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イノベーションとクリティカルシンキング

荒木博行 戦略思考

14/11/17


今日は、イノベーションとクリティカルシンキングの関係について話します。結論を先に言えば、両者は密接に関係しています。
たまに「ロジカルシンキングを鍛えると、革新的なビジネスを考える上で妨げになるのではないか」という話を聞くことがあります。しかしながら、実際にはそんなことはありません。
このことを申し上げるために、クリティカルシンキングについて、二つのキーワードを軸に説明します。

一つ目のキーワードが、「イシューに常に立ち戻る」、ということです。イシューとは、「今我々が考えるべきそもそも論」のことです。
我々は往々にして、そもそもの目的や考えるべき何かを忘れて、議論に熱中することがあります。
何か一つの意思決定をするにも、様々な人間関係や部署間の対立が重なっているために、当初の目的を見ることができなくなるのです。そうならないように、まずは細かいロジックは置いておくとして、頭の片隅でイシューを絶えず抑えておくことが大事です。
「イノベーター」と言われる人と接触する機会が私には多くありますが、彼らはいつも、細部のことにはこだわらずに、何よりも本質的なポイントを意識し、そこを議論の中心に持ってきます。
ビジネスの現場では、プロジェクトが予定通りに進まなかったり、お客さんからクレームを受けたり、魅力的な提案が相手から来たりと、いろいろな細かい事象に心を奪われるものです。それらに対して逐一対応したいという誘惑に駆られますが、そこで少し待って、そもそも我々のビジネスの目的が何だったのか考え直すのです。
「イシューに常に立ち戻る」、ということは、クリティカルシンキングの最重要事項として徹底されることですが、こういうことはまさにイノベーターの日常の行動原理に根付いていることそのものなのです。

二つ目のキーワードは、「当たり前を疑う」、ということです。
私たちは、眼前の前提を当然として、ロジックを組み立てがちです。
少し前に、ルールに基づいてロジックを組み立てるという演繹法に関して話しましたが、演繹法における「ルール」を、今回話している「前提」と置き換えていいでしょう。「前提」自体が本当なのかどうか、絶えず疑ってみましょう。
これも、イノベーターにに共通する思考特性の一つです。
すなわち、誰もが疑わないようなところに、メスを入れるのです。
たとえば、「お役所がこういうことをやれと言っている」との報告を受けた際に、「具体的に誰が言っているの?本当にそう聞いたの?きちんと交渉したの?」と深く突っ込んでいき、最終的には「絶対に交渉して」と指示を出すのです。
通常であれば、ここまで考えていくことは少ないでしょう。しかしこのように疑っていくことで、第三の方法が生まれてきたり、これまでとはまったく異なる景色が見えたりし、さらにはイノベーションに繋がっていくのです。
ビジネスを考える際には、これまで考えたこともないようなベーシックな部分まで立ち戻っていくことが、重要なのではないでしょうか。
もっともこれを現場で行うとなると、実は非常に大変で、どこまで疑わないといけないのか難しくあります。
一方で、疑う人がいなくなる環境は恐ろしいものです。組織に新しい血をできるかぎり入れておいた方がよいという話がありますが、これはこの点に繋がるものです。新しい人は、素朴な疑問を投げかけてきます。転職者でも新卒採用の方でも異業種の方でもいいのですが、組織の前提を疑う人と接触しやすい環境下で組織作りをすることも、重要なのです。

今日の話をまとめます。
イノベーションとクリティカルシンキングの関係について知るために、二つのキーワード、つまり「イシューに常に立ち戻る」と「当たり前を疑う」について説明しました。これらの行動様式は、クリティカルシンキングにおいての重要項目であると同時に、イノベーターの思考特性として共通的に持っていることでもあります。ややもすると遠く見られがちな「イノベーション」と「クリティカルシンキング」という概念ですが、実は裏側では密接に関係しているのです。

分野: グロービス経営大学院 |スピーカー: 荒木博行

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