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新しいビジネス立ち上げ時の行動様式②

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

14/02/11

・前回は、新規事業を立ち上げる場合の従来的な行動様式であるPrediction(プレディクション)と、成功するアントレプレナーの行動様式であるCreAction(クリアクション)について紹介した。そして、CreActionには4つの柱、(1)手持ちの手段を使って素早く行動する、(2)可能な範囲の資源投入に留める、(3)他の協力者を巻き込む、(4)まず行動し、そこからフィードバックを得て次の行動を決める、があることを話した。
・今日は、このCreActionの4つの柱についてさらに詳しく紹介したい。まず(1)手持ちの手段を使って素早く行動する、について。これは、新規事業を立ち上げるときに、すべての手段が揃うのを待っていると、そもそも新規事業を立ち上げるタイミングを逃してしまいかねない、ということ。つまり、慎重すぎてタイミングを逸するよりは、手元にある手段を用いてまず動いてみることで、その事業環境はどんな特徴を有していて、どのような点が成功のポイントになるかについて早く学習することが重要だということ。
・次に(2)可能な範囲の資源投入に留める、について。いざ行動しようとするときに、全財産や大きな借金を背負って最初の1歩を踏み出すと、失敗した時に二度と立ち直れない状況に陥る。以前の放送で、MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト=必要最小限で、企画中の製品・サービスの最も重要な価値を顧客に伝えることができる試作品)の重要性について話をしたが、それと同じことだ。新規事業立ち上げの初期には、限られた予算で仮説検証を繰り返す必要があるので、逆に、手持ち予算で何回まで失敗できるかを最初に見積もっておき、「小さく、早く」失敗しながら成功への道筋を早く見つけることが重要になる。
・次に、(3)他の協力者を巻き込む、について。自分一人だと、考えも浅くなり、活動範囲も限られ、人脈も限定される。でも、二人、三人と増えていくと、考えも深まり、活動範囲も人脈も広がる。途中で出会ったステークホルダーの中には、新規事業への協力をコミットしてくれる人も現れる。結局、協力者が増えるか否かが新規事業が成功するか否かのバロメーターになので、協力者が順調に増えることを目指して、積極的に他人に働きかけることが重要になる。
・最後に、(4)まず行動し、そこからフィードバックを得て次の行動を決める、について。これは、(1)〜(3)をまとめたようなものだが、小さく早く「仮説検証」を繰り返し、軌道修正を加えながら前に進むことで、大きな失敗リスクを見過ごさず軌道修正して着実に成功に近づくことができる。
・最近、ホンダがアフリカ・ケニアに二輪工場を立ち上げて、出遅れていたアフリカのバイク市場に本格参入するというニュースがあった。このケニア工場のとりくみは「小さく産んで大きく育てる」というコンセプトでスタートしている、まさにCreActionそのものだ。
・通常、バイク工場というと、大きな建物の中に複数の製造組み立てラインが整備され、コンベアで運ばれてきた車体に次々とパーツを組み付けていく、というオートメーションの工場をイメージする。しかし、これから参入する市場についても十分な経験がない中で、生産拠点の大規模投資はリスクが大きすぎる。かといって、輸出は価格が高過ぎる。
・ホンダは、まずは体育館くらいの簡易な建物を立て、現地のエンジニア2名を生産のリーダーとして雇用し、彼らに手作業でのパーツの組み立て方を教えこんだ。工場には、オートメーションなど一切ない。2名のエンジニアが他の組み立て従業員約10名を指揮して、日産20台程度のバイクを組み立てて出荷する。このような組み立て方であれば、コストが極めて低いので、低価格で高品質でホンダブランドのバイクを投入できる。そして、現地での市場シェアが拡大の傾向を示してきたら、しかるべきタイミングでより効率的で体規模な生産ラインへと移行すれば良い。
・このように、普通は大掛かりな投資と精緻な準備を伴うと思われる海外市場のバイク製造拠点でも、アントレプレナーシップ溢れるCreAction的行動様式が適用できるのだ。

【今回のまとめ】
・CreAction(クリアクション)の4つの柱を実践し、「小さく早く失敗し、そこから学習する」、「小さく産んで大きく育てる」ことによって、新規事業をより早く成功に導くことができる。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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