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産学連携における知的財産(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

13/05/29


◆大学での特許マネジメントの難しさ 〜特許には巨額の費用がかかる
・前回の最後のほうで、スタンフォード大学のグーグルへのライセンスなど、米国のいくつかの大学が特許のライセンスで巨額の収入を得た話をした。だったら、どんどん特許を出願し、どんどんライセンスして収入を得れば良いかというと、それは難しい。
・それは、特許の出願や維持には高額な費用がかかるという理由による。特許1件を日本や先進主要各国、中国・韓国などで出願・維持しようとすると、最初の10年間で軽く1千万円以上の費用がかかる。一方で、年間1億円以上のライセンス収入をもたらす、通称"ホームラン特許"を得る確率は、1000件の中に1件あるかどうかというレベルである。となると、いつ当たりが出るかもわからない中で、大学が巨額の特許出願費用を負担することは当然難しい。
・実際に、米国の大学でも、特許費用や維持管理の人件費をカバーしたうえで、発明者や大学に収入を配分できている大学は、全体の僅か16%に過ぎない。さらには、全米の大学の平均ライセンス収入額は、大学の年間研究費の3〜5%にすぎない。
・従って、各大学は特許やその管理への配分可能な予算額をにらみながら、発明の価値の目利きをし、適切な管理を行う必要がある。

◆もうひとつの特許マネジメントの難しさ 〜独占か?非独占か?
・もうひとつの難しさには、ライセンス契約の際に独占権を付与すべきか、非独占とすべきか?という点だ。
・特許権は元々独占を保証するので、独占ライセンスが普通と思われるかもしれない。しかし、ライセンスを受けた企業が独占権の上に"あぐらをかく"こともある。大学としては、早く大学の特許を使った製品を世に出して欲しいのだが、企業が開発を急いでくれない(たとえ悪意がなくても、企業内の開発優先順位が下がる)ということも生じうる。
・もっと難しいのは、例えばA社に独占ライセンスをした後で、B社がA社とは全く異なる用途で特許のライセンスを希望してきた時に、すでにA社に独占ライセンスをしてしまっている場合は、大学はB社に対して「申し訳ないがA社に独占ライセンスしているので、A社と協議してほしい」としか言えない。A社がすんなりとB社にライセンスしてくれるかがA社次第で、場合によってはそこで話が終わってしまうこともある。一方で、最初の段階A社以外にもライセンス先がありうることを見越して非独占契約にしようすると、A社は独占のインセンティブがなくなるため、契約に至らないかもしれない。

・以上のように、産学連携において知的財産は重要な意味合いを持つが、そのマネジメントは簡単ではなく、100点満点の回答があるわけでもない。大学の知財マネジメントの担当者は、日々悩みながらその時に考えられるベストの判断をするしかなく、それができる人材の育成が重要なのだ。

分野: 産学連携 知的財産 |スピーカー: 高田 仁

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