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GDPとは?

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/08/18

GDPという言葉はよく聞きますが、それって何?と聞かれると、答えられる人はあまり多くありません。GDPは、日本語では国内総生産です。各社が作ったものを合計したもの、という事です。実際の統計の作り方は3通りあります。
第一は、日本中の会社に「御社が作ったものはどれだけですか?」と聞いて、それを合計する方法です。ここで大切なのは、自動車会社が部品を仕入れて組み立てて自動車として売ったとすると、自分で作った部分は売上高から仕入れを引いた金額だ、ということです。これを付加価値と呼びます。つまり、GDPは各社の付加価値の合計なのです。
物だけではなく、サービスも集計します。コックさんが料理を作ったり、先生が授業をしたりするのも、当然GDPに含まれます。こうして作った統計は、「生産面から見たGDP」と呼ばれます。
さて、自動車会社の回答と部品会社の回答を合計すると、自動車の販売額になります。つまり、消費者に「どれだけ自動車を買いましたか」と聞けば、自動車会社と部品会社に聞いた金額と同じ金額が得られるわけです。そこで、GDP統計の作り方の二つ目は、全国の消費者に消費額を聞いて合計する方法です。消費者だけではなく、輸出された自動車や企業が買った自動車なども集計します。当然ですが、自動車以外の物やサービスなどについても聞いて合計します。なお、輸入車などはGDPから除く必要がありますから、税関で輸入金額を聞いて、それを差し引きます。こうして作った統計は、「支出面から見たGDP」と呼びます。
さて、自動車会社が自分で作った部分は売上から仕入れを引いた金額ですが、この金額から賃金を引くと、企業の利益が残ります。このことは、日本中のサラリーマンに給料を聞いて、日本中の会社に利益を聞いて、合計するとGDP統計が作れるという事になります。これが第三の方法で、こうして作られた統計は「分配面から見たGDP」と呼ばれます。
もちろん、実際の統計は今少し複雑な作り方をしますが、大筋の考え方は御説明した通りです。また、実際にはサンプル調査から全体の平均を推測しますので、たとえば消費者全員に消費額を聞いたりサラリーマン全員に給料を聞いたりする事はありません。
3通りの作り方は、同じものを別の面から見ているだけなので、原則として同じ数字になります。このことを「GDPの三面等価の原則」と呼びます。
GDPの統計は、日本経済の規模を表すものです。GDPが世界第3位だというように、海外との比較にも使われますし、財政赤字がGDPの何%だとか、経済規模に比べて財政赤字が大きいのかどうか、といった使われ方をする場合もあります。財政赤字が巨額であっても、経済規模も巨大であれば、それほど気にならない、というわけです。
では、実際の統計を見てみましょう。2013年度の日本のGDPは、約482兆円でした。日本人の大人は大体1億人いますから、日本のGDPは大人一人あたり482万円という事になります。生産面から見たGDPを見ると、2012年度の数字になりますが、農林水産業が全体の1%程度、製造業が18%程度、卸・小売業が全体の14%程度、政府部門が9%程度、などとなっています。日本は物作り大国と言われていますが、GDPに占める製造業のウエイトはそれほど高くありません。大量のモノが作られているのは確かですが、機械化が進んで安く作れるようになると、GDP統計には少ししか載らないのです。たとえばパソコンの値段は10年前に比べると大幅に安くなっています。10年前よりも遥かに良い製品が出回っていますが、10年前より安く作れるようになっているので、パソコンメーカーのGDPはむしろ減っているのです。
支出面から見たGDPは、個人消費が全体の61%を占めています。個人消費のウエイトが大きい事は、企業の売上の多くが賃金や配当などの形で個人に渡り、その多くが消費に回ることを考えると理解できます。
個人消費は、ウエイトは非常に大きいのですが、安定しているので、景気に与える影響は余り大きくありません。今回は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動落ちがありましたから注目されましたが、普段は余り注目されない統計です。
設備投資は、GDPの14%程度を占めています。これは、景気を見る上で、非常に重要です。景気が良くなると、企業は設備投資を増やします。そうなると、鉄やセメントや設備機械の売上が増えますから、景気が一層よくなります。しかも、設備投資は10%増えたり10%減ったりする事がしばしばあるので、景気に与える影響が非常に大きいのです。
景気という観点では、公共投資も重要です。GDPに占めるウエイトは5%程度ですが、政府が景気対策を採ると大きく増える性質があります。
今ひとつ、輸出も重要です。リーマン・ショックのような事が起きて輸出が激減すると日本の景気も急激に悪化する事がありますし、輸出が増えれば景気は回復するからです。
今回は以上です。

まとめ: GDPは、生産面、支出面、分配面から見た統計があり、原則として同じ数字です。これを三面等価の原則と呼びます。景気を見る上で重要なのは支出面から見たGDPです。ウエイトが大きいのは個人消費ですが、景気を見る上では設備投資や公共投資や輸出の方が注目されます。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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