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日本企業の海外進出①

永池克明 国際経営論、経営戦略論、アジア産業論

13/12/16

前回までは、九州や日本がもっと外へ目を向けて、いろいろなものを輸出して稼いで行く必要があるというお話をしました。今回からは、数回にわたって、その具体的な方法について説明いたします。

第一回目となる今回は、特に製造業に焦点をあてて、国内市場中心から、輸出を開始し、さらには海外生産や研究開発まで現地でやるようになっていく過程をたどり、それがなぜ必要かを考えます。日本で作ったものを日本で売っている企業は、ビジネスチャンスをさらに広げるために、次は、日本で作ったものを海外へ輸出する段階に入ります。そうすると、現地におけるニーズや好み、あるいは商品を用いる人の体格や宗教が様々であるため、日本で作ったものを売ろうとしても無理があることに気付きます。そこで、現地のニーズを細かく汲み取るために、現地の研究者やデザイナーを雇い、現地の人が現地で設計したものを売る、というかたちにせざるを得なくなります。アメリカやヨーロッパ、アジアなどの大きな市場へ進出するのであれば、なおさらです。

以上のことを、もう少し細かく見ていきましょう。
国内でのみ生産、販売を行っていた企業が海外へ輸出する際、その企業の中に海外のビジネスに経験がある社員がいないため、最初は日本の貿易商社に委託して現地の販売代理店を経由して売り始めます。すなわち、彼らに現地へ商品を持って行ってもらい、売るようにするのです(これを間接輸出といいます)。この形では、故障や寸法直しなど、貿易商社や現地の販売代理店だけでは対応できないことも増えて行きます。これらの商品を逐一日本へ戻すわけにもいきません。そこで自社の社員を現地へ派遣して駐在させ、自前の販売会社を作って処理することになります(これを直接輸出といいます)。それでも間に合わなくなると、今度は、日本のエンジニアやサービスマンを現地へ派遣し、工場を建設し、現地のニーズに細かく対応した商品を生産する段階に入ります。更には、現地のデザイナーや技術者を雇って現地に研究開発や設計をする研究開発センターも作り、彼らに現地のニーズを汲み取らせ、商品を開発・設計・販売するというかたちへ発展して行きます。

大企業は既に、アメリカやヨーロッパ、アジアにおいて、研究開発からはじまる上述のすべてを行っています。九州の企業も、これから現地での本格的な販売を目指すのであれば、最終的にはここまで考える必要があります。ただし、輸出だけで十分にやっていけるようであれば、現地で工場を作らなくともよいでしょう。

もっとも、海外へ進出する際には、商品そのものが魅力的でなければなりません。また、現地の人をうまく用いることで、現地のニーズを汲み取り、ライバルに勝つような、マーケティングやサービスを展開する必要があります。

ほかにも、現地政府による法律や規制など外的な要因や為替変動についても、十分に勘案しましょう。せっかく輸出したのに、現地の通貨が高くなったり、現地政府が輸入制限を始めたりすると、輸出では採算が悪くなるため、現地生産や現地研究開発を行うなどして対応しなければなりません。いずれにしても、これから先、海外の市場で自社の社員が活躍する機会がどんどん増えて行きます。それを見越して、今のうちから様々な準備をしておく必要があるでしょう。

今日のお話をまとめます。
国内中心の企業が海外での販売を増やすためには、まず輸出が必要となります。自社の社員だけでは輸出をできない企業は、商社を介した間接輸出から始めます。その後徐々に自社の社員が直接担当するようになって直接輸出へ移行し、それから現地での生産や研究開発を行っていきます。こうした段階を経て、企業は次第に国際化し、現地により密着した事業を行い、力をつけて売上・利益を増やしていくのです。

分野: アジアビジネス 国際経営 経営戦略 |スピーカー: 永池克明

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