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日本の経済成長

村藤功 企業財務 M&A

15/07/07


今日は、日本の経済成長について話します。

日本は小さい島国ですが、海外から輸入したものに付加価値を付けて海外へ輸出することで、貿易収支を黒字に保っていました。しかしこの四年くらい、貿易赤字が続いています。震災後に原子力発電の操業が停止し、代わりに火力発電所を動かし始めましたが、そのために原油やLNGを大量に輸入しなければならなくなり、輸入額が増加しました。一方で、プラザ合意やリーマンショック以来続いていた円高のために、日本の工場が中国や東南アジアに移りました。それらの工場から製品が輸出されたとしても、それはアジアからの輸出で日本からの輸出品には含まれません。そのために、輸出額は減少しました。したがって、貿易収支が赤字に転じているのです。

日本が海外に対して持っている金融資産から海外が日本に対して持っている金融資産を引いた純金融資産は、実は世界一です。そのため、海外に持っている金融資産から貰うことができる金利や配当などの所得収支も、相当に大きいものです。所得収支が大きい以上、日本経済は当面は大丈夫と考えられていました。しかし、すごい勢いで貿易収支が赤字となり、これまで貯めてきた純金融資産から生ずる所得収支を超えて、経常収支が一時赤字になってしまいました。日本では大方の経済学者が、こうした事態を予測していませんでした。ところがその後、ありがたいことに円安が進み、アメリカ経済が回復し、日本からアメリカへの輸出が増えました。また、原油が安くなったこともあって、貿易収支の赤字が小さくなってきました。その結果所得収支の黒字が貿易収支の赤字を超えて、経常収支が黒字に戻りました。

一方で、サービス収支に含まれる旅行収支は、これまで大変な赤字でした。しかし近年、日本を訪れる外国人旅行者が随分増えて、旅行収支が黒字化してきています。その理由の一つは、円安です。日本から海外へ行くことは難しくなっていますが、海外から日本へは来やすくなっているのです。また、海外からの旅行者を受け入れようと、デパートの中に免税店を設けたり、韓国語や中国語で対応できるように整えたりと、外国人旅行者を受け入れるためにいろいろな努力を講じています。

なおアメリカは、以前は大変な貿易黒字国でしたが、最近では貿易赤字国になっています。先進国では、いずれは輸入が輸出を上回るものなのかもしれません。少子高齢化が進むにつれて輸入が順調に増える一方で、輸出が増えないという構造が恒常化してきています。日本をどのように成長させるか、これからますます問題になってくるでしょう。日本のGDPは、過去20年間、500兆円くらいのままです。一方で、この前に日本のGDPを追い越した中国のGDPは、既に1200兆円から1250兆円に達しています。購買力平価(PPP)で見ると、中国のGDPは既にアメリカを超えました。

日本政府は、今年の成長戦略として、産業の新陳代謝の促進や雇用制度改革、大学改革、市場創造を挙げています。新陳代謝の促進とは、ロボットの開発や、インターネットオブシングス(IoT)やビッグデータの活用など、新しい産業を進めていくことを指します。また、ベンチャーの人たちを、アメリカのシリコンバレーに派遣しようという考えも見られます。他、世界の大学と互角に戦えるような、特定研究大学制度を創設しようとしています。さらには、医療や農業における規制を緩和してマーケットを創造し、成長産業である医療や介護、健康産業をますます発展させようという動きも見られます。

今日の話をまとめます。
これまで貿易黒字が当然視されていた日本では、ここ四年ほど、貿易赤字が定着しています。しかし円安が進んでアメリカに対する輸出が増え、原油やLNGが安くなってきたために、貿易赤字が減り、所得収支と合わせれば経常収支は黒字となりました。しかし、過去20年間GDPが変わらない日本を成長させるためには、いろいろと考えていかなければなりません。海外のマーケットでどのようにしてシェアをとるか、国内の高齢者向け医療・介護・健康産業をどのようにして成長させるかという点を、これからますます検討する必要があるでしょう。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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