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創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか⑦

田久保 善彦 リーダーシップ領域

15/01/08


これまで、拙著『創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社、2014)にもとづき、話を進めてきました。前回は、地域との関わり方という点において、これらの企業が特徴的なものを持っているという旨を話しました。今回は、長寿企業のお金の使い方に着目してみましょう。

長寿企業はしばしば、「身の丈に合った経営をしている」と言われ、質素倹約を徹底しているイメージを持たれています。たとえば岡谷鋼機は、名古屋において上場している長寿企業です。したがって不特定多数の株主に株を持ってもらっているわけですが、上場した現在においても、社長や「岡谷」不動産が17%程度の株を有しています。また、古くから取引がある銀行や企業、従業員の持株会が、23%程度の株を持っています。このように、短期で売買をしないような、絶対に裏切らないところに、合わせて40%程度の株が集中しているのです。こうなれば、かなり安定的に意思決定を行うことができます。上場という道を選びながらも、安定した経営を担保しているのです。

さらに、取引の内容を見てみましょう。商社である岡谷鋼機の取引先は、2000社にわたっています。そのために、1社や2社との取引がうまくいかなくなったとしても、生じるインパクトは小さいのです。売上高で見てみると、一番大きな取引先である企業相手の売上でさえ、全売上に占める割合は3%にすぎません。最大取引先が倒れたとしても、売上においては3%を占めているだけですので、岡谷鋼機が倒れることはないのです。

また、長寿企業は、現在とは比べ物にならないくらい土地や株の価格が安い頃から、商売を続けています。そのために、日本型サスティナブル企業と呼ばれ得るこれらの企業は、いいところに土地を持っていたり、様々な株を持っていたりするのです。これらの点も、企業の安定経営において大きく貢献しているものと思います。

他、これらの長寿企業は、質素倹約を保つための行動様式を自社に埋め込んでいます。たとえば、以前にも話しましたが、大阪のヒガシマル醤油はヒガシマル醤油円を社内で発行し、コストコントロールをしています。岡谷鋼機は、投資という案件に関しては、たとえその金額が1万円にすぎなくとも、社長が出席する役員会議にかけることとしています。十何代も続いているとある上場企業では、少なくとも二代くらい前までは、次の代に経営を渡す際に無借金の状態にするというルールを課していました。このように、企業自体が質素倹約を体現し、お金の重要性を意識した経営をしているところが、日本型サスティナブル企業の大きな特徴のひとつとなっているのです。会社経営においてお金をどのように使い、どのように貯めていくかという点に、経営者の価値観は如実に表れます。この点、注目したいところです。

今日の話をまとめます。
300年×50億円企業のひとつの大きな特徴は、お金の使い方に現れています。常に「身の丈」を意識し、安定的な経営をできるようにお金をうまく貯め、お金をうまく使っているのです。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 田久保 善彦

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