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「弱い人間関係」の強み

荒木博行 戦略思考

15/02/13


今日は、人的ネットワークという言葉について具体的に話していきます。
MBAの門を叩かれる方の求めることの一つに、人的ネットワークを得たい、というものがあります。また我々の教育理念の中にも、人的ネットワークという言葉が入っています。

それではそもそも、人的ネットワークとは何でしょうか。しばしば、いろいろな人と知り合えることかな、くらいの理解で止まってしまいがちです。
しかし、その正体をまた別の側面から切り取れば、「日常的に接することができない言葉や気付きに頻繁に出会えること」ではないかと、私は考えています。

普段会社にいる限りにおいては、キャリアに対するアドバイスにしても仕事に関する意見にしても、そこにいろいろなしがらみが入ってきます。たとえば、「将来的にこういうことをやりたいと思います」と上司に話しても、「今いる部署をどうするつもりだ」などと返されてしまいます。また、会社の事業に関する素朴な疑問を受ける機会もなかなかありません。せいぜい新人が、若気の至りで、「そもそも何でこんな仕事をしているんですか」と聞いてくる程度です。そのような環境下では、情報はマンネリ化し、新たな気付きを得る機会も限られ、自分の強みや弱みに対するフィードバックを得ることも難しいでしょう。

人的ネットワークについては、アメリカの社会学者が、The Strength of Weak Tiesという説を提唱しています。日本語では、弱い紐帯、弱い関係性の強みなどと訳されます。彼によれば、良質なキャリアを築くことができる人は、弱い関係性をしっかりと築いてきた人だというのです。

そもそも強い関係性(Strong Ties)とは、同じ会社で働いており、自分の良し悪しを知られている人との関係や、家族や親族との関係のことを指します。こうした関係性からは、「お前はこういう奴だろう」、「お前はこういうことをやった方がよい」といった言葉がでてきます。これは、強い関係性であるがゆえに、自分のキャラクターやポジションが固定的になるためです。そこでは、自分が予想した範囲の言葉しか聞くことはできません。

ところが弱い関係性においては、自分が想像もしなかったような言葉がぽろっと出てくることがあります。今までもらったことがないようなフィードバックや、何気ない気付きが得られるのです。「こういう業種が合っているんじゃない?」などと不意に言われることで、それまで興味がなかった業種に関心を持ち、考えが不思議と深まっていくこともあります。こうした弱い関係性が、強い関係性の外側にどれほど築けるかという点が、非常に大事なことなのです。

先日お話したオンラインMBAには、国境や立場を超えて様々な人が集っている、ということを申し上げました。子育て中の方からシンガポールで起業して頑張っている方まで、色々な価値観を持つ方々と、ここでは弱い関係性を持つことができるのです。そこで自分のビジネスについてお互いにフィードバックしあったりするのですが、やはり今まで自分にとって思いもよらないようなフィードバックや質問が飛び交うのですね。

一方で気を付けなければならない点は、弱い関係性であるがゆえに、自分の感度が高くないと、そこから生じた言葉が流れてしまう、ということです。今は意味がわからない何気ない一言を、「あの言葉には一体どのような意味があるんだろう?」と自分で考えつつ、ストックしておくことが大事となります。弱い関係性に入ったとたん、自分にとって聞きなれない言葉や意味のわからない質問などが飛び交いますが、それを「貴重な機会」と捉える事が大事かもしれません。

今日の話をまとめます。
今日は、人的ネットワークについて話しました。弱い人間関係から出てくる言葉を発見していくことが、キャリア形成において極めて重要です。そして、我々が提供するオンラインMBAといった場が、弱い人間関係の形成において活かすことができればよいなと考えています。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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