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京セラの稲盛会計学⑥

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

13/06/26

これまで京セラの七つの会計原則のうち、三つをお話しました。稲森氏は、経営のために、次の「七つの会計原則」を示しています。
1 キャッシュベース経営の原則
2 一対一対応の原則
3 筋肉質経営の原則
4 完璧主義の原則
5 ダブルチェックの原則
6 採算向上の原則
7 ガラス張り経営の原則
今日は四つ目の「完璧主義の原則」についてお話しします。

(1) 完璧主義の原則
稲盛さんは工学部出身です。理工系では、実験等で99パーセント良くても、1パーセントミスがあると全体が失敗するので、完璧でなくではなりません。つまり、曖昧さや妥協を許すことなく、仕事の全てを細部にわたって完璧に仕上げるということが必要となります。例えば、宇宙ロケットなどを考えた場合、ほとんど(99%)成功していても、完璧でないと地球に戻ってこられません。したがって、理工学系的には完璧主義は当然必要だと考えられます。

(2) 製品の管理
この考え方を経営に活用しようということです。具体的には、例えば、製品を製造している場合、不良品がゼロ(を目指す)ということは当然の要求です。この場合、通常、製品の管理は上流管理です。上流管理とは、できるだけ上流の段階で、何回も部品等に検査を入れ、最初の段階から不良品が出ないようにすることです。もちろん完成品の段階で完璧かどうかを再度チェックしますが、一旦不良品が出てくるとロス、補修等に大変なので、その前に不良品を出さないようにできるだけ早い段階からチェックを厳しくしています。しかも不良品が販売されてしまうと、その企業に対する信頼度の低下や失墜に繋がってきます。それがPL法などで厳格に責任追及されます。したがって、そういう面で完璧主義は製造業を中心として求められています。

(3) 決算書
次に、例えば、経理部等で決算書を作るときですが、以前お話しましたように、1対1の原則でモノとお金が動いたときには必ず伝票を記入します。そして、ダブルチェッキングを行って不正等の発生を抑えます。自分と当事者だけではなく、第三者が入って、完全になるシステムでないと決算書は不正が生じやすいのです。この場合、一番重要なのは経営者で、経営者が正確な決算書を作ろうとしているということです。例えば、従業員の着服や帳簿上のごまかし等などの不正は案外金額が小さく会社が潰れる程にならないことが多いのですが、経営者が関与して不正が大掛かりになると、会社は本当に倒産する可能性があります。経理も上から下までパーフェクトであれば、そのようなことは生じません。

(4) 製造・営業目標
また、製造目標や営業目標を立てた場合、目標を必ず達成するというファイト(我武者羅な努力)が必要です。達成できる目標を先ず立てる事が大切ですが、立てたからには絶対にそれを達成しなければなりません。この場合、目標の立て方なのですが、達成できる目標で、かつ前年ベースにプラスアルファでなくてはなりません。つまり去年が100なら、110等でいいのですが、前年を下回った目標ではだめです。前年を上回る目標を立て最後までやり切ることです。目標は単なる外部に対する約束のみならず、自分自身に対する目標でもあります。外部に対する影響も重要ですが、それ以上に自分自身に達成を誓っているので、自分自身に対する信頼性を確保しなければなりません。

(5) 経営管理と現場管理
次に、ミクロ(現場)とマクロ(経営全体)の同時理解です。例えば、経営者が経営管理を行う場合、初代の人は現場からたたき上げて会社を作っているので、現場のことはよく分かっています。ところが二代目は、現場を知らずに部長、専務或いは社長になります。それで、現場を知らない人が二世や三世には多いのです。そうすると、現場の状況がわからずに経営するようになります。それでは正しい経営が出来ないので、完璧に経営を行うためには、できるだけ足しげく現場に赴いて、現場の状況を知るということが非常に重要です。

(6) まとめ
今日のまとめは、健全経営をするためには、経営のあらゆる局面において完璧主義の原則を守るということが大切です。

〔参考〕 稲盛和夫[2009] 『稲盛和夫の実学 経営と会計』日経ビジネス文庫

分野: 会計 |スピーカー: 岩崎勇

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