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食のグローバル化②

星野裕志 国際経営、国際物流

15/04/10

昨日は、ベジタリアンやヴィーガンという菜食主義の人たちや、ハラールやコーシャといった特定の宗教に沿った食事について、これからは日本でも求められるようになるとお話ししました。

最近では、様々なアレルギーをもった人に対する食品の表示は増えていますが、まだまだこのような特定の宗教の人たちを対象とする食事は、日本では馴染みはありません。そのため、日本に旅行や出張や留学で海外から来る人達の障害になることもあるようです。

そのひとつが最近よく聞かれるようになったハラール・フードです。これはイスラムの教えで口にすることを許された食べ物のことであり、その逆はイスラム教徒にとって有害な物、不浄なものを意味する「ハラム」と呼ばれています。豚やアルコールが禁止されているはよく知られていますが、爬虫類・昆虫、カエル、カメ、カニはハラムとして禁止されています。牛・羊・鶏等は食べても良い「ハラール」ではありますが、イスラム教の作法に沿って食肉処理がされる必要があります。なかなかプロセスが複雑ですし、入手が難しい分価格も高いようです。大学の近くにあるハラール・フードを扱うお店では、チキンはわざわざ冷凍してオーストラリアから輸入されていました。

そもそも、日本ではあまり馴染みがないことから、味の素のような大手の食品メーカーでさえ、2000年にインドネシアで起したハラール違反事件は、大きな衝撃を与えました。これは、味の素の製造過程で、調味料に豚肉の成分が使われているにもかかわらずハラール表示がされていることが判明したために、商品の回収と現地法人の日本人役員が逮捕されました。イスラム教の人達にとってみれば、安心してハラールだと思って使った調味料が、宗教で口にしてはならないハラムだったということですから、責任は重大です。
福岡県内には、ハラール・フードを扱うお店が3箇所あるようですが、その内の2つまでが、九州大学のキャンパスに近い箱崎九大前にあります。これはここにある九州初のイスラム教のモスクである福岡イスラム文化センターの存在はもちろんですが、九州大学の留学生との関係が深いようです。

箱崎のキャンパス近くにあるハラールの軽食を扱うお店は、今では伊都キャンパスにも出店しています。そうなるとイスラム教徒の学生さんたちも、安心して日本に留学し、家族も含めて住むことができるのかと思います。ハラールに対応することで、ビジネス機会にもなります。

そして最近日本企業が注目しているのが、世界のハラール市場です。イスラム教徒の人口は、現在世界で4人に1人で16億人を超えており、今後ますます増加すると言われています。そうなると国内のイスラム教徒を対象として、また来日するイスラム教徒の観光客やビジネスマンを対象に、さらに世界の16億人以上の市場を対象にして、事業を拡大したいという思いです。

そのためには、イスラム教に則った食材とプロセスで作られていることを示すハラール認証を取得する必要があります。国内でハラールの世界基準の認証を行う日本ハラール協会では、5つの基準を設定しています。1 ハラール製品を生産する体制が整っていること。2 製造・生産過程に加工が施されるものには、全ての原材料のハラール性が確認できる物のみを使用すること。3 ハラール・サプライチェーンを遵守すること。4 社内にハラール管理者トレーニングを修得したハラール管理者が就労していること。認証取得から2年間以内にイスラム教徒の雇用をすること。5 荷物昇降、製造ライン、品質管理、倉庫、配送に至る一連をHACCP , ISO9000などの基準に基いていることという基準があります。

これを読む限り、認証を受けることには大変な努力が必要だと思いますが、認証を得ることで、世界の巨大市場にアクセスすることができます。

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて、日本の伝統的な食文化の海外展開が推進されようとしています。和食の輸出だけではなく、世界の多様な食文化に対応することで、海外からのインバウンド客の受け入れだけではなく、
世界の市場をターゲットにすることが可能になります。まさに食のグローバル化です。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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