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産学連携におけるマーケティング(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/06/19

・大学では、それこそ『日々、山のように』研究成果が生み出される。そのうち企業が興味を示しそうな発明を特許化し、それをライセンスするのだが、そのライセンスに興味を持ちそうな企業に対して、どのようなマーケティングを行えばよいのだろうか?

・そもそも大学で生まれる基礎的な科学技術の成果は、どのように世の中で役に立つのか、イメージすら明確になっていないことが多い。

・そこで、どの企業がその技術に興味を示しそうかリストアップするために、大きく3つの情報を手がかりに調査をする。一つ目は、既に発明者が持っている情報。発明者(大学の研究者)が論文や学会での発表時に接触してきた企業関係者や、研究者が日頃から付き合いのある企業は、技術の潜在的ユーザー企業となる可能性がある。

・また、研究者によっては、研究成果をマスコミを通じて発表する場合も少なくない。その場合、メディアで取り上げられたことをきっかけで研究室に連絡してくる企業もいる。そのような企業も、潜在的ユーザー企業となる可能性がある。

・2つめは特許情報。特許は、出願して1年半で公開される。従って、過去にどんな企業がどのような特許出願をしていたかを、特許データベースで検索すると、思ってもみなかった企業が実は関連する研究開発を進めていて、潜在的なユーザー企業だということを発見できる場合がある。

・また、例えば太陽光発電のパネルの技術だと、「単結晶」「多結晶」「アモルファス」といった技術に分かれるが、大学の新たな発明が「アモルファス」に関係する技術だとすると、その技術は「アモルファス」の開発を行なっている企業に働きかけをするのが技術移転契約に結びつく可能性が高い。そういった企業の研究開発動向は、特許データベースを検索すると正確に判る場合がある。

・最後の3つ目は、一般的な企業情報。近年はインターネットと情報検索性の向上によって、ずいぶん詳細な情報まで簡単に無償で入手できたりする。例えば、有価証券報告書でその企業の今後の事業戦略や研究開発動向を知ることも手がかりになる。あるいは、専門雑誌やビジネス誌を検索して、マーケティング対象となりうるか参考になる情報を得ることもできる。

・そして、何よりも重要なのは、企業の開発担当責任者に直接コンタクトすることだ。企業の立場からすると、大学の担当者が突然電話してきて最初は面食らうこともあるかもしれない。しかし、大学で発明された最新の技術情報について、わざわざ大学側から連絡してくれるのに対し、企業側としては電話を切る理由はない(先物取引や不動産の営業とは違う)。しばらく話して自社に有用だと思えば直接面談しても良いし、自社に関係無さそうであれば電話を切れば良いだけのこと。

・大学側の担当者としても、企業にあれこれ案件紹介を繰り返していると、だんだん相手企業の関心領域が判ってきて、より適切な技術の紹介が出来るようになる。相手との信頼関係が得られたら、「ここだけの話だけど・・・」といって、ちょっと秘密の情報を教えてもらえたりもする。その知識と経験を蓄積させることで、マーケティング能力を高めていくのだ。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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