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ビジネスモデル仮説検証のためのMVP(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/12/31

前回は、ビジネスモデルの正しさを検証するためのMVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)について紹介しました。
MVPは、そのビジネスモデルで最も重要な「価値提案=バリュー・プロポジション」が想定顧客に受け入れられるか否かを検証するために用いる、"簡素でシンプルな試作品"です。
今日は、このMVPの重要な点について解説しましょう。
まず、(1)MVPは検証したい仮説だけを盛り込んだものにすべき、という点、つまり仮説を明確にして始めよ、ということです。先日のレストランの例だと、最も重要なのはアフガニスタン料理の「味」が福岡で受け入れられるかだが、店舗の内装やドリンクやSNSを使ったプロモーションやら、検証したいことを同時に盛り込んでしまうと、どの要因がどう作用して、客が増えたか減ったかの因果関係がはっきりしなくなります。従って、最も重要な「料理の味」に絞った試作を行い、テストをすべきなのです。
次は、(2)最初から過大な投資をしない、ということです。仮説検証は、1回で済むとは限りません。何度か手を変え品を変えて行う必要があります。そのときに、1回あたりのMVPを使った仮説検証に100万円もかかっていると、レストラン開店資金を使い果たしてしまいます。逆に、いくらまでなら失敗可能か「MVP予算」を計上し、その範囲でできるだけ効率よく仮説検証を繰り返すことが重要です。深い傷を負うことなく、正解に近づくことが重要なのです。
最後に、(3)顧客ニーズがなければ、思い切ってピボットすることです。人間には、「確証バイアス」があって、そもそも、自分に都合の良い情報しか取り込まない生き物です。従って、仮説検証はできるだけ科学的に行い、途中でどうしても顧客ニーズが自分の想定とは違うことが明らかとなったら、思い切ってピボットして、違うMVPで試してみることが重要です。
もともと想定していた事業がうまく行かないことは多々ありますが、それで終わってしまう人と、それを糧に次のステージに進める人が存在します。
例えば、ポストイットで有名はスリーエム(3M)という会社は、1902年の創業時の事業計画は、サンドペーパーの砥石に使う鉱石の発掘でした(だから、ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリングという3Mの社名がついたのです)。しかし、鉱山を掘ってみたらサンドペーパーに使えない鉱石だったことが判り、初期の目論見は崩れました。しかしそこで現実に即して、事業を「サンドペーパーの製造販売」に切り替えました。それが今の3Mにまで発展しました。もし、最初の失敗の後に、更に別な鉱山を掘って鉱石の発掘事業を行っていたら、さらに失敗の傷が深くなり、成功すること無く会社が消滅してしまっていたかもしれません。

MVPを使ってビジネスモデルの仮説検証を行うことで、新規事業にまつわる多くのリスクを回避し、より効率よく成功に近づける有効な手法です。一見回り道のように見えても、「小さく速く失敗する」ことが重要なのです。

今回のまとめは以下の通りです。
MVPのコツは(1)検証したい仮説を明確にする、(2)過大な投資をしない、(3)顧客ニーズがなければ思い切ってピボットする、の3点です。小さく速く失敗することで、効率よく成功に近づくことが出来ます。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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