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第六大陸は内部統制

谷保廣 アカウンティング、ファイナンス

15/06/22


アカウンティングは、六大大陸から成っています。今回はそのなかの六番目、最後の大陸である内部統制についてお話します。これは、不正会計をキーワードとするアカウンティングです。

第六大陸は、アカウンティングマップを縦切りにした場合には受託責任のところに、横切りにした場合には内部会計のところに位置します。株主から甚大な責任を受託した経営者は、自分ひとりの力でこれを果すことはとても叶いません。そこで、大きな責任を小さく分割し、権限とセットで部下たちに委譲します。すなわち、権限と責任の委譲です。第五大陸である企業統治において資金の受託者であった経営者は、ここでは権限と責任の委託者へと転じます。そして内部統制という制度によって、部下を監視することになります。内部統制とは、企業の資産を保全し、会計記録の正確性を確保するために、経営者が設定した制度のことです。これがきちんと整備・運用されていれば、従業員の逸脱行為を未然に防止し、財務諸表に対する信頼性が高まります。

時折新聞紙上で、不正会計が話題となることがあります。粉飾決算ともいいますが、大概は利益の水増し計上です。このような不祥事には、経営者自らが中心的役割を果すケースと、経営者が与り知らないところで従業員が遂行するケースとがあります。内部統制がとりわけ威力を発揮するのは後者のケースです。代表的な不正会計は架空売上の計上です。会社の営業担当は、それが営業所長であれ、一営業パーソンであれ、厳しい販売予算を課されています。予算を達成すれば昇給昇進を期待できますが、未達となれば多かれ少なかれ不都合が生じます。そこで魔が差して、売上高の偽装に手を染めることになります。ただ、当該売上高はもとよりフィクションですから、そこにはいろいろな無理が潜んでいます。得意先からの注文書も偽造しなければなりませんし、行き場のない出荷商品をどこかに隠さなければなりません。売上代金の請求書が得意先に届いてしまえば、一大事となります。当然に代金の回収もありません。とはいえ、これらの無理の数々も、一人の人間がすべての業務を執り行い、誰のチェックも入らなければ、露見する恐れはありません。

そこで、内部統制が必要となります。ここでは、職務分掌と内部監査の二つがキーワードとなります。職務分掌とは、一人の人間にすべての業務を担当させないことを指します。先の話を例にとれば、起票担当と売掛金の回収担当を分けるだけで、売上高の偽装は容易ではなくなります。また内部監査とは、会社内部の監査部門が従業員の業務遂行をチェックするというものです。多くの会社が内部監査室を設け、スタッフを置き、監査役との連携を図りながらこれらスタッフに会社の各拠点を巡回させています。

しかしこれで盤石と言うことはできません。不正会計の手口は様々に進化しており、摘発が困難なケースも増えているのです。今、公認会計士にとって最強の敵の一人と目されているのが、循環取引です。循環取引とは、会社が架空で売り上げた製品・サービスが、共謀関係にある他社をいくつか経由して、最終的に当該会社の仕入に回帰する取引をいいます。つまりは、子供の遊びのカゴメカゴメよろしく、複数の会社が輪を作って、A社がB社に売り、B社がC社に売り、C社がD社に売って、最後にD社が最初のA社に売るという次第です。A社もB社もC社もD社も事前に示し合わせているわけですから、架空の取引でありながら、正規の取引と同様に書類はすべて揃っています。代金の授受も行われますので、一見するとまっとうな取引なのです。これを摘発することは大変難しい。しかし、私たち公認会計士は監査のプロですから、摘発します。業界固有の慣行に温床を見つけたり、財務諸表の歪みに手がかりを得たりと、監査手法を駆使して挑みます。新聞において売上高が架空計上されたという記事を見られたならば、その背後に循環取引があるのではないかと考えていただきますと、記事の内容がよりよく解るかもしれません。

今日の話をまとめます。
アカウンティングマップの第六大陸は、内部統制です。内部統制の整備と運用によって、従業員の不正会計を未然に防ぐことができます。

さて、今回までの一連の話で、私は、アカウンティングは事業の言語である、と繰り返し語ってきました。これはビジネスの公用語です。どうぞこれを機会にアカウンティングに興味をもっていただき、アカウンティングマップの六大大陸を探査してください。必ずや皆さんのキャリアアップに役立つものとお約束申しあげます。長らくのご静聴、本当にありがとうございました。

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分野: アカウンティング グロービス経営大学院 |スピーカー: 谷保廣

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