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レバレッジ①

平松拓 企業財務管理、国際金融

13/09/30

今日と明日、2回にわたり「レバレッジ」についてお話したいと思います。
皆さんは、「レバレッジ」という言葉をご存知ですか。「レバレッジ」というのは、昔、理科で習われたと思いますが、「梃子(てこ)」のことを言います。

「梃子」と聞いて私が思い出すのは、その昔、ピラミッドを作るために普通ではとても運べないような大きな石を、「ころの原理」と「梃子の原理」を用いて運んだ、という話です。それに限らず、実生活でも私達の周りには、「梃子」を利用したものがたくさんあります。最近は、瓶ビールの栓抜きやくぎ抜きなどを使う機会が減っているかと思いますが、それでも私は、例えば、研究室で何枚もの紙に穴を開ける「パンチ」を毎日のように使用しています。あれは、明らかに「梃子の原理」を応用しているわけです。少し落ち着いて周りを見回して頂くと、これに限らず、私達が普段利用している機械、器具には「てこの原理」を応用したものが数限りなくあるということに気がつかれると思います。
この梃子、「レバレッジ」は、「小さな力を大きな力に変換するための仕掛け」ということもできると思います。そして「レバレッジ」は、実は経済や経営の世界でも色々と使われているのです。例を挙げると、株式の「信用取引」、或いは外国為替の「証拠金取引」というものがあります。一部の方は、実際にそうした取引をやっておられるかと思いますが、これらは、「一定の割合で資金を積んでおけば、その何倍かの金額の投資が可能となる取引」であり、少ない元手で、大きな利益を狙うことが可能になります。どういう仕組みかということを具体的に述べますと、株式や海外通貨などの投資対象資産を購入するに際して、その対価となる金額を払い込むのではなくて、購入した時の価格とそれを売却する時で価格差が生じる時に、その差額を弁済するための資金を、予め証拠金という形で供出しておくものです。購入から売却までに資産価格が上昇した場合は、その差額を利益として受け取ることができ、一方、逆に下落した場合には、証拠金を使って決済する訳です。従って、逆に、購入からではなくて、売却から入ることも可能です。
こういった「信用取引」や「証拠金取引」の形でリスクのある資産に投資する場合、自分が出している元手である「証拠金」の何倍もの資産に投資することが可能となるため、上手く行った場合のリターンはその分大きいものとなります。しかし、逆に狙いと反対の動きとなった場合には、その分大幅な元手の減少になり、場合によっては追加で証拠金を積まなきゃいけないといったことにもなるわけです。つまり、ここでの「レバレッジ」というのは、リスク資産への投資を数倍のハイリスク、ハイリターンな投資へと転換する仕組みと言うことができます。
これは、市場、マーケットにおける「レバレッジ」の例ですが、企業活動の中でも「レバレッジ」という言葉が使われることがあります。その1つが、「営業レバレッジ」といわれるものです。この「営業レバレッジ」というのは、売上高の変化がどれだけの大きさの営業利益の変化に繋がるか、その比率のことです。企業の営業利益というのは、皆さんご存知の通り、売上から製造原価を差し引いた「売上総利益」、そこから販売費、一般管理費を控除したものです。もし、製造原価や販売費、一般管理費が全て流動費用(原材料費のように売上高と比例して動く費用)であったならば、「営業利益の変化率」というのは「売上高の変化率」と等しくなります。しかし実際は、製造原価の中には、設備の減価償却費や工場で働いていながら直接製造には携わらない間接人員の労務費、或いはその販売費など、また一般管理費の中にも、売上に関わらず一定の人数がいる経理部門や人事部門などの人件費、こういった「固定費」が含まれるています。この固定費はまさに固定的な費用であり、売上の大小に関わらず一定金額が発生するために、売上が小さい場合は、相対的に大きな負担となる一方、売上が大きくなれば、相対的に軽い負担ということになります。ある一定の売上高に於いて、固定費の割合が変動費に割合に対して相対的に低い企業では、売上がそれ程大きくない段階での営業利益率は高めですが、逆に、固定費の割合が相対的に高い企業では、売上が伸びれば伸びる程、営業利益率は高くなります。これがまさに「レバレッジ」に当たります。
こうした考え方を応用すると、企業のアウトソーシングについては、逆の「レバレッジ効果」があることがわかります。「アウトソーシング」というのは、企業の業務の一部を切り出し、他社に委託することを言います。例えば自社の社員が行っていた配送などの業務を、外部の物流業者に委託する場合を考えてください。企業の物流に掛っていた費用、これ等は大半が物流部門の人件費など固定費であるケースが多いのですが、これ等を「アウトソーシング」を通じて、その運搬数量、すなわち売上に応じて変動する流動費化することができるわけです。他にも、社用車を配備していた企業が、タクシーの利用に切り替えるといったような場合でも同じような効果があるわけです。つまり、「アウトソーシング」することにより、売上が変動しても営業利益の変動を小さく抑えることが可能になるわけです。逆に、従来は外部に委託していたものを今度は内部に取り組むことにより固定費化することで、営業利益の変動を大きくすることも可能です。これもひとつの「営業レバレッジ」ということができるわけです。

このようなことから、売上が伸びそうなとき、企業は「レバレッジ」を効かせます。逆に、経済状況からしてどうしても売上が減少しそうな場合は、「固定費の流動費化」によって、「レバレッジ」を抑える傾向があるという事ですね。

今日のまとめです。今回は「レバレッジ」について色々お話したわけですが、企業は「固定費用」と「流動費用」の間のバランスを調整することによって、企業の財務体質を経済状況に対応させることが可能になるということを覚えておいてください。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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