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データをひとつの数字に集約

田久保 善彦 リーダーシップ領域

14/05/16


前回は、仮説の検証ついてお話しました。これは、具体的に数字を用いて、仮説が正しそうであることを証明する、というものでした。そうなると必然的に、手元にある数字を分析する、数字を加工することが必要になってきます。今日は、この数字の加工についてお話します。

多くの方が、数字がでてくるとすぐに平均値を知りたがります。小学生や中学生のころから、数字が塊で存在していたらとりあえず平均値を出してみようという機会に多く直面したものと思います。大人になってからは、とりあえずエクセルに数字を打ち込んで、「=Average( )」の関数を用いることで平均値を出しているのではないでしょうか。平均値について考えることは、もちろん大事です。しかしそこには、実はいろいろな罠があります。

中央値という言葉があります。これは、大きい数字から小さい数字を順にすべて並べた時に、真中にある数字のことです。また最頻値は、もっとも出現頻度が高い数字のことです。平均値にせよ中央値にせよ最頻値にせよ、これらはたとえば百個のデータがあるとすれば、それをたった一個の数字に置き換えたものです。百人分の点数のデータがあって、平均値が50点であれば、百人分のデータを50点という一個の数字で表現したわけです。したがってこれらの値のことを代表値と呼びます。それらの数字を代表する値であるからです。

としますとこれは、すべての個性を無視するということです。たとえば1年A組の平均身長が165cmであった場合、その中には180cmの人も155cmの人もいるかもしれませんし、165cmの人がいないかもしれませんが、そうした諸々の個性は無視されます。平均値をもって議論する際には、こうした背景を自覚する必要があります。これを意識しないままにとりあえず平均値などを用いて分析をはじめると、よくわからないことになりかねません。

代表値を出すこと自体に問題はありません。しかし、それが平均値で議論すべき話なのか、それとも一個一個のデータを見ていかなければいけない話なのか。そうした意識がないままに、単にエクセルが簡単に計算してくれるからといって代表値を用いている場合が結構あるように思います。本来、分析には目的があるはずです。「こういうことを見たいから平均値を用いたい」、「こういうことを見たいから中央値を用いたい」といったことを考えないままに、条件反射的に平均値などを用いるならば、分析に際してのマインドセットとしても、やはり相当に注意をしないと怪しいことになってしまいます。

一番陥りやすい罠についてお伝えしましょう。よく新聞などでは、年間平均成長率という言葉が出てきます。これは何年から何年までの間、年間に平均何%ずつ成長したかというのを表したものです。年間平均成長率を出す際には決まった数式があるのですが、実は、最初の年と最後の年の数字しか用いられません。その間の数字は、まったく使われないのです。したがってたとえば、商品Aと商品Bの年間平均成長率について考えてみましょう。各年の平均成長率が、以下のようだったとします。

 商品A:100、100、100、100、200
 商品B:100、120、150、180、200

これらをグラフで表せば、両者がまったく違う形になるのは一目瞭然です。しかし、両商品ともに最初の数字が100、最後の数字が200となっているため、年間平均成長率は同じ成長率になってしまうのです。このようにクリアに理解しないままに平均値などを用いて議論すると、とてもとても怖いことが起きてしまいます。

数字を分析する際には、平均値が基本となりましょう。しかし、そもそも何のための分析なのか、平均と言う数字で議論すべき話なのか、議論すべき話だとしても平均値を正しく使えているのか。こうした諸点に注意しないと、平均値が意味を成さなくなりかねません。

今日のお話をまとめます。
数字の分析は、仮説を検証する際に極めて重要な営みです。分析する時には、目的が何なのか、何を知りたいのか、どういうことを理解したいのかといった点を、きちんと意識しなければなりません。その上で適した分析の方法を選び、活用していく。そうした心構えをもって、数字を分析していただきたいと思います。

分野: リーダーシップ |スピーカー: 田久保 善彦

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