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企業価値創造とM&A

村藤功 企業財務 M&A

14/09/03


今日は、九大ビジネススクールの後期に私が開講している、「企業価値創造とM&A」という講義についてお話します。

私はもともと、投資銀行でM&Aアドバイザーをやっていました。たとえば2000年~2003年の総合商社のM&Aのほとんどが、私が企画、実行したものです。そもそもM&Aとは、経営環境の変化に対して企業の形を変えるというものです。企業買収もそのうちに含まれますが、どちらかといえば買収よりは売却する必要性がある時に取引は始まります。もっとも多いM&Aは、統合です。日本では、業界内にあった10社が統合の末に2、3社になるという按配で、どこかとどこかがくっついてしまうことがよくあります。したがって、M&Aを企業買収のみを指すと考えることはちょっと誤解を招きます。

「企業価値創造とM&A」では、以下にお話するようなことについて学んで行きます。

日本ではこの30年間ほどGDPが500兆円から変わっておらず、ゼロ成長が続いています。バブル崩壊以降に日本企業の多くが資産を失った結果、自己資本がなくなり、財務が悪化しました。その際に起きたのが、会計ビックバンや金融ビックバンと呼ばれるものです。会計ビッグバンとは、会計基準の大改正のことです。その結果、会社の会計を法人別ではなくグループ全体で見ることとなり(連結主義)、また、時価主義による開示が求められるようになりました。時価主義とは、取得原価主義という購入時の価格ではなく現在の価格に基づいて評価するという考え方のことを指します。資産を失った日本企業にとってみれば、時価主義に基づいて評価された場合、非常に困ったことになります。そこで、新しい経営環境に合わせて自分を最適化するという、事業ポートフォリオの最適化が重視されるようになりました。すなわち、グループの中にある様々な事業を統合したり売却したりすることで、今後もやっていける形を目指したのです。そして金融ビッグバンとは、大規模な金融制度改革のことです。その結果たとえば、都市銀行や地方銀行が各々の判断で統合することも可能となり、3メガバンクが出現しました。九州においても、地銀再編の時代を迎えつつあります。

日本の事業会社は、バブル以降、借り入れを減らして自己資本を増やすことを一生懸命やってきました。そもそも持っている事業の資産を支えるためには、銀行借り入れや社債・株の発行を通じて、資金調達を行う必要があります。しかし借り入れるよりは、自己資本を大きくした方が財務上安全です。ところがバブルが崩壊して以降、地価や株価が下がる中で、自己資本がほとんどなくなってしまいました。こうした状況を背景として、日本の事業会社は、会計ビッグバンや金融ビッグバン以降の経営環境の変化に合わせて、資本構成の最適化を行ってきたのです。「企業価値創造とM&A」では、その方法についても学びます。単にマーケティングで売り上げを上げるばかりではなく、経営環境の変化に合わせて事業の組み替えを行うことも重要なのです。

実は「企業価値創造とM&A」は、英語で行われる授業です。そもそもQBSでは、MBAを取得するために、英語で講義される授業を最低でも2科目受講する必要があります。提携校からやって来る交換留学生とともに英語でのディスカッションを行いつつ、アジアでビジネスをやって行くために必要な英語力をここで培っていただきます。


今日の話をまとめます。
QBSの「企業価値創造とM&A」という授業は、英語で開講される選択必修科目です。そこでは、事業ポートフォリオの最適化や資本構成の最適化について学びます。QBSでMBAを取得し、経営者の端くれになるからには、どのようにして企業価値を創造し、どのようにしてM&Aを行うかをわかっておく必要があるのです。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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