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日本企業の姿

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/03/06


日本には、事業所が600万ほどあります。そのうち4割が個人経営で、5割が株式会社で、1割がそれ以外となっています。しかし、従業員数で見ると、個人経営は1割で株式会社が7割ですので、株式会社の規模が大きい事がわかります。

産業別に見ると、一番多いのは卸・小売業で、事業所数の4分の1、従業員数の5分の1を占めています。意外なのは、製造業が事業所数で1割弱、従業員数でも全体の6分の1しか占めていないことです。日本は「もの作り大国」というイメージがあるのですが、従業員数で見れば、そうでもないのです。

その理由は、いくつかあります。第一は、工場の機械化、省力化が進んでいることです。技術が進歩している事、円高で海外製品と競争するためには省力化投資をせざるを得ない事、などが推進力となっています。第二は、省力化が難しく、労働者を多く雇う工場は、中国などの給料の安い国に移ってしまった事です。従って、日本に残っている工場は人手をあまり使わない所が多いのです。第三は、アウトソーシングと言って、工場の中の仕事を外部の企業に委託している例が多いことです。たとえば工場内の清掃を外部の清掃業者に委託すると、経済の実態は何も変わらなくても統計上は製造業の雇用者数が減り、サービス業の雇用者数が増えるというわけです。

ここからは、株式会社についてお話します 。日本には株式会社が280万社ほどあります。その殆どは中小企業ですが、売上高を見ると半分以上は資本金1億円以上の大企業が占めていますから、経済に於ける大企業の存在感は非常に大きなものがあると言えるでしょう。

株式会社は、株主から集めた資金と銀行などから借りた資金を使って活動していますが、その比率はおよそ1対2となっています。言い換えると、自己資本比率が約3分の1だ、ということになります。

売上高は、全社合計で1400兆円ほどです。日本のGDPは約500兆円ですから、その3倍ほど売り上げがあるということになります。メーカーから問屋へ、問屋から小売店へ、小売店から消費者へ、といった売上が何度も計上されているので、GDPよりも多くなっているわけです。

経常利益を売上高で割った利益率は、景気によって変動しますが、平均すれば3%程度です。経常利益というのは、企業の売上から仕入れ、人件費、支払い金利などを差し引いた金額で、企業の稼ぐ実力を表す数字として注目されるものです。

製造業の方が非製造業よりも利益率は高いのですが、これは非製造業が儲からない、というわけではありません。問屋から小売り、小売りから消費者というように売上高が水ぶくれしているので、利益を売上高で割った値が小さくなっている、という事です。

企業規模別に見ると、企業の規模が大きいほど利益率が高く、小さいほど利益率が低くなっています。大きな店や工場の方が零細商店や町工場よりも効率的なので利益が上がるのは当然なのですが、大企業と中小企業が取引する際には力関係から中小企業が不利な条件を飲まざるを得ない場合も多いと言われています。
次に、日本企業の国際化について御話しましょう。日本企業は海外に2万社の現地法人を持っています。製造業と非製造業が半分ずつです。

地域的には、中国が3割、その他アジアが3割、北米と欧州を併せて3割となっています。

かつては、貿易摩擦を避けるために、仕方なく欧米に工場を建てる、というケースが殆どでした。その後、円高が進むにつれて、アジアの安い労働力を活用しよう、という企業が増えました。最近になると、アジア諸国の経済が発展してきたため、現地で売るために現地で作ろう、という動きが活発化して来ました。

海外現地法人の利益率は、国内企業よりも高くなっています。日本経済が長期にわたって低迷しているために、国内では儲からない一方で、アジア諸国の経済は急速に成長しているので、利益を挙げるチャンスが多い、という事なのでしょう。

日本経済は、このところ景気が回復していますが、長い目で見れば少子高齢化ですから発展していくイメージは持ちにくいでしょう。一方、アジアの経済はしばらく発展していくでしょうから、日本企業の海外への進出も、当面は続くと考えておいた方がよさそうですね。

まとめ: 日本企業を業種別に見ると、事業所数でも従業員数でも最大なのは卸・小売業で、製造業はその次です。最近、日本企業の海外進出が盛んになっています。海外現地法人が儲かっていること、アジア諸国が成長を続ける事を考えると、今後も海外進出は続きそうです。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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