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戦後の金利の推移

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

13/04/11

今日は、戦後の金利の歴史について御話しします。金利には色々ありますが、大元は日銀が金融政策によってコントロールしているので、金利を考えるためには日銀が何を考えていたのかを理解する事が必要です。
日銀の考え方の基本は、景気が悪い時は金利を下げて、企業などが借金して投資するように誘導する事です。これを金融緩和と呼びます。一方で、景気が良すぎてインフレが心配な時は金利を上げて、企業などの投資を抑制して景気をわざと悪くします。インフレ退治のためには不況もやむを得ない、というわけです。これを金融の引締め、と呼びます。

戦後の金利は、日本経済同様に、バブルまでとその後で大きく局面が異なります。バブル期までは基本的に4%以上で推移していたのが、バブル後はゼロ近辺で推移しているのです。では、時期を追ってみてみましょう。
戦後の復興期から高度成長期までは、資金需要が非常に強い時期でした。借金をして工場を建てれば必ず儲かる、と考えて借入申込をする企業が多かったからです。借り手が多いならば日銀が紙幣を印刷して貸し出せば良い、という考え方もありますが、それではインフレになってしまいます。世の中に出回っている鉄やセメントの量は限りがあるので、日本中の企業が借金をして鉄やセメントの買い注文を出しても、全員が買えるわけではなく、値段が上がるだけに終わってしまうのです。
高度成長が終わると、工場を建てれば必ず儲かるという時代では無くなったため、資金需要が減りました。しかし、金利はそれほど下がりませんでした。まず、1973年と1979年に石油ショックが発生しましたから、日銀はインフレを抑えるために金融を引き締めました。1990年にはバブル潰しのために日銀は金融を引締めました。
それ以外の時期の金利も、今よりは大分高い水準で推移していました。景気が悪い時には金融が緩和されましたが、それでも金利はゼロにはならなかったのです。その理由を理解する鍵は、実質金利という考え方です。これは、金利から物価上昇率を引いた値のことです。
金利が10%でも、物価上昇率が20%であれば、借金をして急いで物を買った方が得です。こうした状態は、金融が緩和された状態と言えます。したがって、金融が緩和されているか否かを判断する場合には、金利から物価上昇率を差し引いた実質金利を見る必要があるのです。
バブルが崩壊するまでは、物価は上昇を続けていましたから、金利をゼロにしなくても実質金利を低下させる事は可能だったので、金融緩和期でも金利はゼロにならなかった、というわけです。

注目が必要なのは、バブル期の金利です。バブル期は、非常に景気が良かったのですが、急激な円高が進んでいたことから輸入物価が下落していて、全体の物価も落ち着いていました。土地や株の値段だけが急激に上がる一方で、一般の物価は上がっていなかったのです。そこで日銀は、当時としては低い金利のままで、金融緩和を続けたのです。結果としてこれがバブルを拡大してしまったのですが、当時の判断としては仕方が無かったのだ、という意見もあり、日銀が失敗したのか否かは議論のある所です。
バブル崩壊後の金利についても、議論があります。バブル潰しのために金融を引き締めたのですが、バブルが崩壊してからも、金利の低下は時間をかけて慎重に行われました。日銀がバブルの再発を恐れていたからです。
しかし、結果としては景気が非常に悪くなり、地価も大きく下がり、金融危機まで発生した事を考えると、バブル崩壊後の日銀は慎重過ぎました。バブルは一度崩壊すると、再び膨らむ事は考えにくいのですが、当時はバブルの再発を心配する人も多かったので、影響されたのかも知れません。

バブル崩壊後、再発しない事が確認された後は、景気が悪く、インフレの心配もありませんでしたから、日銀は金融緩和の姿勢を続けてきました。それでも景気は回復しなかったので、日銀は金利をゼロにしたり、量的緩和政策といって金利がゼロになってからも資金の大量供給を続けたりしました。それでも景気は良くなりませんでした。
それは、不況期の金融緩和は効果が出にくいものだからです。不況期の企業は、設備の稼働率が低いため、金利が低くても借金をして新しい工場を建てようとは考えないのです。サラリーマンも、ボーナスや残業代が減っていて、リストラされるかも知れない時に、住宅ローンを借りて家を建てようとは思いません。銀行も、不況期には企業の倒産を心配して融資に慎重になるでしょう。だから金融緩和の効果が出にくいのです。
もっとも、最近の金融緩和は、円安や株高を通じて景気を回復させるかも知れません。「金融を緩和すると円安になる」と信じている人々がドルを買っているからです。金融政策の新しい効果として、要注目です。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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