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アカウンティングの正体

谷保廣 アカウンティング、ファイナンス

15/04/28


はじめまして。グロービス経営大学院から参りました、谷保廣と申します。なにとぞよろしくお願い申しあげます。

私は公認会計士として、自身の会計事務所で監査業務・会計業務・税務業務を営んでいます。併せてグロービス経営大学院の教授として、アカウンティングやファイナンスを教えています。ここで言うアカウンティングとは、いわゆる会計学のことと考えていただいて結構です。ファイナンスとは、会社の部署で言えば財務を指します。このように、会計士として現場で実務にあたる一方で、教職として学び舎で学問と教育に携わっている次第です。

さて、ビジネスの科目は、理論と実践の両輪で回す必要があります。まず、理論について考えてみましょう。私は公認会計士として、いろいろな会社の方々と接する機会が多くあります。現場の皆さんには、現実へ適用可能な会計理論やファイナンスのモデルで実践の礎を堅固にしていただきたいと考えています。よく役に立たないものの譬えとして「絵に描いた餅」という言葉を用いますが、アジア全域に何十種類もの餅があるのならば、好みの餅を選ぶ際にカタログやメニューがあると便利です。理論も同様であって、どのような理論があってどれを使うことができるかということを示した役に立つ「絵に描いた餅」がまずは必要となります。そしてそれらを知ることを、「学食の献立チェック」と私は呼んでいます。知識欲と食欲の違いはありますが、必要に応じて何を食べることができるのか、予め押さえておくことが重要なのです。

いま会計の世界で一番流行しているものは、英国料理です。イファース(IFRS)、すなわち国際会計基準のことです。国際会計基準は欧州のルールとなっていますが、70を超える日本の上場企業がすでにこれを任意で適用しています。日本企業であれば日本の基準を用いることが自然でしょうが、企業によっては国際会計基準とドンピシャの相性を有するところもあるのです。

具体例を示しましょう。たとえば、A社がB社を高値で買収したとしましょう。すると会計上、高値で払った超過払い部分は「のれん」という形で無形固定資産、すなわち資産に計上されます。大型買収になれば、その金額の規模は数千億円から一兆円を超える場合もあります。そうした大きな額が、貸借対照表という財産を示した表の中で、資産として大きく計上されます。その後減価償却という方法で費用化していくと、費用が利益を圧迫することとなります。日本の会計ルールでは、高値で大型の買収を行った場合、後々利益面で苦労するのです。ところが国際会計基準では、こののれんについて、償却する必要は一切ないという決まりになっています。M&Aを頻繁に行っている日本企業は、国際会計基準の任意適用によって、のれんの償却費で利益が減るという事態から逃れることができるのです。

次に、実践について考えてみましょう。たとえばある会社が、300万円の売掛金を得意先のC商店から期日になっても回収できないとします。C商店へ赴いてもシャッターが閉まっており、連絡を取ろうと電話をしても取り次いでもらえません。こうした窮地に陥った時であっても、会計理論の側はあっさりしています。その売掛金300万円に資産性がなければ、貸倒損失という費用に計上するのです。ところが「街場のリアリズム」という観点で現場へ行くと、事はそう簡単に進みません。300万円の全額が回収不可能かどうか判定しなければなりませんし、もしかすればその一割の回収はできるかもしれません。実務では、教科書どおりにいかない多様な問題が出てくるのです。MBAの皆さんには、こうした実務という厄介な連立方程式から、最適な解を求める実践の知恵を会得してほしいと望んでいます。

今日の話をまとめます。
アカウンティングの理論を実践によって活かし、アカウンティングの実践を理論によって鍛え上げてください。「学食の献立チェック」と「街場のリアリズム」の双方を、ゆめゆめお忘れなく。

分野: グロービス経営大学院 |スピーカー: 谷保廣

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