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「御社の強みは何ですか?」という問いに答えられない理由

荒木博行 戦略思考

15/03/06


今日は、企業の強みを考えるヒントについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

企業の強みはしばしば語られてはいますが、非常に難しいものです。私自身、様々な企業で「御社の強みは何ですか?」という問いかけをします。その都度、回答を伺ってきましたが、「それは本当に強みなの?」と首を傾げることも少なくありません。「強み」という言葉の意味を、まずはきちんと考える必要があります。
たとえば、営業力や技術力、現場力・・・といったキーワードが出てきますが、一皮剥いてみると、その根拠がいかに曖昧で心許ないものであることに気付かされます。

その回答における強みの根拠となっている事柄は、大抵以下の三つに分類されます。
一つ目が、努力です。「我が社はこれまでこのような努力をしてきたので、これこれが強みです」、といった按配です。長らくやってきた事柄を強みとみなしたい心情はよく理解できますが、冷静に考えれば、努力=強みとはなりません。

二つ目が、自尊心、プライドです。「新商品が出てこないにも関わらず売り上げが伸びた理由は、我々の営業力にある」といった、会社を相対的に見たときのある種の自尊心が、強みというキーワードに変換されるのです。しかし、後で再び触れますが、自尊心=強みとはなりません。

三つ目が、言い伝えです。たとえば、「我が社はこういう成り立ちで、開発力が強みであるということが代々言い伝えられてきています」など、創業ストーリーや過去の経営者の武勇伝と紐付けをし、思考停止することで、そこに強みを求めるのです。このように話す方は、実は結構多くいらっしゃいます。しかし、言い伝え=強みとは、やはりなりません。

それではいったい、何が企業の強みの根拠になるのでしょうか。そのひとつのヒントは相対感にあるのではないかと、私は考えています。競争相手と比較して秀でていなければ、そこにどれほどの努力や自尊心、言い伝えがあろうとも、それは強みには成り得ません。これが一つ目のポイント。
また、強みは、客や世の中にとって重要な事柄である必要もあります。客や世の中が関心を持たない事柄では、たとえそれが如何に競合相手より優れていても、強みには成り得ません。たとえば、価格によってすべてが決まるような商品のフィールドにおいて、営業力を強みと言いだしても仕方がありません。ここでは、価格競争力に強みがあることを真正面から踏まえた上で、客や世の中にとってそのことが重要であり、かつ、競合相手と比較して秀でていることを、確認する必要があります。
このように、競争相手、そして顧客との相対比較のクロスチェックを通してはじめて、自社の強みを解きほぐすことができるのです。

ここでも、「大企業病」の症状でお伝えしました「視野の狭さ」の改善が非常に重要となります。視野が狭いと、客や競合相手と自社を相対的に見ることができません。そのために、努力や自尊心、言い伝えなどに、強みの根拠を求めてしまうのです。自社の強みを語る上では、大企業病に陥らないように、視野を広く持つことが肝要となるのです。

今日の話をまとめます。
今日は企業の強みにフォーカスを当てて、話を進めました。自社の強みを、努力や自尊心、言い伝えに求める方が多くありますが、それは違います。相対感を持って、競争相手や客、世の中との比較を行うことではじめて、自社の強みが見えてくるのです。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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