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車と車社会の未来(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

14/06/17

今回と次回は、車と車社会の未来について考察してみたい。
 車が利用されはじめて、既に200年以上が経過した。元々は、1885年にダイムラーやベンツがガソリン式自動車を発明したことに遡る。その後、1908年にはフォードがT型モデルを発売した。このT型フォードは、ライン生産方式をはじめて採用し、大量生産(ライン生産方式)によって低コスト化を実現したことで知られる。
 1970年代には、モータリゼーションによって人々の生活や都市の構造までもが大きく変化し、現在に至っている。自動車の未来を考えるうえで、交通渋滞、都市構造のスプロール化(無秩序な拡大)、大気汚染、エネルギー問題などを切り離して考えることはできない。

 まず、「車の未来」について。未来のクルマを考えるうえで、最も関心が高いのが、燃料(エネルギー)の問題だ。現在のトレンドとしては、ガソリンやディーゼルエンジンのダウンサイジングによる低燃費化(欧州車に多い)、ハイブリッド(HVやPHV)、電気自動車(EV)、そしてこれから市場投入が始まる燃料電池自動車(FCV)だ。
 特に、HVの普及は著しい。トヨタは、2013年に128万台のHVを販売した。累計販売台数が600万台に達するという。しかし、このHVは電気の力を借りるものの、エンジンを積んでいるため「化石燃料」に依存する構造は変わらない。従って、メーカー側は、未来の車社会(化石燃料フリー)への「つなぎ」と位置づけている。
 では、EVはどうか?最近、日産のリーフの累計販売台数が10万台を越えたとの報道があった。また、カリフォルニアのベンチャー企業テスラ・モーターズが販売するEVは、2013年だけでも22,500台、2014年は35,000台の販売を見込んでいる。実際に、最近アメリカに出張すると、大都市の繁華街に設置されたテスラのショールームが目を引く。
 ただ、EVのボトルネックは「航続距離」と言われている。日産のリーフは公称228kmだが、夏場のエアコン利用などで大きく電気が消費されてしまうという問題を抱えている。一方で、リチウムイオン・バッテリーなどの高性能化には取り組まれているものの、飛躍的な伸びが見込まれるわけではない。
 では、車の大気汚染への影響に目を転じてみるとどうか。WtW(ウェル・トゥ・ホイール)という燃料採掘〜車の燃料消費までのCO2排出量は、ガソリン車を1とすると、HVで0.6程度だが、実はEVも現在の電源構成下では0.6程度、HVと変わらないのだ。
 いずれ、化石燃料に依存できなくなる時代に向けて、代替燃料としての有力候補のひとつが「水素」だ。水素を車のボンベに充填し、車に搭載した「燃料電池」を用いて電気を作りながら走るFCVが、いよいよ2015年から市場投入される。
 FCVのCO2排出量は、さきほどのWtWだと、ガソリン車1、HV0.6に対して、0.4~0.3程度と試算されている。水素は、天然ガスなどの化石燃料からも製造されるが、他にもプラントの副生水素が大量に存在している。将来的には、下水汚泥(バイオマス)からの生成など、環境にやさしいクリーンなエネルギーとして期待されており、未来の車もそれを利用することで環境負荷の低減に貢献できる。また、FCVへの水素充填は約3分で済み、EVが高速充電でも30分を要するのに比べると、大幅に短い。また、FCVは航続距離が500~800kmもある。従って、将来は近距離の都市内交通はEV、長距離移動はFCVといった住み分けもできるだろう。
 FCVの当面のボトルネックは2つ。(1)車両価格の低下(来年の発売価格は500~1000万円と予想)と、(2)水素ステーションの整備だ。

今日のまとめ:
200年間の自動車の発達は、人々のライフスタイルや都市構造にまで大きな影響を及ぼした。今後の化石燃料の枯渇や環境への負荷低減の観点から、よりクリーンな燃料電池自動車(FCV)の開発が進んでおり、2015年から市場投入が始まる。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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