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農業改革

村藤功 企業財務 M&A

15/02/16


今日は、農業改革について話します。これは、安倍総理の過去ベスト改革と言えるくらいに良いものだと思います。

これまでいろいろな業界に国際競争力が求められてきましたが、農業においてはそれがあまりありませんでした。農家の収入の半分以上は補助金によるものですし、農業従事者の平均年齢は66歳で後継者不足に悩まされています。TPPが妥結になれば、海外から安い物がどんどん入ってくるために、事態はより深刻になります。そこで今回安倍総理は、60年ぶりの大改革を行うことにしました。

この改革の目玉は、農協組織の大幅な変化です。そもそも農協の中には、地方の中央会(農業協同組合中央会)と、それらをまとめている全中(全国農業協同組合中央会)があります。全中と中央会は戦後、10000ほどあった地域農協を700ほどに再編しました。その地域農協700が、農作物の約半分を取り扱っています。JAグループは、その全中をトップにし、金融の農林中央金庫や保険のJA共済、農作物の流通に携わる全国農業協同組合連合会(全農)などによって構成されています。これからの自由競争で生き残って行くためには、このJAグループを変えていく必要があります。

まず、農協の監査を行っていた500人ほどの組織を全中から分離し、新しい監査法人を作ることにしました。残った部分は、2019年3月までに一般社団法人として再編される予定です。一方で、都道府県ごとにあった中央会は名前を「連合会」と変えてそのまま残りますが主たる機能は選挙の集票マシンです。700の地域農協は、上部団体から解放され各自で生産性を上げたり海外へ輸出したりといったことを自由にできるようになります。そうなると、勝つところと負けるところがでてくるでしょう。また、勝つために規模を大きくしたり、国際競争をしている企業が出資というかたちで入ってきたりするでしょう。このように日本の農業は、今、がらりと変わろうとしているのです。

全中は、今回の改革に対して抵抗してきました。そもそも改革のためには農協法を改正しなければなりませんが、その農協法の附則のところに、一般社団法人になった全中も農協の総合調整機能を持つといった旨を書くことにしました。全中は、この附則をもって、これまでの総合調整機能をできるだけたくさん残そうと画策することになるでしょう。

これまで農業を行うことができるのは、農家と農協生産法人だけでした。一般の大手企業がそのまま農業を行うことは、できなかったのです。実際、農業生産法人に対して民間企業が出資できる割合は25%までとなっていました。しかし今回の改革によって、その割合が50%未満にまで上がります。それもあって民間企業による農業参入が、続々と増えてきました。

また、農業の六次産業化も進んでいます。農作物を作ることを一次産業、加工することを二次産業、小売で売ることを三次産業と言いますが、これらを足し合わせると六となります。やる気のある農家や参入企業は農業へ参入し、これらの産業すべてに手を伸ばし六次産業化を目指すことで、勝負して行きたいと考えています。

先ほど、農協が農作物の約半分を取り扱っていると話しました。残りの半分は、六次産業化を目指している企業や元気な農家の人たちによるものです。そもそも農協はこれまでは標準品のみを扱うところで、標準より良いものを作ったからといって高い値段で売ることはしてくれませんでした。また、味は変わらないのに形がおかしいといった標準より悪いものを売ることもしてくれませんでした。そこで最近では、民間企業や農家の人たちが、自分たちでいろいろと手を出して、六次産業化を成し遂げようとしているところなのです。

今日の話をまとめます。
これまで日本政府は、補助金で農業を支えてきましたが、TPPをきっかけに競争力強化を目指しはじめました。今度の国会で農協法を改正し、農協に対する全中の指導監督権限をなくして、独立した新しい監査法人を作ろうとしています。全中を単なる一般社団法人にすることによって、地域農協に自由な経営をしてもらい、競争力を高める狙いです。農業が面白くなってきていますので、若い人はぜひ、農業を始めてみてください。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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