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中国の大国化

村藤功 企業財務 M&A

14/12/31


今回は、中国の大国化について話します。

尖閣諸島をめぐる問題以来、日本と中国はもう三年間にわたって、十分な会談をできない状況に陥っています。先日のAPECでは、中国は日本と20分だけ話をする一方で、アメリカとは10時間にわたって会談を開いているほどです。中国は、太平洋の西と東の二つの大国が世界をリードしていくものと考え、日本のような小国など相手にしなくなってきたようです。

環境問題に関していえば、中国とアメリカだけで、世界全体で排出される二酸化炭素の1/3を生み出しています。京都議定書においては中国とアメリカが参加していませんでしたが、今回、習近平国家主席とオバマ大統領の間で、排出削減について合意が見られました。しかし、オバマ大統領が中間選挙で敗北したため、この約束が守られるかどうかわからなくなりました。一方で中国は、2020年までに、2005年に比べて温暖化ガスの排出量をGDP比で40%~45%削減する目標を掲げています。習近平国家主席は、化石燃料の消費が少ない産業構造に転換するために、気候変動法をつくり、排出取引を中国全土に拡大しようとしています。

中国の大国化は、いくつかのプロジェクトにも表れています。たとえば中国は、シルクロード経済圏や中国パキスタン経済回廊をつくろうとしています。まずシルクロード経済圏における「シルクロード」には、陸と海の二種類があります。陸のシルクロードは、中国から中央アジアを通り、ヨーロッパへ向かう道のことです。また海のシルクロードは、中国からインドの南の海を通って、中東を経由してヨーロッパへ向かう道のことです。中国は、これらの道を築いて、一大経済圏を築こうとしているのです。

一方で、中国パキスタン経済回廊の背景には、まず、パキスタンがインドと、中国がインドと、それぞれ仲が悪いという事情があります。そのために、敵の敵は味方ということで、中国とパキスタンは親しくなってきています。中国パキスタン経済回廊をつくるために、中国西部の新疆ウイグル自治区のカシュガルから、パキスタンのイスラマバードやカラチを経てグワダルに至るルートのインフラ整備において、中国が5兆円を費やす予定だそうです。これは、マラッカ海峡がアメリカやインドによって封鎖された場合に、中東からの原油をアラビア海に臨むグワダルから陸路中国へ運搬するためです。そのために、グワダルに原油貯蔵基地や製油所を建設し、パイプラインをウイグルまで引こうとしているのです。

国内においては、南水北調を進めています。これは文字通り、南の水を北に調達するプロジェクトです。北京などが所在する中国の北部では、降水量が少ないために、水不足が慢性化しています。そこで、南部の揚子江の水を、北部へ引こうとしているのです。今年の10月12日には、揚子江から北京へ水を引く1432キロにもわたる用水路である中央ルートが完成しました。これによって、6000万人分の飲料水を調達するだけでなく、工業用水や農業用水にも使うことになります。しかしながら、用水路に汚染物質が流れ込んでいるという疑惑が出ており、少し危ぶまれています。

このように中国は大国ですので、国内外においてスケールが大きいことを進めています。日本の新聞では、中国の経済が減速しているという論調が目立ちます。しかし日本がずっとゼロ成長であることに対して、中国は来年も7%成長を目指しており、日本から見れば大成長を続けているのです。10%成長の頃と比べると減速しているようにも見えますが、7%に軟着陸し、安定成長を続けることが、中国の経済成長の方針になっています。

今日の話をまとめます。
中国が大国化して、アメリカとともに大国政治を行いはじめています。シルクロード経済圏構想や中国パキスタン経済回廊構想、国内の南水北調など、スケールが大きいプロジェクトを実行し続けています。中国の経済成長は、多少は鈍化しましたが、それでも7%を保っています。法の下における腐敗をなくして、金融を自由化することで、国内消費の安定成長に入ろうとしているところです。最近になって香港と政治的に揉めましたが、共和党主導の発展方針に変更はなさそうです。

それでは皆さま、良いお年をお迎えください。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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