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ビジネスモデル仮説検証のためのMVP(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/12/30


以前、ビジネスモデル・キャンバスという、紙1枚の上にビジネスモデル全体を表現し、俯瞰してその妥当性を確認できるツールについて紹介しました。
このツールで整理・表現したビジネスモデルでも、それは「机上の空論」に過ぎないので、常に顧客候補に接しながら、仮説を検証する必要があります。
その仮説検証の過程で、自ら考案したビジネスモデルと顧客ニーズがフィットしないことが判明したら、「ピボット」と呼ばれる方向転換を決断することも必要です。
さて、この仮説検証のプロセスが、実はなかなかうまく行かないのです。"Don't Fall in love with your first idea!(最初のアイデアと恋に落ちてはダメ!)"と言われても、ひとはなかなかそれを捨て去ることが出来ません。
最初のアイデアが本当に顧客ニーズに応えているかをきちんと検証せずに、いつのまにか自己暗示がかかって"絶対売れる"と信じ込んでしまい、そのまま製品やサービスを市場に出してしまいます。そこで初めて、顧客が全く関心を示してくれないことに気づくのです。その時には、すでに開発の投資、販売ルート(店舗や流通の確保)、マーケティング、パッケージデザイン、製造工場への委託、・・・相当な投資が行われており、そのほぼ全てがパーになります。実は、世の中ではこのような失敗が後を絶ちません。
そこで、ビジネスモデル・キャンバスでビジネスモデルを構築しながら、並行して、ある"モノ"を使って仮説検証の精度を高めます。それが"MVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)"です。
MVPは、製品やサービスの「価値提案(バリュー・プロポジション)=ビジネスモデル・キャンバスの中心に配置される、最も重要な要素」を体現し、潜在顧客にそれを伝えるための、"非常に簡素でシンプルな試作品"です。

例えば、福岡で珍しいエスニック料理のレストラン(なんでも良いが、仮にアフガニスタン料理と仮定する)を開店しようとします。
自分が、かつて現地を旅行したとき、地元のレストランで食べた香辛料の利いた料理の数々に惚れ込んで、日本にアフガニスタン料理のレストランを開きたいと考えたのです。
さて、この最初の段階で、どんなことをやるべきでしょうか?講義で多くの学生に質問してみると、「料理を作れるシェフを探して雇う」とか「店舗を探す」とか、「事業計画を作って銀行に行く」いった答えが出てきます。
最初にやらなければならないことは、自分が異国で出会って感動したアフガニスタン料理を日本で再現できるかを確認して、それを、身近な家族や知人が食べて、自分と同じように感動してくれるかを検証することです。
そのために、必要なMVPが、レストランで提供する「名物料理」1〜2品です。
名物料理を試作して、それを周囲の人が喜んで食べてくれるか、味付けにどんな工夫が必要か、"看板"としてのメニューは、自分が想定したもので大丈夫か、といったことを、試作と試食を繰り返して検証するくらいは、お金をかけずに出来るでしょう。
しかし、レストランを開こうとすると、ついつい妄想して、看板メニューを客が気に入るか否かではなく、「店のインテリアや雰囲気はこうしよう!」とか、「レストランの場所は、やっぱり若者が集まる大名が良い」とか、「フェイスブックを開設して、SNSを使ってプロモーションをしよう」とか、「ついでに、アフガニスタンの雑貨を輸入して、レストランのレジ付近で販売しよう」とか、といったことを考えてしまいます。これでは、本当に検証すべき価値提案(バリュー・プロポジション)である「料理の味」が全く検証できないまま、計画だけが先に進むことになります。

今回のまとめは、以下の通りです。
ビジネスモデルの仮説を検証するには、お金をかけずに簡素でシンプルな試作品=MVPを作って、本当に顧客がそれを望んでいるかを確認する必要があります。MVPを使えば、小さく速く失敗を繰り返しながら、真の顧客ニーズにたどり着くことが出来るでしょう。

次回は、更にMVPについて理解を深めましょう。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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