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日本の広告産業モデル②

出頭則行 マーケティング

13/07/16

今日は、前回に引き続き「日本の広告産業モデル」をテーマにお話します。前回は日本の広告代理業はメディアブローカーから発生し、アメリカと違い「1業種多社」という形態をとっており、色々な企業を扱っている。アメリカの場合はとても専門化されていて、「1業種1社」という形態だということをお話しました。今日はその続きです。

日本の広告代理業は、ワンストップショッピングのように、沢山のクライアントのニーズに応えられるように、色々な機能を取り込んでいきました。それに加え、様々な事業に関わっていきます。スポーツマーケティングや映像事業といったものになのですが、これらはアメリカの代理店には見られないことです。これによって、「日本の広告費が上位代理店に集中する」ということが起きます。これは、あまり世界に例がないことで、恐らく韓国とブラジルくらいしかないと私は聞いています。例えば、電通が日本の広告費の約2割強、博報堂が1割強の扱いを占めています。このように、上位代理店に広告費が集中するのです。アメリカの場合はそれがありません。アメリカの場合は、トップ代理店でも全広告費の2パーセント程度しか占めません。アメリカの広告代理店は「専門分化」されているため、このような形になると言えます。

前回、広告産業には、「広告主(=スポンサー)」「広告代理業(=エージェンシー)」「メディア」という3つのプレイヤーいる、ということをお話しましたが、今日はその中でも特に、「メディア」についてお話しします。

日本の製造業を語る際、よく「インテグラル」と「モジュラー」というようなことを言われるのですが、皆さんはこのことをご存知ですか。簡単に説明すると、「インテグラル」というのは、設計段階から作りこんでいくことを意味します。ですから、日本の製造業は部品を提供するサプライヤ―と長い間話し込んで商品を作りこんでいくのが特徴であると言われています。一方、「モジュラー」というのは、部品がパッケージになっていて、それらを組み合わせて商品を作ることを意味します。日本はインテグラルな伝統が強く、商品は良いのですが、値段が高くなります。サプライヤーとの関係も長期・安定化させる必要がありますし、時間も掛かります。「インテグラル」、すなわち作り込むことは、部品を組み合わせるだけのところと比べると、随分コスト高になってしまうということが言われていて、尚且つ、様々な特徴を商品に組み込んで行くため、商品が「ガラパゴス化する」ともいわれています。しかし、日本の作り込みは日本の文化的特性であるとも感じます。

日本の広告業では、代理店が媒体社と一緒になり「メディア」を作りこんでいきます。多くのTV番組が広告代理店と媒体社が協力して企画されています。媒体社は日本の代理店にとってパートナーでもあるし、時にはクライアントになります。一方、アメリカの代理店にとって「メディア」は商品です。従って、メディアというのは、米や塩、セメントのようにコモディティとして売買されます。アメリカの広告代理店は、今、そこにあるメディア価値を買い取り、ベストミックスしていく。逆に、一緒になって、価値を刷り込んでいくというようなことはありません。日本の広告代理業には、「メディア営業」というものがあります。例えば、このラジオを放送しているFM福岡を担当する営業が代理店にはいます。このようなことは、アメリカの代理店にはありません。
もう一つ明確な違いがあります、アメリカの代理店は広告主を明示すること無しには、スペースや時間が買えません。一方、日本の広告代理店は広告主を明示することなくメディアを買い付けることができます。プログラムを企画するときには広告主がはっきりしてないケースが沢山あります。ワールドカップやオリンピックの放映権も、買い付けた段階で広告主が確定しているわけではありません。広告代理店にとっては投資行為となります。これは、とてもリスクを伴うことでもあり、ワールドカップは非常に人気がありますが、もし日本が初戦で敗退なんかすると、その後の視聴率はとても無残なことになってしまいます。

今日のまとめは、日本の広告業にとって、メディアはパートナーでありクライアントである。ということになります。

分野: マーケティング |スピーカー: 出頭則行

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