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目標が人に与える影響(課題をどう意味づけるか)

藤村まこと 社会心理、組織心理

13/05/22

最近、失敗をどのようにとらえるのかということが、よく話題にのぼります。
これは、課題や目標をどのようにとらえるのかという点と関係しています。仕事でもスポーツでも、何かをやり遂げようとした際、失敗を何度も経験することがありますね。その時に、失敗して無力感に陥ってしまうのか、あるいは、失敗を次の成長へ向けて活かそうと考えるのか、どちらのとらえ方をするかは、取り組む課題に対する価値観の違いにも影響を受けています。

ひとつは、取り組んでいる課題が自分の才能や能力の優劣を評価するためのもの(遂行目標)ととらえる考え方です。この考え方の場合、失敗は能力の低さの現れとなります。もうひとつは、課題は自分の成長のため、学習のためのもの(学習目標)ととらえる考え方です。この考え方では、失敗しても次に活かして、成長していければよいので、失敗を成功のための情報源ととらえます。上手くできたかどうかよりも、次にどうすればもっとうまくいくだろうかという点に目が向くことになります。

たとえば、大学生を見ていると、就職活動で面接に落ちたり、恋愛して失恋を経験したりと、辛い目に合うことはしばしばですね。しかし、就活を通して自分は成長している、次の段階へ向けて頑張っていると考えることができたら、失敗してもいい、次に頑張ろうと考えることができます。一方で失敗するたびに、自分は能力を評価されている、駄目出しをされている、自分は駄目なんだと思ってしまうと、どんどんやる気が落ちていきます。失敗のとらえ方ばかりが話にあがりますが、まず取り組む課題に対する考え方を変えていくことが大事なのかもしれません。

それではどうすれば、課題や目標に対する考え方を変えることができるのでしょうか。ひとつは、課題に取り組む人自身が、自分自身の価値観やとらえ方を変えることですね。また、周囲の環境からの働きかけも重要です。たとえば、子供の場合で考えてみましょう。試験の結果が出たときに、親はどこを褒めるでしょうか。結果だけをみて、点数の良し悪しを褒めたりしかったりする場合は、子供は試験や課題を能力評価のためのものだと考えるようになるでしょう。逆に、努力の良し悪しで判断すれば、子供は課題において大事なのは結果ではなくプロセスなんだ、と理解します。それによって、課題や目標の意味付けの仕方が変わってきますね。また、職場においては、上司がよく「失敗を恐れるな、挑戦しろ」といいます。そのためには、本人の気の持ちようやとらえ方が重要なのはいうまでもありませんが、課題を失敗したときや成功したときに、周りの人がどのように声かけするのかという点も意識したいところです。

これは、子供を対象とした実験です。その実験では、簡単な問題で成功体験を繰り返した子供よりも、数回間違えたとしても、上手くできる方法に関する情報をフィードバックされた子供の方が、課題に対するやる気を維持する、もしくはやる気を向上させたそうです。先ほどの職場での話に戻ると、失敗したときに的確なフィードバックがなされれば、本人のやる気も伸びていくのではないでしょうか。

私たちの生活には、失敗があふれていると言ってもよいですね。すべての失敗をまじめにとらえることは、難しいでしょう。そのため、自分の中で伸ばしたいと思っている分野や領域において、自分がどのように目標や課題を意味付けているか考えてみるとよいかと思います。失敗をすることは怖いことかもしれませんが、それは自分を評価しているのではなく、自分を伸ばすチャンスだととらえなおせばよいのです。心理学では、外部からの報酬によってもたらされるやる気(動機づけ)を外発的動機づけと呼び、達成したい、成長したいという気持ちによってもたらされるやる気や動機づけを内発的動機づけと呼びます。職場や学校において、本人が達成したい、成長したいという気持ちをもって動き始めれば、周囲が放っておいても本人はどんどん成長します。そうした内発的な動機づけが生じる環境作りが大切なのかもしれません。

分野: 心理 |スピーカー: 藤村まこと

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