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アメリカの住宅バブル

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/08/27

今回は、リーマン・ショックの原因となった米国の住宅バブルの話です。米国では2000年代前半に金融緩和が続いたことで、住宅投資が活発化し、住宅価格が上昇しました。後から考えればバブルだったのですが、その時は「米国は移民の流入が多いから、住宅需要は今後も増えていく」と説明されていました。それらしい説明をされて皆がそれを信じること、金融が緩和されていること、といったバブルの条件が揃っていたわけです。

住宅価格が上昇を続けていたので、銀行も楽観的で、普段なら相手にしないような信用力の低い人々にも住宅ローンを貸していました。こうしたローンをサブプライム・ローンと呼びます。

銀行が考えていたことを数字で説明しましょう。100の貸出をして、利子が10%だとすると、1年後に10の金利が発生します。借り手がこれを払えなかったら、借り手を他の銀行に連れていき、住宅を担保に110借りさせるのです。その頃には住宅の価格が今より高くなっているはずなので、他行は喜んで110を貸してくれるはずです。それで自分の銀行は元本も利子も回収できて、1件落着というわけです。1年後には住宅価格が上昇している事を前提に貸出をするという事自体、バブルの時にしか出来ない事なのですが、当時の銀行はバブルだと気付かずに、貸出に邁進していました。

さて、米国では、銀行が住宅ローンを貸すと、満期まで貸していて利子を稼ごうとするのではなく、住宅ローン債権を証券化するのが普通です。証券化というのは、難しい話なので省略しますが、とりあえず住宅ローンの借入申込書を売ってしまう、と考えて下さい。100貸した時に、借入申込書を101で売るのです。なぜ銀行が売るのかというと、銀行には自己資本比率規制があるので、自己資本の何倍まで貸して良いか決まっているのです。そこで、すでに沢山貸している銀行は、新たな貸出先を見つけてきては、貸出をしてすぐ売却して差額を儲ける、という商売をするのです。

では、借用証書を買う人は、なぜ買うのでしょうか。それは、住宅ローンの金利が国債の金利などに比べて高いので、多少高い値段で買っても充分に儲かるからです。実際に買うのは借用証書そのものではないので、住宅ローン証券と呼ぶ事にします。

こうした住宅ローン証券は、世界中の投資家に幅広く買われていきましたが、これを特に大量に持っていたのが有名なリーマン・ブラザーズという証券会社です。

さて、住宅バブルですが、価格の上昇は無限には続きませんから、いつかは下がります。住宅価格が下がり始めると、更に下がります。値上がりする前に家を買おうと焦っていた人が、値下がりが始まると「もっと下がるまで待とう」と考えて買い注文を引っ込めてしまうからです。銀行も、住宅を担保にして住宅ローンを貸すことを嫌がるようになります。そうなると、買いたくても買えない人が増えてきて、買い注文は更に減ります。

サブプライム・ローンは、住宅価格が値上がりすることを前提としたものですから、大きな問題が生じます。もともと借り手は信用力が低いので、金利が支払えない場合も多いのですが、住宅が値下がりをはじめると、住宅を担保に借金をする事が難しくなるので、借り手は借金を踏み倒すしかなくなります。そうなると、貸し手は借り手を家から追い出し、住んでいた家を競売にかけることになります。こうして多くの家が競売にかけられると、買い手がつかずに住宅の価格が一層下落していく、という悪循環が生じるわけです。

さて、住宅ローンが踏み倒されるケースが増えてくると、貸している方は気が気ではありません。日本の場合には、住宅ローンは貸した銀行がそのまま持っているので、返済を少し待ってあげるとか、借り手を追いださずに様子を見るといった事も可能です。しかし、米国の場合は話が少し複雑です。住宅ローン証券を持っているのは見も知らぬ投資家ですから、待ってあげるといった交渉も簡単ではありません。そこで大量の住宅が競売され、値下りが加速したのです。

それより大事な事は、住宅ローン証券を持っている人が、事態が悪化する前に証券を売ってしまおうとすることです。世界中の投資家が同じ事を考えて住宅ローン証券を売りに出すと、買う人がいませんから、住宅ローン証券の価格が暴落します。そうなると更に売り注文が増えて買い注文が減り、価格は底なしに下がっていきます。
住宅ローン証券を大量に持っている投資家は、巨額の損失を被りますから、倒産するかも知れません。そうした噂が流れると、その投資家は世界中の銀行から一斉に借金の返済を迫られ、本当に破産してしまいます。そうなったのが、リーマン・ブラザーズだったのです。

まとめ:米国では2000年代前半に住宅バブルが発生しました。銀行は積極的に住宅ローンを貸し、それを売却しました。住宅バブルが崩壊すると、住宅ローン証券を持っていた投資家は大損し、リーマン・ブラザーズは倒産しました。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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