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長期金利の決まり方

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/12/16

今回は、長期金利についてお話します。長期金利というのは、長期国債の利回りのことです。長期国債というのは、国が発行する期間10年の国債で、発行するときに10年後の償還額と今後10年間の利払い額が決まっています。10年後の償還額を額面と呼びます。額面に対して、毎年支払われる金利のことをクーポンレートと呼びます。たとえば、10年後に100円で償還される国債が、毎年1円の利払いを行うとすると、クーポンレートは1%になります。このとき、長期国債を100円で買った人は、満期まで持っていれば、年率1%で運用できる事になります。これを「国債の利回り」と呼びます。
問題は、国債が市場で売買されているので、国債の値段が変化する事です。買い注文、すなわち需要が多ければ値上がりし、売り注文、すなわち供給が多ければ値下がりするのです。
たとえば売り注文が多く、国債の値段が90円になったとします。私がそれを買ったとすると、10年後には100円で償還されますから、10円の儲けが出ます。それから毎年1円の利子がもらえますから、利子だけで10円になります。つまり、10年で20円の儲けになります。1年あたり2円です。元手が90円ですから、毎年の儲けは2%強ですね。この時、私が買った国債の利回りは2%強だ、という事になるわけです。クーポンレートは1%ですが、買った値段と償還額の差の分も利回りとして計算するからです。国債の値段が下がると、同じクーポンレートでも、利回りは上がるのです。
反対に、国債の値段が上がると、利回りは下がります。先ほどの国債が105円で取引されているとします。10年間で金利が10円もらえますが、105円で買ったものが100円で償還されてしまうので、損失が5円出ます。差引5円の儲けです。10年間で5円ですから、1年間では0.5円ですね。これを105円で割ると、利回りは0.5%くらい、という事になります。
今までは、買う時の値段の話をしていましたが、売る時の値段も重要です。100円で買った国債が105円に値上がりしたら、売って5円の利益を確定することが出来るでしょう。ただ、売った方が得だとは言い切れない事に注意が必要です。
私が100円で国債を買った時は、1%の利回りで10年間運用しようと考えていたわけです。つまり、100円を10年間で110円に増やそうとしていたわけです。買ってすぐに国債が105円で売れたという事は、5円儲かって嬉しいのですが、残りの5円をどう稼ぐかが問題です。100円だった国債が105円に値上がりした理由を考えて見ましょう。それは、世の中の人々が利回りは0.5%でも良いから国債を買いたい、と思ったからでしょう。そういう時に、私の105円を1%の利回りで運用することは出来ません。世の中には金利1%で借りたいという人がいるでしょうが、そういう人にも他の投資家が金利0.5%で貸してしまうからです。
結局私は、105円を金利0.5%で10年間運用して5円の利子を稼ぐ事になりますから、10年かけて100円を110円に増やそう、という当初の目的が達成されただけで、特に良い事が起きたわけでもないのです。
では、長期国債を売り買いする人々が、何を考えているのか、と言う話に移りましょう。私が100円を10年間運用しようと考えた時、10年物の国債を買うという選択肢もありますが、1年物の国債を買って、1年後に償還されたら再び1年物の国債を買って、これを10回繰り返す事も可能です。どちらを選んだ方が10年後の金額が大きいかを考えると、結局今後10年間の短期金利の平均が長期国債の利回りよりも高いか低いかで決めるべきだ、という事になります。
たとえば、今後10年間の短期金利の平均が3%だと皆が予想しているとします。利回り1%の長期国債は誰も買わないでしょうから、国債の価格が下がっていきます。つまり、国債の利回りが上がっていきます。利回りが3%になった時にはじめて国債の買い注文が出てくるでしょうから、利回りの上昇は3%で止まるでしょう。これが長期金利の決まり方の基本です。
あとは、リスクプレミアムと需給関係によって、基本となる金利から少しズレる事があります。リスクプレミアムというのは、長期間お金を固定してしまうのは嫌だから、予想される利益が同じなら1年物国債を買おう、という投資家が多いため、予想の平均よりも少し高い所に長期金利が決まる、という事です。
需給としては、政府が大量の国債を発行すると金利が上がりますし、日銀が大量の国債を買えば金利が下がります。場合によっては市場の思惑も働きます。人々が国債の値段が上がると予想すると、上がる前に買っておこうという人が増えて、実際に国債の価格が上がり、利回りが下がる、といった事もあり得るのです。こうした要因が合わさって、実際の長期金利は決まっていく、という事ですね。

まとめ:長期国債の利回りは、価格の変動によって時々刻々と変化します。価格が下がると利回りは上がり、価格が上がると利回りは下がります。長期金利を決める一番重要な要因は、将来の短期金利の予想です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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