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産学連携における技術アセスメント(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

14/03/12

【本文】
・今回も、前回に続いて技術アセスメント「クイックルック」への取り組みについて紹介したい。
・そもそも、大学や公的研究機関から多くの発明が生まれるが、実際に民間企業に技術移転される割合は日本が15%弱、米国でも1/4程度に過ぎない。この比率を高めるためには、技術商業化の初期段階で適切な技術アセスメントを行う必要があることから、クイックルックが生まれた。
・前回話したように、クイックルックの評価項目は、「技術の概要」、「技術がもたらす便益」、「対象市場」、「市場の関心」、「技術開発状況」、「知的財産」、「参入障壁」から構成され、それらをバランスよく評価したうえで、最終的に当該技術の市場参入の推奨案を立案し、それをスコア化して、「Go」「条件付きGo」「No Go」を評価する。
・今年度の「産学連携マネジメント」では、九大の産学官連携本部と連携し、九大が保有管理する技術シーズの中からひとつを受講者が選択し、その技術アセスメントを行った。取り上げた技術シーズは、音声を強調して高齢者や難聴者の耳に届きやすくする技術や、ある植物の生活習慣病改善への応用、海中生物の抗炎症剤への応用、非食用植物のバイオマスからバイオプラスチックを製造する技術等々、6技術が選択された。
・アセスメントの過程で最も重要なのは、市場の関心がどこにあるかを、専門家へのインタビューを通じて明らかにすることだ。発明者の説明や特許明細書に目を通すことで、技術の特性が把握できたとしても、そのまま特性を活かして製品を企画しても、市場で受け入れられるとは限らない(むしろほとんどが受け入れられない)。市場全体の構造や傾向を把握したうえで、具体的な市場の専門家(企業の開発責任者など)や製品のユーザー候補にヒアリングを重ねることで、「既存製品の限界」や「顧客が解決を望む課題」が見えてくる。チームメンバーが手分けをして、「市場の関心」の有無を丁寧に探索し、技術の特性(フィーチャー)を顧客の恩恵(ベネフィット)へと転換する必要がある。
・世の中には、技術の特性(フィーチャー)を謳う製品が多い。「従来の●倍の高精細!」とか「高機能成分を●mg配合!」とか。残念ながら消費者は、この謳い文句からは真の恩恵を知覚することができない。例えば、「明るいリビングでもくっきり見える」とか「医師の処方箋がなければ買えなかった医薬品が薬局で買える」といった顧客が具体的なメリットを感じるような製品として企画しなければならない。
・つまり、大学などで生まれた技術の商業化では、技術そのものの価値を顧客の価値へと転換することが不可欠で、そのプロセスを体系化したのがクイックルックなのだ。
・期末に行った最終発表会では、ベンチャーキャピタルやTLO関係者から、この種の実践的な取り組みにたいして好感触が得られたので、今後もブラッシュアップしながら継続していきたい。
・いずれは、ビジネスを学ぶ社会人中心のQBSと、九大の理系研究室の大学院生が、一緒にチームを組成して技術アセスメントを行うような枠組みを創っていきたい。これは、総合大学である九州大学ならではのユニーク、かつ実践的な教育プログラムとして価値が高いと考えている。

【今回のまとめ】
・技術商業化のアセスメントで最も重要なのは、技術の特性を理解したうえで、「市場の関心」がどこにあるかを確認すること。つまり、技術の特性(フィーチャー)を顧客の恩恵(ベネフィット)に転換できるか否かがカギをにぎる。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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