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安保法制

村藤功 企業財務 M&A

15/06/16


今日は、安保法制について話します。

安倍総理は、安保法制を整備し、法律にしようとしています。5月末には、国会審議に入りました。そこでは、グレーゾーン事態に関わる自衛隊法の改正、国際平和支援法、国際平和のためのPKOに関する法律なども議論に挙げられていますが、これらの法律よりもむしろ、以下で説明する後方支援に関する周辺事態や存立危機事態が、重要な問題を孕んでいます。

たとえば、周辺事態法について、その名称を重要影響事態法に変えて、国会審議を通そうとしています。周辺事態法では、日本の周辺のみが対象となっていました。しかしそうした地理的な制約を外して、重要影響事態法とすることで、日本の安全に対して重要な影響を与える場所であれば日本の周辺でなくても対象に入るようになります。この法律が通れば、世界中どこでも後方支援のために自衛隊を派遣することが可能となります。

特に今問題となっているのは、南シナ海の後方支援です。中国には石油がないため、中東から石油を輸入するために、南シナ海にタンカーの航路を確保しなければなりません。中国は現在、南シナ海を埋め立てて基地を作り、飛行機の滑走路や大砲、日本やグアムを狙うことができるミサイルを設置しているために、フィリピンやベトナムと南シナ海で揉めています。アメリカはこうした中国の動きに怒っていますが、お金がないために行動を起こすことが難しいため、日本に対して協力を求めています。こうした流れの中で、先に述べた後方支援の話が出てきているために、事態はさらにややこしくなっているのです。

重要影響事態法は、他国の軍事活動の後方支援を念頭に置いた法律です。実際に後方支援のために派遣する際には、事前の国会承認が必要となりますので、法律として作る分には大きな問題はないものと自民党は考えています。しかしたとえば南シナ海で中国とアメリカが戦うこととなると、重要影響事態法によって、日本は否応なく巻き込まれることになりかねません。アメリカ同様日本にもお金はありませんので、そうした状況に陥ることは避けたいところです。

また、「日本の存立危機事態」という言葉も、多く聞かれます。憲法を改正せずに、集団的自衛権を行使するためには、①日本と密接な他国が攻撃され、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があり、②他に適当な手段がなく、③必要最小限の実力行使にとどまる新三要件を満たす「日本の存立危機事態」であることが条件とされています。この場合、日本と親しい第三国が攻撃された場合であってもそれが日本の存立危機事態であれば集団的自衛権を行使してよいのではないかという議論が、盛んに行われています。

特に、日本が輸入する石油を運ぶ石油タンカーの九割が通ると言われるホルムズ海峡が、問題となっています。とても狭い海峡で、イランとオマーンの領海に含まれます。そこにある機雷を取り除く必要がありますが、日本では憲法九条によって海外の国の領海に軍隊を派遣することはできません。しかし安倍総理は、ホルムズ海峡の機雷掃海は日本の存立危機事態に含まれるために、自衛隊を派遣して機雷の掃除をすることはできると考え、アメリカにもそのように伝えています。この件を含む集団的自衛権の行使は憲法学者たちによって違憲と言われており、大きな議論を呼び起こしています。

こうした事態を認めると、これまで遠いがために関係ないと考えられていた中東紛争や、イスラエル対アラブ諸国の戦いに、日本が巻き込まれることとなりかねません。どうしても回避できない事態において自国を守ることは仕方がないとして、これまであまり関係がなかった南シナ海やホルムズ海峡になぜわざわざ自衛隊を派遣しなければならないのでしょうか。お金がないアメリカからの要請にしたがって、日本もお金がないのにアメリカの役割を一部果たそうとしているのではないでしょうか。安倍総理の言う積極的平和主義は憲法違反なのではないのでしょうか。

今日の話をまとめます。
国会では、集団的自衛権の行使を許すかどうかをはじめとして重要影響事態法や武力行為事態法を成立させるかどうかについて激しい議論が起こっています。南シナ海における後方支援やホルムズ海峡での機雷の掃海、尖閣における日米共同防衛などに携わるとなると、アメリカと中国の戦争や中東戦争に巻き込まれる可能性が出てくるため、大変に危険だと思います。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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