるか」という話をしたいと思います。

年末ジャンボなどが売り出しの時には何時間も並ぶ人がいたりしますが、宝くじを買うと儲かるのでしょうか。それを考える材料になるのが「期待値」というものです。期待値というのは当たった時の儲けと当たる確率のかけ算です。例えば、「コインを投げて表が出たら100円もらえるよ」というゲームがあれば、表が出る確率は50%ですから、期待値は100円の50%で50円ということになります。「このゲームに何百回も参加していると1回平均で50円もらえるよね」というふうに考えていただければいいと思います。1回の参加費が50円であるならば、確率的に見て得でも損でもないということになります。これが「期待値」ということです。当たりくじが1本の1等1億円の宝くじがあったとします。その宝くじが100万枚印刷されて売り出されるとしたら期待値はいくらでしょうか。1億円の100万分の1の確率ですから計算すると100円になりますよね。この宝くじは100円で売っているのかというと、答えは宝くじ会社に聞かなくても分かりますよね。もしもこの宝くじが100円で売っていたとしたら、宝くじ会社は赤字で倒産してします。100円の宝くじを100万枚売ると売上が1億円、その中から1等の賞金1億円を支払うと宝くじを印刷する費用や社員の給料が払えませんね。

少し脱線しますけれども、相手の目線でものを見ると様々なものが見えてくる場合があります。相手の立場でというと、なんか優しい気持ちでとか何かそういうイメージがありますけれども、そうとは限りません。お客さんの立場に立って、お客さんがどうやったら衝動買いをするのだろうと考える広告宣伝など、色々相手の立場に立つというのはメリットが時としてあります。囲碁や将棋をするときなども自分が一番指したい手をさすのではなく、相手の立場に立って相手が一番いやな手を指すのが勝つ秘訣になります。

少し実用的な話をすると、詐欺に遭わないためにも相手の目線で考えるということは大切です。見知らぬ人が「絶対儲かる話がありますけど」と言ってきたら、「どうしてこの人は私に親切にしてくれるのだろう」と考えましょう。そんなに素晴らしい話を知っているのならば、自分の友達とか親戚に紹介すればいいのに、どうして見知らぬ私に紹介してくれるのかな、と考えればなんとなく怪しそうだなということに気づきますよね。これは是非皆さんにやってみていただければと思います。

ところで先程の話ですが、宝くじは100円で売っているわけはないので期待値でみると損になりますが宝くじを買う人がたくさんいる。これはどうしてでしょう。これは夢を買っているという要素が強いのだと思います。そのこと事態は個人の好きずきですから、合理的であるとかないとか正しいとか間違っているとかそういうことでは全くありません。経済学者の中にも、宝くじとか競馬が大好きな人を見かけます。経済学者だからといって期待値通りに行動しているというわけではありませんからね。

リスクとリターンに対する好みが人によって違えば行動も勿論変わってきますよね。例えば美味しそうな食べ物が賞味期限を過ぎているときに、リスクをおかしても美味しさを求めて食べてしまう人とリスクを避けておいしさを諦めて捨ててしまう人といますよね。どっちが正しいとか人間として優れているとかそういうことではありませんね。人によって違うというだけのことです。リスクを覚悟した上で儲けを追求するか安全策をとるかという選択は、株式投資をするか銀行預金をするか、自分で会社を作るかサラリーマンになるか、といういろんな場面で出てきます。一般に日本人よりもアメリカ人の方がハイリスク・ハイリターンを好む人が多いみたいですね。金融資産に占める株式の割合はアメリカ人の方が高いですし、サラリーマンにならずに会社を興す人もアメリカ人の方が多くなっています。

さて、保険の話に移りましょう。火災保険に加入すると、火事の時に例えば1,000万円の保険が受け取れるとしましょう。火事になる確率が1/1000だとすると、受け取れる保険の期待値は1万円ですよね。では、保険に加入するために支払う保険料は1万円でしょうか、それより高いでしょうか。

先ほどの宝くじと同じで、1万円で保険に入れてしまったら保険会社つぶれてしまいますね。

でもやはり火災保険に入っている人というのはたくさんいらっしゃいますね。それは住む場所がなくなってはとっても困るからです。期待値がマイナスだから保険に加入しないと言い張っていて、いざ火事になって自宅が焼けてしまったときには住むところがなくてものすごく困るわけです。つまり、保険というのはすごく困った事態が起きないようにするというものなわけです。

庶民はそれでいいですが、大金持ちは火災保険に入らないかもしれませんね。自宅が焼けてしまったら、貯金を下ろしてもう1回自宅建てればいいんでしょというくらいお金を持っている人は、わざわざ期待値がマイナスである取引をする必要がないからです。しかし普通の庶民はそういうわけにはいかないので、火災保険に入っていた方が安心だということです。自動車を運転する際の保険は必ず入るべきだと思います。万が一大きな事故を起こしてしまった場合に賠償金が払いきれずに自分が破産するのも嫌だけれども、それよりもっと嫌なのは被害者に大きな迷惑がかかってしますことですよね。

今日のまとめです。

期待値とは当たったときの儲けと当たる確率を掛け合わせた値です。期待値がマイナスでも宝くじを買ったり保険に加入する人がいます。それは夢を買ったり、逆に万が一の際に大変困った事態に陥るのを避けるためです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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