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日本の広告産業モデル③

出頭則行 マーケティング

13/07/17

「日本の広告産業モデル」というテーマで2回お話をしてきました。前回は、日本とアメリカの広告代理業が、それぞれメディアに対してどういう考え方をしているのか、そしてそれが大きく違うことをお話しました。

アメリカの広告業はメディアに投資できません。広告主がはっきりしてないとメディアは買えない。日本の広告代理業は、メディアに投資できる。即ち、広告主がはっきりしてなくても、メディアを買い付けることができます。
例えば、広告主が破産したとします。そうすると、アメリカの場合は、メディアが直接的に負債を負います。この場合、代理店に責任はなく、メディアが取り立てるという事になります。日本の場合は逆に広告代理業が負債を負います。そういう点で日本とアメリカで違いがあります。日本の場合は、広告代理点がより前面に立っているのです。つまり、それだけリスクをとっているということでもあるわけです。このように、メディア取引は、日本とアメリカで随分違うのですが、日本の場合は非常に大きな代理店が存在していて、日本の広告費扱いの4分の1とか8分の1に及びます。日本の大手広告代理店はメディアのストックを持っているわけです。自らリスクを被るかわりに、ストックを持てるということです。(もちろんクライアントの要請で買うことも当然行われています。)日本の広告代理業は「一業種多社」なので、色々なクライアントがいるわけです。そして、メディアのストックと色々なクライアントの間で、目に見えない一種の証券取引所みたいな状況ができるわけです。すごく良いメディア枠、TVで言えば視聴率の高い時間枠は引き合いが高くなります。そうすると、そのメディア枠を一番高い値段を出すクライアントが買うことになりますよね。このシステムは株式市場みたいですね。その一方、引き合いが非常に低いメディア枠の値段は下がっていきます。従って、その価値によってメディアのプライスは上下動します。景気が良い時と悪い時では、その値段に相当の差が見られます。従って、メディアにとって、視聴率、つまり「数字」は非常に重要になるわけです。視聴率はメディアにとっていわば「命綱」であり、その1パーセントのために、色々な不祥事が起きてしまうこともあります。

日本とアメリカの広告代理店は、私からすると少し違った業種のような感じさえするのです。日本の代理業は色々な領域に手を伸ばしていて、コミュニケーションの総合商社みたいになっていますよね。そのため、日本の状況が相当ユニークな状況であるということをお話してきたわけです。このことは、日本の広告代理業のモデルはガラパゴス化してもいることにもなります。非常に特異なモデルであると言えます。車、カメラ、電気製品と違って、広告は物ではありません。良い品質の商品は国境を越えて受け入れられますが、広告ビジネスはそうではありません。日本の広告代理業のこのモデルは、中々海外に置換しがたいものなのです。アメリカの有力広告代理店は扱いの多くを本国外で獲得しています。これら広告代理業の形態は、どちらかと言えば「モジュラータイプ」であり、かつ英語を母国語としています。日本の広告代理店の場合、言語の問題に加えて、強みであるメディアの作りこみは、一朝一夕では出来ず、海外で苦労しているわけです。

これまで3回に渡りました「日本の広告産業モデル」のまとめですが、日本の広告産業はとてもユニークなビジネスモデルであるということになります。

分野: マーケティング |スピーカー: 出頭則行

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