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「ダンスフロア」と「バルコニー」

荒木博行 戦略思考

15/02/23


今日は、「ダンスフロア」と「バルコニー」というテーマで話します。
リーダーシップに関する名著に、ハーバード・ケネディ・スクールのハイフェッツ教授のクラスを描いた『リーダーシップは教えられる』という本がありますが、この「ダンスフロアとバルコニー」という言葉はその書籍の中の一節で、比喩として用いられています。

ダンスフロアというのは、最前線で何かに熱中して取り組んでいる状態のことを指しています。そして、バルコニーは、そのダンスフロアで踊っている人の様子が眺められる高い場所です。我々は日々ダンスフロアで必死に踊っていることが多いですが、リーダーとなるためには時としてバルコニーに立たなくてはならない、と喩えたのです。バルコニーに立った瞬間に、これまで自分が踊っていたダンスフロアの状況を客観的、俯瞰的に捉えることができ、全体の構造を把握しやすくなります。私たちは、現場よりのダンスフロアの視点と、より俯瞰的なバルコニーの視点双方を、絶えず持っておく必要があるのです。

しかし実際にビジネスラインを持って、日々、ダンスフロアで踊っていると、バルコニーに立つことの難しさを痛感するものと思います。ダンスフロアには強力な引力があります。なかなか離れることができません。そんな状態でバルコニーに上がるためには、自分なりのバルコニーをあらかじめいくつか作っておかなければ、いざという時に用いることができません。プレッシャーがかかっていない冷静な時には、「幽体離脱が必要だよね」だとか、「俯瞰することが大事だよね」などと語ることはできますが、難しい意思決定の瞬間や、当事者としてその場のど真ん中に立っている瞬間に、正しくバルコニーに立てるのか、ということが問われているのです。

それでは、どのようにしてバルコニーに立てばよいのでしょうか。簡単に言えば、脳内にそういう回路をしっかりと作っておく、ということです。まず、ある種の擬似的なプレッシャー下に身を置いて、バルコニーに立つことを繰り返す、つまり自社や自分の立ち位置を俯瞰的に分析することを重ねることで、俯瞰的な思考回路をどんどん太くしていきます。
たとえばサッカーで言えば、「こういう時はこういうポジションを取れ」、「こういう所を狙え」などと、冷静な時にはいくらでも言えるでしょう。しかし、残されたロスタイムのうちにシュートを決めないといけない場面に遭遇した場合、実際にその通りに動くことは難しい。したがって、常日頃からプレッシャーがかかった練習を重ねて、自分の体がどんな状態でも俯瞰的な視点を持つことを刷り込ませておくことが肝要なのです。どのスポーツでも同様ですが、奇跡のプレーというのは、実はその訓練を幾度も繰り返してきたことが、たまたまその瞬間に出てきたに過ぎないのです。

以上を踏まえれば、バルコニーに立つためには本を読むだけでは不十分で、それなりにプレッシャーのある環境下で訓練を積むことが理想です。ビジネススクールではまさにそうした擬似的な修羅場を設定して授業を行いますので、どのような場合においても自分なりのバルコニーに立ち戻ることに慣れ親しみやすくなります。

今日の話をまとめます。
今日は、ダンスフロアとバルコニーについて話しました。絶えずダンスフロアに居続けるばかりではなく、大事な場面においてはバルコニーに立ち、俯瞰的に物事を眺めることが大事です。そのためには、日頃から、修羅場に追い込まれたところで俯瞰的に考える思考を体得しておく必要があります。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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