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ウクライナ

村藤功 企業財務 M&A

14/05/13


今回は、ウクライナについてお話します。
クリミアがウクライナから独立してロシアに編入されましたが、アメリカはこれに対して怒っています。ヨーロッパ諸国は、エネルギーをロシアに握られているためあまりロシアと揉めたくないものの、領土変更には反対の立場です。また日本は、ロシアと北方領土返還問題があるのでこれもあまり揉めたくないものの、アメリカに付き合って怒っています。

クリミアがウクライナから独立する際に、住民投票が行われました。その結果、住民の9割以上が、ウクライナから独立してロシアへ入ることを望んでいました。ロシアがそれを強制しているわけではなく、住民がロシアへの編入を本当に考えているのであれば、これは悪い話なのかどうか疑問が残ります。ロシアが「全然悪くない」と言う一方で、アメリカは「大変にけしからん」と息巻いています。

この一連の問題では、まずウクライナにおいて、ロシアと親しいヤヌコビッチ大統領が追い出されました。その代わりに、EUと親しいヤツェニク首相が現在では政権を運営しています。それに対してクリミアのロシア人たちが怒っており、ヤヌコビッチ大統領が追い出された背景にはアメリカの画策があったのではないかと考えました。そうであれば、もともとクリミアがロシアの一部だったこともあり、ロシアへ戻ろうという話が出てきたのです。

アメリカ側からみれば、ロシアが武力を使った領土拡大路線に入ったように映ります。クリミアの中にはロシア軍の基地があり、クリミア独立をロシアが支援していると考えています。一方でロシアは、もともとロシアに属していた人びとが独立したいと言っているのだから、ロシアが支援してもいいだろうと考えているようです。クリミアでは、国連憲章の民族自決の原則、すなわち、自分たちで自分たちのことを決めるという原則に則り、国民投票が行われました。しかしアメリカは、ロシアの軍隊が鉄砲を突きつけた状況で行われ、ウクライナ残留の選択肢がない住民投票には意味がないと言っています。しかし、クリミアの住民のほとんどがロシア人です。ロシアが銃を突きつけなくとも、ロシア編入の方へ投票したはずで、今回、ロシアが銃を突きつけたとは思われません。

さらにウクライナ東部のドネツクやルガンスクも、ロシアへの編入を求めています。しかしこれらの地域では、ロシア人は少数派で、多数派はウクライナ人です。親ロシア派は政府の建物を占拠しており、住民投票を求めてはいるものの、実際に住民投票が行われたとしてもウクライナからの独立やロシアへの編入は起こらないでしょう。こうした状況に対して、ウクライナ政権は軍隊による強制的な制圧を考えています。しかし、ロシア軍に勝てる見込みがないため、相手をウクライナの中の親ロシア派に限ろうとしています。

アメリカの主張に理屈がないわけではありません。アメリカは、領土保全に対する武力による威嚇および武力の行使をしないように求めた国連憲章第一章第二条や、ウクライナの現存する国境を尊重することを定めた米英露のブダペスト覚書にロシアは違反しているため、今回の動きは無効であると見ています。

このように、ロシアとアメリカはお互いが自分の主張に根拠があると言い張っています。しかし、世界のリーダーがアメリカである現状、EUと日本はアメリカに付いている状況です。

最近になってウクライナとロシア、アメリカ、EUの4者は、事態を鎮静化させるために、ウクライナ東部の政府の建物を占拠している人たちが建物を返せば罪に問わないということで、合意しました。しかし彼らは、一向に返却に応じていません。そこでウクライナ政府は、軍隊をもって政府の建物を取り返すと言っています。それに対してロシアがプレッシャーをかけている一方で、お金を持たず、国民の賛成が見こめないアメリカはそんなところに軍隊を派遣するわけにはいかないという状況です。

今日のお話をまとめます。
ウクライナの親ロ政権が失脚したため、クリミア半島へロシアが介入しました。住民の大半がロシア人であるクリミアで行われた住民投票の結果、クリミアがウクライナから独立してロシアに編入する条約を結びました。アメリカやEUからしてみれば、これはロシアが武力をもってウクライナからクリミアを奪い取ったことになります。そこでロシアをG8から外し、経済制裁を始めています。ところが、EUはロシアからエネルギーやLNGを買っているため、自分たちが経済的に困ることになります。日本もロシアとの間で北方領土問題を抱えており動きにくい立場です。現状、アメリカ・EU・日本対ロシアの構図となっています。ウクライナ東部の一部都市もロシアへの編入を望み始めたので、ますます話は混迷してきています。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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